今年のル・マン24時間レースでのポルシェの活躍は?「チーム密着レポート&インタビュー」

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世界三大レースのひとつ、ル・マン24時間レース。数ある参加メーカーの中で最多の優勝回数を誇るのがポルシェだ。そんなポルシェも今年の開催での様子はこれまでとは少し雰囲気が違ったようだ。その模様をレポートする。

シリーズ全体への貢献を重視するポルシェ

前回、ル・マン24時間レースの取材に行ったのは2016年のこと。ポルシェ、アウディ、トヨタが三つ巴のワークス争いを展開するLMP1Hの全盛期で、最後にトヨタ5号車が「ノー・パワー」となり、ニール・ジャニ、ロマン・デュマ、マルク・リーブのポルシェ919ハイブリッド2号車が逆転優勝を飾った、あのレースである。
あれから8年が過ぎた今年のル・マン。そこで何より印象に残ったのが、ポルシェ・チームの変化であった。

ワークスのポルシェ・ペンスキーは6号車が金曜のハイパーポールで逆転のポールポジションを獲得。最終的に優勝したフェラーリ50号車と、わずか37秒897差の4位でゴールした。

確か919ハイブリッドの時はカウルを開けたマシンを撮るのはもちろん、見るのさえNGで、ピット裏の施設の多くが立ち入り禁止とされていたのだが、今回は驚くほど規制がなく、ピット2階のコントロールルームまで見学できた。さらにスペアのリアアクスルや、ブレーキアッセンブリーを並べたワークショップに至っては、ピットの外から誰でも見学できるように大きな窓すら取り付けられていたのである!

ポルシェの心臓部ともいえるピット内部が見学可能

「今回はポルシェ・ペンスキーだけでなく、JOTAチームとプロトン・コンペティションのサポートも必要なので、その分のスペアパーツも保管しています」
と案内してくれたスタッフが話す通り両チームのピットはペンスキーと隣接しており、迅速なサービスができるようになっていた。

ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのピット。左がピット対面にある巨大な部品庫。右はピットビル側の入り口。左側のワークショップに大きな窓があるのが見える。

そこから感じられたのは、あえて開発の自由度が高いル・マンハイパーカーではなく、多くの共用パーツを使用するLMDhを選び、車両の供給側として積極的にシリーズを支えていこうとするポルシェの姿勢だ。他に先駆けて963を開発し、共通のハイブリッドシステム、バッテリー、ギアボックスのテストを買ってでたのも、そういうことなのだろう。

ピットビル内にはリアアクスルなどを揃えたワークショップ(全てを指揮、管理するコントロールルーム、ドライバー&メカの休憩スペースまで完備。

おそらくポルシェは、コストの高騰と技術の先鋭化で消滅したLMP1Hや、1990年代のGT1、またポルシェの独占でシリーズ自体が成立しなくなったグループ5の反省から、各ワークスとプライベーターたちが切磋琢磨できたグループCのようなスポーツカーレースの再興を狙って963を開発したのではないか? そう考えると、北米で絶大な人気と実績を誇るペンスキーと組んでWECとIMSAに出場しているのも納得できるのだ。

タイヤサービスもピットビル内にある。

確かに今年のル・マンでポルシェは負けた。しかし最終ラップまでトップ争いが繰り広げられ、上位9台が同一ラップでフィニッシュするという接戦となった今年のル・マンで23台ものマシンが集まった最高峰のハイパーカー・カテゴリーの内の8台がポルシェ963だったことを思えば、ポルシェがハイパーカー・カテゴリーでいかに重要な役回りを演じていたかがわかるはずだ。

【INTERVIEW 01】5号車ドライバー/フレデリック・マコヴィッキィ氏

かつてはスーパーGTでも活躍していたマコヴィッキィ。長らくワークスGTチームの911RSRをドライブしてきたが、2023年から963をドライブ。そのマシン特性についてこう説明する。「僕らの強みはタイヤのウォームアップが早いこと、あとは中高速コーナーが速いこと。一方ウィークポイントはトップスピードが伸びないこと、直線で5km/hも遅いんだ。これは今更変えられないので、あまり苦にしないように戦略を適応させる必要があるね」

【INTERVIEW 02】6号車ドライバー/アンドレ・ロッテラー氏

ポールポジションを獲得した6号車だが、レースを前にエースのロッテラーは決して楽観していなかった。「6号車の3人のドライバーはパフォーマンスもよく、すべてが平等で、エンジニアもいい。だから我々の決断、作戦、すべてが非常にしっかりしている。それがライバルたちに比べた我々の強みだ。でも正直に言うとクルマはそんなに速くない。ウエットタイヤはいいけど、ミディアム・タイヤとの相性はイマイチ。それを補う必要があるね」

【INTERVIEW 03】ポルシェ・ペンスキーモータースポーツ/ロジャー・ペンスキー氏

1972〜3年のCAN-AMでは917/10&30で王座に輝き、2006年からはRSスパイダーでALMS LMP2クラス3年連続王座を獲得した実績をもつロジャー・ペンスキー。今回は残念な結果に終わったが「長年に渡り様々なレースで成功を収めてきたが、まだル・マン優勝だけは達成できていないんだ。そのために今回ポルシェと築いたパートナーシップは素晴らしいものだと思っている」と、悲願のル・マン優勝に向け闘志を燃やしている様子だった。

Q.ポルシェ963のデザインハイライトは?
A.市販車ベースのデザインが取り入れられてます!

ポルシェ・ミュージアムに展示中の963の風洞モデル。実はポルシェの歴史上初めて市販デザイン部門の意見が取り入れられ、テールランプなどに911の意匠が用いられている。

フォト=ポルシェAG ル・ボラン2024年9月号より転載

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