遠藤イヅルが自身のイラストともに1980年代以降の趣味車、いわゆる”ヤングタイマー”なクルマを振り返るという、『ボクらのヤングタイマー列伝』です。今回は祝、連載50回! ということで記念すべき1台を考えに考え……、やっぱりこの連載らしくマニアック方面で行きます! というわけで、まさかのシトロエン・ヴィザですヨ!
ボクらのヤングタイマー列伝第49回『歴代ダイハツ・シャレード・デ・トマソ』の記事はコチラから
祝、連載50回! 記念すべき回にこのコーナーらしい1台を選びました!
この連載もついに50回! ひとえに読者のみなさまのおかげです。ありがとうございました! その記念すべき回を飾るのが『シトロエン・ヴィザ』というのが、いかにもこのコーナーらしいではありませんか(汗)。
現在はプジョーらと共にステランティスを構成するシトロエン。かつては独立系企業でしたが、独創性が高い技術優先のクルマ造りが悪い方に働き、1970年代初頭には経営難に。そして紆余曲折の結果、フランス政府の肝いりで1976年にプジョーと合併して現在に至っています。合併後プジョーは早速シトロエンの改革に着手し、プジョーで最も小さい104クーペのシトロエン版、『LN』を同年10月に発表しました。LNには2CV系フラットツイン(アミ8用)が搭載されるも、外観は104そのものでした。しかし続く1978年、LNをベースにしつつシトロエンのオリジナルボディを載せたヴィザがいよいよ登場します。ヴィザは、LNが104のままだった鬱憤を晴らすかのように、お堅いプジョー同門とは思えない突飛なデザインで出現。リアタイヤはスパッツに隠れ、ルーフの輪郭は猫背のシトロエン・ルック、”豚鼻”と称されるグリル、泣き顔ヘッドライトという外観もさることながら、のちのGSAで採用される”茶筒”型クラスタースイッチ、1本ステアリングなどなどのインテリアデザインも強烈でした。さすがオリジナリティの塊、シトロエン!
1981年にはマイナーチェンジ。ユーリエがデザインしたと言われる新しいマスクを得て、少しだけ”常識的な”クルマになりました。1983 年にはプジョー製1.36リッター直4+ツインキャブのスポーツモデル『ヴィザGT』も追加されています。ちなみにシトロエンといえばラリーレイドやWRC、オンロード競技で数々の勝利を収めたモータースポーツの名門で、スポーツグレードもいくつか思い浮かびますが、以前はスポーツモデルを積極的に出していませんでした。しかしその転換点になったのが、意外にもヴィザだったのです。それを証拠に、プジョー205GTIのエンジンを載せた『GTi』、競技ベース車の『クロノ』、Gr.Bカーの『ミルピステ』など、それまでのシトロエンでは考えられないほど過激なホットモデルを設定していたのです。
ちなみに筆者は、西武自販がほんのわずかだけ正規で輸入したGTを所有していました。80psを発揮する荒々しいツインキャブエンジンと軽い車体の組み合わせは想像以上に速く、シートは座った誰もが笑うほどふかふか、乗り心地も抜群、灯火類や空調の操作はレクチャーなしではわからない……という個性的なクルマでした。懐かしいです!
この記事を書いた人
1971年生まれ。東京都在住。小さい頃からカーデザイナーに憧れ、文系大学を卒業するもカーデザイン専門学校に再入学。自動車メーカー系レース部門の会社でカーデザイナー/モデラーとして勤務。その後数社でデザイナー/ディレクターとして働き、独立してイラストレーター/ライターとなった。現在自動車雑誌、男性誌などで多数連載を持つ。イラストは基本的にアナログで、デザイナー時代に愛用したコピックマーカーを用いる。自動車全般に膨大な知識を持つが、中でも大衆車、実用車、商用車を好み、フランス車には特に詳しい。
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