911(TYPE992)がアップデートを受け992-IIへと進化。事前にプロトタイプの試乗も行なうことが許されたが「リポートはNG!」とのことで、ここでは現地取材で得た情報を中心に992-IIの概要を解説していこう。
ディスプレイは遂にフルデジタル化
ポルシェ911は1964年に誕生。今年でちょうど60年を経過したが、リアエンジン・リアドライブ2+2クーペという基本的なレイアウトを変えることなく現在に至っている。もちろん60年の間では、世界市場における様々な規制とモータースポーツのホモロゲーションに対応するために改良が加えられ、現在では8世代目の992が2019年から市場に投入されている。そして今回、この現行モデルのアップデートが行なわれた。
カブリオレを含むスタンダード911シリーズのエクステリアにおける変更はわずかで、フロント部分はウィンカーがヘッドライトユニット内に内蔵され、エアインテークがリデザインされた。リアでは車幅一杯に広がるLEDライトにポルシェロゴが一体化され、その上のリアグリルは左右5本のリブが並ぶ。ディフューザーのデザインも変更され、ナンバープレートがボディ上部へと移動された。
一方、インテリアではようやくフルデジタルディスプレイが採用され、ドライバー正面には7つのメニューが選べる12.6インチのカーブドディスプレイ、ダッシュボード中央には10.9インチのセンターディスプレイがレイアウトされている。そしてイグニッションがついに回転式からプッシュボタン式に変更。またソフトウエアもアップデートされ、SiriボイスアシスタントなどAppleエコシステムによるダイレクトな操作が可能になった。
スタンダード911が搭載する3L水平対向ツインターボエンジンは現行GTSのターボチャージャー、そしてターボから移植された大型インタークーラーなどの採用で最高出力は394ps、最大トルク450Nmへと高められた。その結果、0→100km/h加速は4.1秒(スポーツクロノパッケージ仕様車は3.9秒)、最高速度は294km/hへとそれぞれ向上している。
T-ハイブリッドにより圧倒的な加速を他に入れた
最大のトピックはシリーズ中のGTSがついにハイブリッド化されたことである。「T-ハイブリッド」と呼ばれるシステムは以下のような構造になっている。
水平対向6気筒エンジンはボア×ストロークを97mm×81mmへと変更され、総排気量は2981ccから3591ccへと増加、さらにこれまでの左右のバンクに一基ずつレイアウトされていた排気ガスターボに代わり下の図のように一基の電動ターボ(ブルグワーナー製e-Turbo)が採用された。この電動ターボシステムによって低回転域からの素早い過給作用はもちろん、11kWの回生能力も持ち合わせている。また燃焼効率と排気ガスの改善も図られ、どのような負荷状態にあっても「ラムダ=1」が維持されている。
この新型エンジンの最高出力は485ps、最大トルク570Nmへとパワーアップされている。さらにエンジンと8速PDKの間には最高出力41ps、最大トルク150Nmを発生させる電気モーターが挟み込まれ、スタータージェネレーターとアシスト機能を持っている。ちなみにこのモーターを挟み込むためにポルシェは、今から13年前の991でホイルベースを10cm延長して今日のために備えていたのである。この用意周到っぷりがいかにもポルシェらしい。
またこのシステムをサポートするのは400Vのアーキテクチャーで、後輪ステアやPASMを作動させる。またリチウムイオンとなった補機類用の12Vバッテリーはリアシートの下へ格納。その結果ハイブリッドシステムによって新しい911GTSのシステム総合出力は541ps、最大トルクは610Nmへと若干のパワーアップに成功している。
また、ポルシェがこのマイルドハイブリッドシステムを導入した最も大きな理由は、重量とレイアウトの問題である。
27kgの高電圧リチウムイオン電池を含んだT-ハイブリッドシステムを搭載した新型GTSクーペの空車重量(DIN)は、1595kgと現行GTSと比較してもおよそ50kgのエクストラウエイトで済んでいる。またEV走行はできない代わりに前述の400V電池によって影響を受けるのはフロントの燃料タンク(6L減少して84Lへ)に留まる。もちろん2+2の基本キャビンレイアウトにも変更はないが、スタンダード仕様は2シーターでリアシートは無料オプションとなっている。
T-ハイブリッドシステムを搭載した911GTSのダイナミクス性能は、0→100km/hは3.0秒(4.1秒)、200km/hまでは10.5秒(12.7秒)となり、加速は( )内の現行モデル比で大幅に短縮されている。それはピックアップの鋭い電気モーターを採用した結果によるもので、ポルシェが事前に発表した数値によればスタートしてから2.5秒後の到達距離は現行GTSの14.5mに対して新しいT-ハイブリッドGTSでは21.5mと7mも先行している。すなわちシグナルスタートではEV並みの実質加速が楽しめるというわけである。
またその実力は、事前に行なわれたニュルブルクリンク北コースにおけるタイムトライアルでも証明されており、T-ハイブリッドGTSの最速ラップは7分16秒93で現行GTSモデルよりも8.7秒速い。これは明らかにコーナーからの脱出や上り坂でのピックアップ性能の向上によるものだろう。
ところで最も重要な問題の排気ガス測定値や燃費に関しての数値だが、暫定的にCo2(WLTP)は251〜239g/kmと現行モデル(258〜244g/km)よりも向上。これには空力特性の改善も貢献しており、GTSではフロントに5枚の縦型アクティブエアフラップが採用され、空力特性は旧モデルの0.32から0.27へと向上している。
スタンダードの911、GTSともに日本での販売価格は発表され、予約受注も開始されている。
【SPECIFICATION】ポルシェ911カレラ
■車両本体価格(税込)=16,940,000円
■全長×全幅=4542×1852mm
■ホイールベース=2450mm
■車両重量=1520kg
■エンジン形式/種類=ー/水平対向6DOHC24V+ターボ
■内径×行程=91.0×76.4mm
■総排気量=2981cc
■最高出力=394ps(290kW)/7500rpm
■最大トルク=450Nm(45.9kg-m)
■燃料タンク容量=90L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速DCT
■サスペンション形式=前:マクファーソンストラット/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
【SPECIFICATION】ポルシェ911タルガ4GTS
■車両本体価格(税込)=26,150,000円
■全長×全幅=4553×1852mm
■ホイールベース=2450mm
■車両重量=1820kg
■エンジン形式/種類=ー/水平対向6DOHC24V+ターボ+モーター
■内径×行程=97.0×81.0mm
■総排気量=3591cc
■最高出力=485ps(357kW)/7500rpm
■最大トルク=570Nm(58.1kg-m)
■モーター形式/種類=ー/交流同期電動機
■モーター最高出力=65ps(41kW)
■モーター最大トルク=150Nm(15.3kg-m)
■燃料タンク容量=84L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速DCT
■サスペンション形式=前:マクファーソンストラット/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
問い合わせ先=ポルシェジャパン TEL0120-846-911