日本では150kWの急速充電器を導入
ポルシェ初のピュアEVスポーツカー、「タイカン」は2019年9月初旬にワールドプレミアを予定している。日本では年内の発表に加え、2020年の販売開始とのことだが発売に向けポルシェでは着々と準備を進めている。ここでは、今年1月から6月までのそうした取り組みについてまとめてみた。
ポルシェAGでは、「ゼロインパクト・ファクトリー」の実現に向けた動きを進めている。これは二酸化窒素を吸収する表面技術を外壁部品に用いた工場で、タイカンを生産する新しい工場で初採用された。使用する外壁部品はアルミ製で、表面は二酸化チタンでコーティング。これが触媒となり、吸収した汚染粒子は太陽の光と大気中のわずかな湿気にさらされることで水および硝酸塩という無害な物質に分解される。その結果、車両10台分の駐車スペースに木が10本あった場合と同程度の吸収効果が得られるという。
熱とエネルギーを自社生産する「コージェネレーションプラント」も、ドイツのツッフェンハウゼン工場(シュツットガルト)で稼働を開始。これはバイオガスで稼働する環境にやさしい工場設備で、ヒートプラントとパワープラントはどちらも出力約2MW。バイオガスと、有機廃棄物から生成される残余生産物のみで稼働する。エネルギー生産に伴って生成される熱を環境に放出するのではなく、この熱も加熱のために利用。ペイントショップやその浸漬槽、乾燥エリアの近くといった熱が常時必要なエリアの近くで稼働させることで、効率を最大限に高められる。生成される熱の約90%は、約1万2,000人が働くポルシェのツッフェンハウゼン拠点のオフィスと工場への暖房と温水供給のために利用されるなど、新しいコージェネレーションプラントの総合効率は83%を超えるという。これまでポルシェの拠点では2つの天然ガスプラントが使用されてきたが、今回のコージェネレーションプラントにより熱と電力の生成ソリューションはいっそう完全なものになり、既存のプラントもバイオガスに切り替えられる予定という。
一方、タイカンは量産に入る前の最終テストドライブも終盤を迎えた。北極圏からわずか数キロのスカンジナビアでは、雪と氷の上でのドライビングダイナミクスに関するポテンシャルを証明。南アフリカでは、パフォーマンステストに加えて連続的なパフォーマンスと再現性に関する最終調整を、ドバイでは高温気候での耐久走行を実施し、過酷な条件下でのバッテリー充電をテスト中だ。タイカンは、マイナス35度からプラス50度におよぶ世界30カ国でテストドライブ。内燃エンジンを搭載するスポーツカーと同じ厳格なテストプログラムを受けている。すでに総走行距離は約600万キロ、そのうち200万キロは耐久走行に充てられているという。
日本での取り組みだが、ポルシェジャパンはタイカンの導入にむけ2020年半ばよりABB製の急速充電器を全国のポルシェセンターと公共施設へ設置する。これは、まだ日本にはない150kWでの急速充電を可能とする次世代CHAdeMO(チャデモ)で、タイカンの80%充電を30分以内に済ませる能力を備えた国内最高レベルの急速充電器となる。なお、ABBはCHAdeMOおよびCCSの充電規格協会の創設メンバーの一社となるEVインフラのリーディングカンパニー。現在、73カ国に10,500台のABB製DC急速充電器が公共の場所などに設置されている。
タイカンは4ドア、4セパレートシート、600㎰(440kW)以上の最高出力により0-100km/h加速タイムは3.5秒以下を実現。最大航続距離は500km以上(NEDC準拠)に達し、2020年には派生モデルの「クロスツーリスモ」も導入予定となっている。
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