電動化に向けて突き進む欧州の自動車界にあって、唯一置き去りにされていたのがストロングハイブリッドだ。ところがルノーはストロングハイブリッドにもプラグインハイブリッドにも使える新たなシステム“E-TECH”を開発し、新型SUVのアルカナに搭載してきた。その実力や、かなり侮りがたいものだ!
ディーゼルに代えて独自のE-TECHを搭載
まったく新しいSUV、ルノー・アルカナに試乗する機会を得た。プラットフォームはCMF-Bで既存のキャプチャーと共通だが、全長はその4230mmに対して4570mmと大幅に長く、もはやBセグメントというよりはCセグメントに迫る体躯を誇る。
エクステリアデザインでは、ルーフが後方へ向けてスムーズに下降するクーペの風のフォルムがユニークだが、日本に導入されるアルカナの最大の注目点は、実はハイブリッドシステムにある。
ヨーロッパ車のハイブリッドシステムといえば、プラグインハイブリッド(PHEV)もしくはマイルドハイブリッドが主流だが、アルカナに搭載されるE-TECHと呼ばれるシステムは、いわゆるストロングハイブリッド仕様(他モデルにはPHEV仕様もあり)で、欧州の最新モデルとしては異例の存在といえる。
なぜ、ルノーはあえてストロングハイブリッドを新たに開発したのか? その理由を、ルノーのパスカル・ルロワは「コンパクトなディーゼルエンジンに代わるパワープラントを生み出すことが目的でした」と説明する。
排ガス規制の強化により、高価な後処理装置が必要になった欧州製のディーゼルエンジンは、いまや排気量2L以上が残るのみで、Bセグメントに適したユニットはないも同然。しかも、既存のハイブリッドは中低速域の燃費改善を目指したものばかりで、「高速域でも燃費がいいコンパクトカー向けのパワープラント」は実質的に見当たらないのが現状である。ルノーは、こうしたニーズに応えるためにE-TECHを開発したとみて間違いないだろう。
その基本的な考え方は、低速域ではモーターを主力とするシリーズハイブリッド、高速域ではエンジンを主力とするパラレルハイブリッドに切り替えるというもの。
さらにエンジンとモーターの効率を最大限に引き出すため、エンジンには4速、モーターには2速のギアボックスを組み合わせている。しかも、動力の断続にはクラッチやトルコンではなく、レーシングカーで一般的なドグクラッチを採用するというこだわりようだ。
今回試乗したのは量産前のプリプロダクションモデルで、試乗コースは富士スピードウェイの場内とかなり限定的な条件だったが、アルカナの走りは実にスムーズで快適だった。基本的には40-50km/hまでがEV走行で、これを超えるとエンジンが始動するようだが、モーターだけでなくエンジンも静かで、動力の切り替えもスムーズに行なわれるため、注意していないとエンジンがかかったことに気づかないほど。これには、駆動系とエンジンの回転数をスタータージェネレーターにより同調させるE-TECH独自のメカニズムが効を奏しているようだ。
エンジンは最高出力94㎰の1.6L NAなので特別にパワフルとはいえないものの、レスポンスは良好なので、小気味のいい走りが楽しめるはず。乗り心地はかつてのルノーを髣髴とさせる快適そのもの。安定志向が強いハンドリングにも不満は抱かなかった。
今回は燃費を計測できなかったが、欧州での公称値は20.8km/L。それでも日本製のハイブリッドコンパクトカーにはかなわないが、高速域ではもっといい勝負をするだろう。2022年と見込まれる国内発売が楽しみな1台だ。
【Specification】ルノー・アルカナE-TECH Hybrid 145
■全長×全幅×全高=4568×1820×1576mm
■ホイールベース=2720mm
■トレッド=前1562、後1584mm
■車両重量=-[1659kg]
■エンジン型式/種類=-/直4DOHC16V
■内径×行程=78.0×83.6mm
■総排気量=1598cc
■バッテリー種類=リチウムイオン
■バッテリー容量=1.2kWh
■システム最高出力=143ps(105kW)/2500rpm
■システム最大トルク=-
■燃料タンク容量=50L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速(エンジン)2速(モーター)
■サスペンション形式=前ストラット/コイル、後トーションビーム/コイル
■ブレーキ=前Vディスク、後ディスク
■タイヤ=前215/55R18、後215/55R18
問い合わせ先=ルノー・ジャポン0120-676-365
※表中はすべて本国仕様
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