SUVでは3列シートのモデルが“ポスト・ミニバン”の選択として期待される日本市場。そこに投入されたGLBは手頃なサイズ、さらにはメルセデスの作ということでも注目を集めている。では、コンパクト級に分類されるGLBの実用度はどの程度か? 和製プレミアムの筆頭であるレクサスの3列シートモデルと比較してみる。
SUVの3列目としてはどちらも作りは上々
GLBの画期的な点は、やはりプレミアムSUVブランドにおける3列シート仕様を身近にしたことだろう。単に手頃な3列シートのSUVというのなら輸入車ではプジョー5008、国産勢まで入れれば選択肢はそこそこ豊富になる。だが、プレミアムブランドからこうした“ポスト・ミニバン”を選ぼうとすると従来は敷居が高かった。GLBも今回の試乗車、4WDのガソリン版だと車両本体価格は約700万円にも達する。だが、ディーゼルのFF仕様なら本体価格は512万円。生活臭が抜けきらないミニバンを脱して、贅沢な多人数乗車のSUVライフを手にしたい人には魅力的な選択となり得るわけだ。
さて、今回GLBとの比較用に連れ出したのはレクサスRXの3列シート仕様となる450hL。本来、このクルマが対峙するべきはメルセデスならGLEなのだが、「プレミアムな3列」という括りだと価格的に一番近いこともあって召還の運びとなった。
まずは、両者における存在意義のひとつである3列目の出来映えから。ここの乗車定員は、どちらも2名。使わない際はスッキリと床下に畳める点も同じで、RXでは操作も電動化される。GLBでは外部電源ポート、RXにはそれに加えてエアコンの設定パネルまで備わるが、居住性自体は外観やボディサイズから察せられる通り。大柄な大人には非常用の域を出ない。2列目シートのスライド量を調節すれば、身長178cmの筆者でも座ることは可能。だがGLBでは身長168cmまでとの但し書きがある通り、決して余裕があるわけではない。RXに至っては、胴長体型だと頭がつかえて正しい姿勢で座ることすら難しい。
だが、フル乗車で長時間移動する使い方でもなければ、いずれも実用性は十分だ。大人でも小柄な人、あるいは子どもなら空間的な問題はない(乗降性はともかく)。GLBは着座姿勢の自由度もまずまずなだけに、前述の身長制限をクリアする範囲内なら日常的な使い方にも耐えられるだろう。本来、ミドル級以下のSUVにおける3列目は“もしものとき”に使うべきもの。その意味では、両者とも作りは理にかなっている。
では、走りの味付けはどうか? かたやコンパクト級プラスα、こなたミドル級というサイズの違いもあるので本来は直接比較する話でもないのだが、同じ環境で接するとメルセデスとレクサスの思想の違いが透けて見える。
ベースが同じGLAと比較すると、GLBのライド感は良い意味で鷹揚。SUVがクロカン4WDと括られていた時代に通じる、少しブッシュ類の存在を意識させる味付けでスポーティにも振る舞えるGLAとは趣が異なる。しかし高品質な道具、という一面も合わせ持つメルセデスの最新作だけに、いざオンロードで積極的に操ればドライバーズカーらしい懐の深さも実感させてくれる。
一方、RXはクルマを操るという労力を物理、精神の両面で抑え込んだ仕立てが印象的。わかりやすくいえば、それは「和風」な気配りそのもの。凝った造形でいながら、精緻にして清潔感すら漂わせる内外装の作りしかり。酷暑の中に放置しても、いざ起動すれば静粛なまま一気に室内を快適にするエアコンしかりだが、そうした車内に身を置いていると、いつしか走らせていることすら意識から飛んでしまうのは本当の話だ。
誤解のないようにいっておくと、だからといってRXの走りが茫洋なわけではない。現代のレクサスらしく、あるいはGLBと同じく本気の走りに応える絶対的な性能はしっかり備えられている。違いはそれを常に乗り手に意識させるか黒子に徹するかという、作り手の考え方の話なのだ。
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