ICEだけでなくBEVモデルもラインナップの中心に据えられる新型ミニクーパー。ひと足先にスペイン・バルセロナにて試乗する機会に恵まれた。その第一印象をお届けしよう。
電動化でミニ“らしさ”に高級感が加わった
21世紀の幕開けと共に新たな歴史をスタートさせたミニ。その中核的な位置づけとなる3ドアモデルは今年、4代目となる新型が日本でも発表された。
最大のトピックはBEVモデルの設定だ。欧州では先代でもBEVモデルは設定されていたが、日本ではPHEVの展開が優先されていたこともあり、発売は見送られていた。新型はICEモデルがプラットフォームを継承する熟成型のフルモデルチェンジを採る一方、BEVは新開発の専用アーキテクチャーが与えられ、商品力が高まったこともあり、晴れて日本上陸を果たしたというわけだ。
ミニ3ドアのBEVモデルはEとSEの2グレードで構成される。違いはバッテリーの搭載量と航続距離に顕著で、Eは40.7kWhバッテリーを搭載し航続距離は344km、SEは54.2kWhの446kmとなっている(共にWLTC)。動力性能的には0→100km/h加速がEは7.3秒でSEは6.7秒、最高速はEが160km/hでSEが170km/hと、歴然というほどの差はない。つまり両グレードの選択基準は価格と用途に依ることになるだろうか。
既にBEV版ミニの5ドアモデルとも目されるエースマンが発表されていることもあり、この3ドアモデルに過度な実用性を求める向きはないかもしれない。いっそ街中でのアシと割り切るなら、Eでも充分ということになりそうだ。逆に長距離を走る、V2Hの能力を存分に活かしたいというならSEが候補ということになる。
ボディ外寸は、前型及び新型のICEモデルとほんの僅かの差しかなく、ほぼ同じ大きさと言える。ホイールベースは30mm長いが、そのぶんの広さはしっかり享受できるようで、181cmの筆者が採ったドラポジのまま、後席に座ってみても膝周りは苦もなく収まるなど、居住性は望外に高い。
内装は新世代ミニシリーズの象徴ともいえる240mm径のタッチディスプレイがセンターに、その下部にトグルスイッチを模したシフト&ドライブセレクターが配されるなど、オリジナルミニのミニマリズムが今日的に表現されている。操作系の大半がタッチパネル内に集約された点は賛否が分かれそうだが、よく使う機能はトップ画面にウィジェットとして表示するなど、使い勝手には気を配っている。インフォテインメントはBMWの最新OSに準拠しており、そこにミニならではのデザインや効果音などを配した、ポップな仕上がりとなっている。
試乗車は上位グレードのSEだったが、走りのフィーリングは良くも悪くもこれまでのミニのイメージから想像するものとは異なるものだと思う。その一面はもちろんBEVならではの静粛性に現れるわけで、内燃機という音源を持たないがゆえの静かさに加えて、ロードノイズや足回りの作動音、さらには風切音などもしっかりチェックされており、その乗り味はさながら小さな高級車でさえある。
一方で、アイデンティティともいえるゴーカートフィールはさすがに内燃機モデル並みの軽妙さとはいかない。重量や重心からくる初動の重さは否めないが、そこから舵を切り込むほどにグイッと立ち上がるゲインの高さにはミニらしいわかりやすさがある。
乗り心地も含めてクルマの動きそのものは大人になったものの、ミニらしい楽しさはしっかり担保する。BEV化による変貌が、ミニのキャラクターをより一歩深化させたことは間違いなさそうだ。
【SPECIFICATION】ミニ・クーパーSE
■車両本体価格(税込)=5,310,000円
■全長×全幅×全高=3858×1756×460mm
■ホイールベース=2526mm
■トレッド=前:1538、後:1535mm
■車両重量=2055kg
■モーター形式/種類=HC0001N0/交流同期電動機
■モーター最高出力=前:218ps(160kW)/7000rpm
■モーター最大トルク=前:330Nm(33.7kg-m)
■バッテリー種類=リチウムイオン電池
■バッテリー容量=54.2kWh
■一充電航続可能距離(WLTP)=402km
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:3リンク/コイル
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ディスク
■タイヤ(ホイール)=前:205/50R17、後:225/40R18
問い合わせ先=BMWジャパン TEL0120-3298-14