コンパクトカーのベンチマークとして愛されるゴルフは今年で50周年を迎えた。これを記念して、本国ドイツにてスポーティゴルフを一堂に会したツアーを開催。ここでは、ゴルフGTI、ゴルフRをはじめ、モータースポーツにチャレンジしたゴルフなど、特別セレクションを紹介していこう。
いまとなって実感するゴルフ1GTIの偉大さ
空冷ビートルに代わるファミリーカーとして、水冷FF2ボックスのゴルフが登場したのは1974年のこと。それ以来、ドイツ本国をはじめ、世界のさまざまな地域のファミリーに愛されてきたのはご存じのとおりだ。その人気を支えているのがスポーツモデルの存在で、1976年にデビューしたゴルフGTIや、2002年にラインナップに加わったゴルフR32といったホットハッチが、たくさんのファンのハートを掴んできた。さらに、モータースポーツの世界でもゴルフはその存在をアピール。こうした歴史的なゴルフが、ドイツのVWオスナブリュック工場に集結し、今回のツアーでは、その勇姿を間近で見ることができた。
本題に入る前に、会場となったVWオスナブリュックについて触れておくと、ここはかつて名門コーチビルダーとして知られる「カルマン」があった場所で、空冷時代のビートルカブリオレをはじめ、ゴルフカブリオレ、シロッコ、コラードといったフォルクスワーゲン車の少量生産を請け負ってきた。2009年からはフォルクスワーゲンの100%子会社として、T-RocカブリオレやXL1、アルテオン・シューティングブレークといったモデルを世に送り出している。ここにはカルマン時代からの貴重なクルマを集めたコレクションホールがあり、今回はこのホールを使って「スポーツゴルフの50年展」を開催することになったというわけだ。
その主役ともいえるゴルフGTIは、初代ゴルフの誕生から2年後に登場。ゴルフのスポーツモデルをつくりたいという有志が非公認のプロジェクトとして開発をスタートさせ、会社の上層部にかけあい、5000台限定での発売に漕ぎ着ける。初代ゴルフGTIには、110psの1.6L直列4気筒エンジンが搭載され、最高速度180km/hオーバーの速さによりアウトバーンの追い越し車線を颯爽と駆け抜けた。人々は「ゴルフGTIがアウトバーンの民主化を成し遂げた」と称賛。そんなこともあり、ゴルフGTIの人気は沸騰し、最終的な販売台数は46万台を超えた。限定生産モデルがいまやフォルクスワーゲンを代表するアイコンとなっているのだから、世の中どう転ぶかわからない。
そんなヒストリーを持つゴルフ1GTIを展示ホールの奥に見つけ、駆け寄ろうとした矢先、「いまなら外にある試乗車が“よりどりみどり”」という情報をキャッチした日本からの取材陣は、いきなりゴルフ1GTIとゴルフ2GTIの2台をドライブする幸運に恵まれたのだ。
さっそくゴルフ1GTIへ。このクルマは1983年製の最終モデルで、排気量は1.6Lから1.8Lに拡大され最高出力が112psにアップしている。ゴルフボール型のシフトレバーをたぐって走り出すと、その活発さに驚かされる。レスポンスの良いエンジンと俊敏なハンドリングは、いまの基準でもまったく色あせず、これがいまから半世紀近く前に登場していたと思うと、当時の衝撃は計り知れない。
一方、乗り換えたゴルフ2GTIは1989年製で、基本的には直前に乗ったゴルフ1GTIと同じエンジンだが、触媒コンバーターが追加されたためにパワーは107psにダウン。ゴルフ2GTIのなかではもっとも控えめな仕様だった。ボディサイズの拡大などにともなう重量増もあって、ゴルフ1GTIのような威勢の良さは感じられなかったが、それでも、乗り心地やハンドリングは洗練されており、その後、16バルブ仕様の登場によりGTIらしさを取り戻すことになる。
71台限定生産のゴルフがRの起源だった
2台のGTIの試乗を終えて展示ホールに戻ると、入り口横にガンメタリックのゴルフ2が佇んでいることに気づく。よく見ると、フロントグリルには明るいブルーのラインとフォルクスワーゲン・モータースポーツのバッジ……。ということは、これは生産台数わずか71台のゴルフG60リミテッドではないか! G60とは搭載されるスーパーチャージャー付き1.8Lエンジンを指し、通常は160psのところ、このクルマでは2バルブから4バルブに変更することで210psを絞り出す。さらにFFを“シンクロ”と呼ばれる4WDに変更することで0→100km/h加速7.4秒、最高速230km/hを達成するという、まさに羊の皮を被った狼なのだ。
このクルマが展示されている理由は、もちろん貴重なゴルフのスポーツモデルということもあるが、パワフルなエンジンと4WDを組み合わせた高性能モデルという意味で、現代のゴルフRの起源にあたると見られるからだろう。
ゴルフG60リミテッドが生産されてから13年後の1989年、4代目ゴルフの時代に、最高出力241psの3・2LVR6エンジンと4WDの4モーションを搭載したゴルフR32が登場。GTIのさらに上を行くスポーツモデルとして進化を続けることになる。エンジンのダウンサイジングをリードするフォルクスワーゲンは、ゴルフ6の時代にエンジンを2L直4ターボに置き換え、モデル名をゴルフRと改めたが、いまやゴルフGTIを凌ぐほどの人気ぶりだ。
イベント会場の一番奥には、ゴルフ8.5と呼ばれる最新版のゴルフがベースのGTIとRも展示。GTIは標準モデルが265psの2Lターボを搭載するに対して、展示のGTIクラブスポーツは300psにパワーアップ。一方のRはいまや333psの2Lターボが採用され、前後に加えて、後輪の左右のトルクを自在に変えるRパフォーマンストルクベクタリングにより、俊敏なハンドリングを実現。フォルクスワーゲンによれば次のゴルフ9はEVになるというが、スポーツゴルフの伝統が次の世代にどう受け継がれるのか、期待は膨らむばかりである。
Q.歴代ゴルフGTIについて教えてください!
A.ゴルフⅠから用意されていました。
Q.知る人ぞ知るモデルとは?
A.たとえばこんなモデルがあります!
Q.ゴルフRは何世代からですか?
A.ゴルフ4で初めて登場しました。
Q.最後に新型ゴルフについて教えてください!
A.2024年9月より受注活動を開始します。
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