世界三大レースのひとつ、ル・マン24時間レース。数ある参加メーカーの中で最多の優勝回数を誇るのがポルシェだ。そんなポルシェも今年の開催での様子はこれまでとは少し雰囲気が違ったようだ。その模様をレポートする。
シリーズ全体への貢献を重視するポルシェ
前回、ル・マン24時間レースの取材に行ったのは2016年のこと。ポルシェ、アウディ、トヨタが三つ巴のワークス争いを展開するLMP1Hの全盛期で、最後にトヨタ5号車が「ノー・パワー」となり、ニール・ジャニ、ロマン・デュマ、マルク・リーブのポルシェ919ハイブリッド2号車が逆転優勝を飾った、あのレースである。
あれから8年が過ぎた今年のル・マン。そこで何より印象に残ったのが、ポルシェ・チームの変化であった。
確か919ハイブリッドの時はカウルを開けたマシンを撮るのはもちろん、見るのさえNGで、ピット裏の施設の多くが立ち入り禁止とされていたのだが、今回は驚くほど規制がなく、ピット2階のコントロールルームまで見学できた。さらにスペアのリアアクスルや、ブレーキアッセンブリーを並べたワークショップに至っては、ピットの外から誰でも見学できるように大きな窓すら取り付けられていたのである!
「今回はポルシェ・ペンスキーだけでなく、JOTAチームとプロトン・コンペティションのサポートも必要なので、その分のスペアパーツも保管しています」
と案内してくれたスタッフが話す通り両チームのピットはペンスキーと隣接しており、迅速なサービスができるようになっていた。
そこから感じられたのは、あえて開発の自由度が高いル・マンハイパーカーではなく、多くの共用パーツを使用するLMDhを選び、車両の供給側として積極的にシリーズを支えていこうとするポルシェの姿勢だ。他に先駆けて963を開発し、共通のハイブリッドシステム、バッテリー、ギアボックスのテストを買ってでたのも、そういうことなのだろう。
おそらくポルシェは、コストの高騰と技術の先鋭化で消滅したLMP1Hや、1990年代のGT1、またポルシェの独占でシリーズ自体が成立しなくなったグループ5の反省から、各ワークスとプライベーターたちが切磋琢磨できたグループCのようなスポーツカーレースの再興を狙って963を開発したのではないか? そう考えると、北米で絶大な人気と実績を誇るペンスキーと組んでWECとIMSAに出場しているのも納得できるのだ。
確かに今年のル・マンでポルシェは負けた。しかし最終ラップまでトップ争いが繰り広げられ、上位9台が同一ラップでフィニッシュするという接戦となった今年のル・マンで23台ものマシンが集まった最高峰のハイパーカー・カテゴリーの内の8台がポルシェ963だったことを思えば、ポルシェがハイパーカー・カテゴリーでいかに重要な役回りを演じていたかがわかるはずだ。
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