【国内試乗】フラッグシップモデルにしてS63史上最もパワフルでダイナミック!「メルセデスAMG S63 Eパフォーマンス」

日本で新型Sクラスが発表されたのはなんと2021年1月。まさに待望ともいえる、AMG版Sクラスが日本上陸を果たした。F1の技術を採用した高性能プラグインハイブリッド「E PERFORMANCE」を搭載したその走りはいかに!?

満を持して上陸したSクラスのAMG版

現行Sクラスの販売が日本で始まってかれこれ3年が経つけれど、一部では買い控えの現象が起こっていたという。彼らが待っていたのはSクラスのAMG版で、それがようやく日本へ上陸した。昨年11月に発表となったS63Eパフォーマンスである。

Sクラスのロングボディだが後輪操舵が標準装備なので取り回しや旋回性に問題はない。

EパフォーマンスはAMG独自開発のPHEVシステムで、リアアクスルにモーター/2段変速ギア/LSDとバッテリーを搭載。190psを発生するモーターは状況に応じてエンジンをサポートする。EVモードでの走行も可能で、最大37kmの航続距離が確保されている。
フラッグシップモデルのSクラスのトップレンジということで、メルセデスがいま持っている先進技術のあれこれがこれでもかというくらい惜しみなく投入されている。エンジンはBSG仕様で、エアコンなどの電装品に電力供給。AMGダイナミックエンジンマウントは、マウントの剛性を随時調整してNVの抑制や操縦性の向上に寄与。4マチック+は前後トルク配分の調整を常に間断なく行ない、電制LSDは後輪左右のトルク配分を適宜司る。AMGライドコントロールとエアサスペンションの組み合わせにより、セルフレベリング機構が車高を一定に保つだけでなく、ばねレートと減衰力を最適化。AMGアクティブライドコントロールはいわゆる電動式スタビライザーで前後へ装備、乗り心地の向上とボディのロールコントロールを両立。後輪操舵機構は最大3度まで後輪を操舵し、ロングホイールベースによる曲がりにくさを相殺する。さらにボディも強化。V8ツインターボの下にアルミ製の補強をプレート、サスペンション取り付け部にクロスブレース、リアのアンダーボディにアルミ製の補強プレートなど、それぞれこのクルマのためだけに追加している。

フロントに4L・V8エンジン、リアにバッテリーとモーターを搭載したPHEV。それにAMGのパフォーマンス志向の連続トルク可変配分四輪駆動システムの4マチック+を組み合わせる。

ここまでやられると、正直に言って自分自身でクルマを操っているのか、あるいはクルマ側でほとんどすべての挙動をコントロールしているのかよく分からない。3215mmもホイールベースがあるのに、その長さをまったく感じさせない優れた回頭性とばね上のピッチ/ロール/ヨーのコントロールは、さまざまなデバイスの協調制御によるものだろう。ドライバーの出る幕なし、とまでは言わないけれど、ボーッと運転していても、1秒以下の単位で多くの制御が働いていて、でもその様はほとんど体感的には伝わってこない。

インテリアはSクラスらしい高い質感はそのままに、ステアリングやトリム、シートなどはAMG専用装備を装着。

ただおそらく、S63を待ち望んでいた方々の嬉しさはそこではなく、V8ツインターボとEパフォーマンスがもたらす圧倒的なパワーに違いない。エンジンだけでも612ps/900Nmを発生するのに、ここにハイブリッドシステムによる出力とトルクが上乗せされる。結果、システムとしての最高出力は802ps、最大トルクは1430Nmにも達するに至った。車両重量は約2.7トンにも及ぶのに、0→100km/hをわずか3.3秒でこなすことができるのも、この類い希なるパワートレインだからこそ成せる技である。

現実的に、このパワーを余すことなく使い切るのは公道では無理だし、運転スキル的にもかなり難しい。せっかく手に入れても宝の持ち腐れになってしまうのではあるまいかと、自分なんか憂慮してしまうのだけれど、動力性能の向上が一義的目的として採用されたPHEVシステムが、通常域での乗りやすさも提供する。140km/hまで走行可能なモーター駆動により、満充電であれば一般道を走行している最中にエンジンが目覚めることはほとんどない。日本仕様のSクラスでEVモードが選べるのは現時点でS63のみであり、つまりエンジンが発する音や振動が悪さすることなく優れた快適性が享受できるのは、このモデルだけなのである。

後席はショーファードリブンとしての用途にも対応できる。

ただしひとつだけ、どうにも解せないこともあった。自分は昨年、このクルマの国際試乗会に参加して、その模様もル・ボラン誌に寄稿している。要約すると「トロットロの優れた乗り心地は速度域を問わず提供され、初めてノーマルよりもAMGのほうがいいと思った」みたいなことを書いた。ところが今回の個体は乗り心地が芳しくなかった。低速域から路面の小さな入力がコツコツと身体に伝わってくるし、高速域では多少改善されるもののそれでも「トロットロ」にはほど遠い状態だった。自分が嘘つきにならぬよう、これはあくまでも個体差であると切に願うばかりである。

EV走行可能距離は37kmで、例えば深夜や早朝の住宅地などでは排出ガスを出さず、静かに走行が可能だ。

【SPECIFICATION】メルセデスAMG S63 Eパフォーマンス
■車両本体価格(税込)=35,760,000円
■全長×全幅×全高=5335×1920×1515mm
■ホイールベース=3215mm
■車両重量=2690kg
■エンジン形式/種類=V8DOHC32V+ツインターボ
■総排気量=3982cc
■最高出力=612ps(450kW)/5500-6500rpm
■最大トルク=900Nm(91.8kg-m)/2500-4500rpm
■モーター形式/種類=—/交流同期電動機
■モーター最高出力=190ps(140kW)/4450-8500rpm
■モーター最大トルク=320Nm(32.6kg-m)/150-4000rpm
■燃料タンク容量=76l(プレミアム)
■燃費(WLTC)=8.6km/L
■トランスミッション形式=9速AT
■サスペンション形式=前:4リンク/エア、後:マルチリンク/エア
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:255/45ZR20、後:285/40ZR20

問い合わせ先=メルセデス・ベンツ日本 TEL0120-190-610

フォト=望月浩彦 ル・ボラン2024年3月号より転載

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