ヒョンデのZEV(ゼロエミッションヴィークル)の代表格としてラインナップするBEVのIONIQ 5。乗り心地やデザイン性、そして期待のV2L(Vehicle to Load)など、ショートトリップをしながら、新しいドライブ体験を考察した。
欧州車にはないEVの可能性と魅力が溢れる
BEVとFCEVという2種類のZEV(ゼロエミッションヴィークル)を引っさげて12年ぶりに日本市場参入となったヒョンデ。販売の中心は、欧州メーカーのみならず日本メーカーからも続々とニューカマーが登場しているBEVのIONIQ(アイオニック 5)であり、ちょうど時流に乗ったかっこうだ。
まず目を惹くのはそのスタイリングだ。四角いヘッドランプとリアコンビネーションランプは、デジタル画像の最小単位であるピクセルにアナログな感性を加えたパラメトリックピクセルが用いられてユニーク。BEV専用プラットフォームならではのロングホイールベースとワイド感、斬新なキャラクターラインなど、新しいモビリティであることを全身で表現しているようで、東京の中心部を走り始めたときから、道行く人の視線をひしひしと感じられた。
少しでも春を先取りしたくて南下して千葉の海を目指すショートトリップを試乗ルートとして選んだが、高速道路では追い抜きざまの電動車などがこちらをじっと観察している。想像以上に注目されているようだ。
試乗車は前後にモーターを搭載するAWDでシステムの最高出力225kW、最大トルク605Nm。リアモーターはRWD用と同様でそちらだけでも160kW、350Nmもあるので、加速時は後ろから押される感覚が強くて気持ちがいい。加速力そのものも強力で0→100km/h加速5.2秒とリアルスポーツカー並だ。
モーター制御も長けていて極低速域から滑らかで、力強いのに唐突感がなくてひたすらに扱いやすい。回生ブレーキの強さはパドルスイッチで調整できるうえに、ワンペダルドライブも可能。この制御が絶妙で、ブレーキペダルを使って減速するよりもスムーズで運転が上手くなった気にさえなった。
BEVは低重心かつ重量配分にも優れるのでシャシー性能のポテンシャルが高いが、アイオニック 5はそれを存分に引き出していた。RWDよりは少し重くなっているが、それを味方につけて乗り心地は重厚で動きに落ち着きがある。タイヤは20インチ(ラウンジAWDのみ)と大きいがミシュラン・パイロットスポーツEVという専用品で、耳につきやすいロードノイズをきっちりと抑え込み、ゴツゴツ感やタイヤの大きさを意識させない。大きな突起を乗り越えても、入力は穏やかさがあって快適なのだ。それでいてワインディングロードではグリップ力があり、低重心ゆえにロールが少ないシャシーとのマッチングの良さをみせる。クロスオーバーSUVであることを忘れてハンドリングを楽しめてしまうのだ。
目的地の海辺は、春先とあって人は少なかったが、明るい陽光に照らされてキラキラと輝いていた。外に出るとまだ肌寒かったがここでコーヒーブレーク。アイオニック 5は輸入車としては初のV2L(ヴィークルtoロード)を備えているのも特徴であり、外出先で手軽に電化製品を使うこともできる。V2Lは室内と室外にあり、今回は外に椅子とテーブルを出してくつろいだが、リビングルームのように居心地がいい室内でまったりとするのもいい。パソコンを出してリモートワークするときも充電できるから安心だ。
都心を抜け出して1〜2時間ほどドライブして自然のなかで身体と心を休め、英気を養ってからまた帰路に着くという使い方をしてもバッテリー残量を気にする必要はない。72.6kWhのバッテリー容量があり、一充電航続距離は577kmと余裕があるからだ(RWDなら618km)。走りの良さだけではなく、使い方にもワクワク感があるアイオニック 5。スタイリング同様に、未来のモビリティを先取りしたモデルなのだ。
【SPECIFICATION】ヒョンデ・アイオニック5 ラウンジAWD
■車両本体価格(税込)=5,890,000円
■全長×全幅×全高=4635×1890×1645mm
■ホイールベース=3000mm
■トレッド=(前)1628mm、(後)1637mm
■車両重量=2100kg
■モーター形式/種類=EM07/EM17/交流同期電動機
■モーター最高出力=305ps(225kW)/2800-8600rpm
■モーター最大トルク=605Nm/0-4000rpm
■バッテリー種類=リチウムイオン電池
■総電力量=72.6kWh
■航続距離(WLTP)=577km
■サスペンション形式=(前)マクファーソンストラット、(後)マルチリンク
■ブレーキ=(前)Vディスク、(後)ディスク
■タイヤ(ホイール)=(前後)255/45R20
公式ページ https://www.hyundai.com/jp/ioniq5
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