発電のためにエンジンを回すことはない
ポルシェは6月18日から19日にかけて開催されたル・マン24時間レースで総合優勝を果たしたLMP1クラスのポルシェ919ハイブリッドに関連し、ポルシェのレーシングカーにおけるハイブリッドテクノロジーの概要を公表した。これは同車が投入された7月23日決勝のニュルブルクリンク6時間レースに向けてのプロモーションの一環で、同レースではアウディR18との首位争いを制し、ポルシェ919ハイブリッドが見事に優勝を果たしている。
ポルシェ919ハイブリッドが搭載するエンジンはわずか2リッターのV型4気筒ガソリンターボエンジンで、これに800Vのシステム電圧を採用した電気回路を組み合わせている。ポルシェによれば、この高電圧の選択が大きな決断であり、今シーズンの輝かしい戦績につながっているようだ。ちなみに現行プリウスは、昇圧回路によって650Vで電気モーターを駆動している。
高電圧が有利なのは、回路が発生するエネルギーは電源電圧の2乗に比例するという基本的な法則を知っていれば納得だろう。プラグインハイブリッドモデルの充電時間が、日本よりも欧州の方が圧倒的に短いのも、これがおもな理由だ。ただ、既存のハイブリッド用コンポーネントには800V対応のものはほとんど存在せず、そこが919を開発する際の難題だったようだ。
肝心のハイブリッドシステムの制御については、ポルシェ919のそれは、プリウスのようにエンジンを停止させて燃料消費を低減するのが主目的ではない。結果として燃料を節約できるのだが、基本的にはドライバーが“加速ボタン”を押したときに、エンジンの出力にエキストラパワーを付加するために電気モーターは存在している。また、電気モーターを動かす電力は、制動エネルギーの回生によって60%、回生用タービンによる回生によって40%がまかなわれているとのことで、エンジンが発電機代わりに利用されることはない点でもプリウスとは異なっている。
ちなみにポルシェ919ハイブリッドの場合、レギュレーションにしたがってエンジンの最高出力は500ps(368kW)以下、電気モーターの最高出力は400ps(294kW)となっている。加速ボタンを押すと、エンジンのみでの走行時の倍に近い出力が得られるわけだ。1周あたりに使用できる燃料の量や電力(ポルシェ919やトヨタTS050は8メガジュール、アウディR18は6メガジュールクラス)はレギュレーションによって制限されているので最高出力の高さが必ずしも戦力差に直結するわけではないが、とにかくポルシェは強力な電気モーターを搭載していることがわかる。
また、回生した電力を蓄えておくリチウムイオンバッテリーも驚くほど高性能。膨大なパワーを瞬間的に発生するには、同じ速さで電力を回収=充電できなければならないからだ。ポルシェいわく、スマートフォンのバッテリーが919のバッテリーと同じ出力密度(≒一定時間内に充放電できる電力量)を持っていたとしたら、1秒以下でフル充電が可能になるのだそうだ。ただし、出力密度が高いということは、あっという間に電力を放出してしまうことも意味するため、通話可能時間もあっという間になってしまうらしい。
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