【海外試乗】DSの本質を味わい尽くせる新型『DS7』、フルモデルチェンジでアバンギャルドさにより磨きがかかる

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「クロスバック」がとれて、新型はよりシンプルに「DS7」を名乗ることになった。フランス車としては珍しいキープコンセプトのフルモデルチェンジだが、本国でもラインナップ構成はPHEVの3モデルが主で、純ICEは1.5Lディーゼルのみ。つまり上位グレードはPHEVの本格4×4スポーツへとDS7は舵を切った。

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パリ生まれのクロスオーバーが刷新

2017年に当時の新生DSのフラッグシップとして登場したDS7クロスバックが、フルモデルチェンジには少し短い5年を経て、新型へ生まれ変わった。いまやDS9というクラシックなサルーンを旗艦モデルにいただくラインナップ内で、新型はDS7と、SUVであることを示す「クロスバック」の名称をあえて止めた。確かにライトまわりやフロントグリル、リアオーナメントも変化したが、成功したモデルだっただけに、全体のプロポーションや内装の雰囲気もほぼキャリーオーバーに見える。しかし単なるフェイスリフトやビッグマイナーチェンジに終わらない、根本的で野心的な変化が多々込められたDS7の新しさは、乗ってみればすぐさま瓦解するものだった。

まずDSピクセルLEDヴィジョン3.0は、照射範囲を細かく高度に制御するため、パリ郊外のごく暗い県道や住宅街で心強い装備だった。またDSライト ヴェールというバンパー内側から透過光で光る日中走行灯は、奥行き感のある独特の光り方をし、確かに佇まいに個性を添える。

車内に目を移せば、パールステッチや電源ONで回転して現れるBRMのクロックはそのままに、12インチワイドの高解像度タッチスクリーンが際立つ。インフォテイメントのシステムがDS4と同じ世代へとアップデートされ、DSイリス システムの音声認識やスマートフォン連携機能の数々に対応したのだ。

外寸はバンパー形状の変更でやや全長が延びたぐらいで、ホイールベースやトレッドにも変更はない。だが、今回試乗したのは、最新のEVO3世代へ進化したEMP2プラットフォームに、225psのPHEVという従来のFFパワートレインではなく、リアモーターAWDを積んだE-TENSE 4×4 300。本国ではプジョー508PSE相当のユニットを積む360ps版が上位に控え、これら2種類のE-TENSEがトップ・オブ・レンジ。300ps版とて、360ps版と同じくシステム総計で最大トルク520Nmに達する。BMWのMとCSL系よろしく、前者がパワフル&マイルドコンフォート志向、360ps版が過激バージョンといえる。

プジョー3008のハイブリッド4に似た乗り味を予想していたら、いい意味で裏切られた。後輪を蹴り出して加速に移るレスポンスのよさと、中間加速の伸びこそ似るが、ロック・トゥ・ロック3回転とクイックだが真円に近くて小径過ぎないステアリングも相まって、DS7はスポーティだがより繊細に優雅に操れる、そんなドライバビリティをもつ。フル充電からの最大レンジも63kmとFFモデルに引けはとらないが、リアモーターの113ps/166Nmが加速初期に効いてくる分、鋭さや安定感はひと回り以上も上だ。

もちろん、高速巡航のような負荷の変化が小さい場面ではICEを積極的に休ませ、燃費にも貢献するが、特筆すべきは静けさの質だ。会話の声がクリアに聞こえるし、14個のスピーカーによるフォーカル・エレクトラのオーディオ・システムもより活きてくる。無論、路面を読み取ってサスの減衰力をアクティブ制御するコンフォートモードも健在だ。

静粛性と滑らかな動的質感という、DSとしての本質に磨きをかけたからこそ、DS7は新しい。

【Specification】DSオートモビル DS7 E-テンス 4×4 300
■全長×全幅×全高=4593×1906×1625mm
■ホイールベース=2738mm
■トレッド(F:R)=1621/1598mm
■車両重量=1836kg
■エンジン種類=直4DOHC16V
■排気量=1598cc
■最高出力=200ps(147kW)/6000rpm
■最大トルク=300Nm(30.6kg-m)/3000rpm
■システム総合出力=300ps(221kW)
■システム総合トルク=520Nm(53.0kg-m)
■燃料タンク容量=43L(プレミアム)
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤ(F:R)=235/50R19:235/45R20

DSオートモビル公式サイト

フォト=DSオートモビル ルボラン2023年1月号より転載

この記事を書いた人

南陽一浩

1971年生まれ、静岡県出身、慶應義塾大学卒。ネコ・パブリッシング勤務を経てフリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・男性ファッション・旅行等の分野において、おもに日仏の男性誌や専門誌へ寄稿し、企業や美術館のリサーチやコーディネイト通訳も手がける。2014年に帰国して活動の場を東京に移し、雑誌全般とウェブ媒体に試乗記やコラム、紀行文等を寄稿中。2020年よりAJAJの新米会員。

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南陽一浩
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2022/12/14 11:30

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