ダイムラーが、あえて「シンプレックス」を現代的に復刻させる意味とは?

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メルセデスの歴史的遺産へのオマージュと未来への架け橋としての象徴をカタチに

9月14日、ダイムラーはフランス・ニースに新設されたメルセデス・ベンツのアドバンストデザインセンターで開催された「デザイン・エッセンシャルズ2019」において、「ビジョン・メルセデス・シンプレックス」を公開した。

このモデルは、1901年に「メルセデス35PS」が誕生して以来、118年にわたるメルセデス・ベンツの歴史的遺産と誕生へのオマージュとともに、同ブランドの未来を表現したもの。

1899年、現在のメルセデス・ベンツの前身だったダイムラー・モトーレン・ゲゼルシャフト社が、オーストリア=ハンガリー帝国の領事であり、ダイムラー車のディーラーを経営していたユダヤ系ドイツ人の富豪、エミール・イェリネックの提案によって開発された高性能車がメルセデス35PS。イェリネックの娘「メルセデス・イェリネック」にちなみ、メルセデスの名が付いた最初のクルマである。このモデルの登場を機に、1902年にダイムラーは「メルセデス」を商標登録している。

メルセデス35PSは、馬車に発動機を備えたそれまでの自動車ではなく、まったく新しい車両アーキテクチャーを採用しニースで開催された数々のレースウィークを制覇。自動車の新しい時代の到来を告げるものとなった。軽量で高性能なエンジンをフレームの下部に搭載し、フロントにハニカムラジエターを配置したレイアウトは、誕生から120年近く経過した今日でも、すべてのクルマの技術的基盤になっている。

このたび発表されたビジョン・メルセデス・シンプレックスは、この歴史的遺産を思い起こさせ、21世紀までの先駆的な精神とスタイリングの特徴を今に伝えている。そこにはラグジュアリーと革新への情熱がメルセデス・ベンツのDNAの一部であるというメッセージが込められており、同ブランドがこれからも自動車とモビリティの変革を推進し続けていく意志が込められている。

メルセデス・ベンツのチーフデザインオフィサー、ゴードン・ワグナーは、このモデルを次のように紹介している。

「メルセデス・ベンツ、あるいはそれと同じくらい強いブランドだけが、歴史と未来の物理的共生を可能にします。ビジョン・メルセデス・シンプレックスは、メルセデス・ベンツ・ブランド特有のラグジュアリーの変容を象徴しています」

ビジョン・メルセデス・シンプレックスは、自立型ホイールや代替ドライブトレイン、先進的なユーザーインターフェイスを、スリリングなデザインの2シーターとして再解釈。水平基調のモノコックとコックピットが採用され、ボディの四隅に大径ホイールを配置。歴史的なモデルの例にならい、ボディのフロント半分をホワイト、リヤ半分をブラックにペイントしている。

ロゼゴールドにペイントされたフロントマスクのラジエターは、ヒストリックモデルに採用されたブロンズラジエーターグリルを連想させる。開口部にはブラックパネル/3Dディスプレイが組み込まれ、かつても用いられていた「Mercedes」ロゴが表示されるほか、車両に関する情報をアニメーションで映し出すことができる。これはメルセデス・ベンツがラグジュアリーブランドとして、デジタル時代に対応していることを示すものだ。

歴史的なモデルと同様に、フロントウインドーは省略。フロントセクションからインパネまではシームレスなデザインで、リヤセクションにはスリムなテールランプが水平に組み込まれている。その上部には乗員を繭のように包み込む形状のキャビンシェルが組み合わされている。テールエンドには荷物が積めるレザーバッグが装着された。

インテリアデザインも、メルセデス・ベンツの成功の歴史とメルセデス35PSをはじめとするレーシングカーへのオマージュが込められている。エクステリアからインテリア、そしてユーザーエクスペリエンスにシームレスにつながる設計は、メルセデス・ベンツの設計哲学に対するアプローチを反映したものだ。

ステアリングコラムやインパネのスイッチのデザインは、オートバイや船舶からインスピレーションを受けているという。高級感は、計器盤の時計や精密なネジ、ベルトのデザインなどで高品質な仕上げを施した宝石のようなディテールに表れている。ベンチシートは高級家具をイメージしており、ハンドメイドのチェスターフィールドのキルティングはクラシックでありながらラグジュアリーな手仕事の現代的解釈を示すものだ。フットルームに至るインテリアトリムはブルーで、インパネのホワイトとの組み合わせは地中海のコートダジュールの色に触発されている。

インパネには「UI/UXデザイン」と呼ぶメルセデス・ベンツのデジタルラグジュアリーのビジョンが示されている。同社のデザイナーが“ハイパーアナログ”と呼ぶそれは、速度やナビゲーション、車両情報などを適切な情報が適切なタイミングでディスプレイに表示。その他の情報は状況に応じてインパネに表示される。シンプルなデザインによって、ドライバーは常に前方路面に集中することができる。

 

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