アウディのフラッグシップセダン「A8」のPHEVモデルが国内にも導入された。V6エンジンとモーターの組み合わせは、ラグジャリーサルーンとして相応しい乗り心地とドライバビリティを両立していた。
ラグジャリーサルーンとして相応しい仕上がり
アウディのフラッグシップサルーン“A8”にプラグインハイブリッドモデルが追加された。
A8 60 TFSI eクワトロと名付けられたニューモデルは、V6・3Lエンジンに136ps/400Nmのモーターを組み合わせるとともに、総容量17.9kWhのバッテリーを搭載して54kmのEV航続距離(WLTC)を実現。0→100km/h加速は、V8搭載モデルの4.4秒に迫る4.9秒で駆け抜けるという。
ちなみにアウディのPHEVは、2014年デビューのA3 スポーツバック e-tronが初作で、A8 60 TFSI eクワトロが通算2モデル目となる。ドイツ本国では2019年に発表されていたが、2022年実施のフェイスリフトを受ける形で、今回、日本にも導入されることが決まった。
まずは都内の一般道を走る。PHEVの定石どおり、走り始めはバッテリーに充電された電力を優先して用いるEV走行となるため、もともと静かなA8のキャビンはさらに静粛性が高まり、ラグジャリーサルーンに相応しい静謐なひとときを味わえる。このEV走行の範囲内でも都市部の交通の流れには十分に対応できる動力性能が得られるものの、たとえば追い越し加速などでスロットルペダルをおおむね50%以上まで踏み込めばV6エンジンが穏やかに始動して、それまで以上に力強い加速感を示す。しかも、その際のショックは皆無といっていい。おまけにエンジン音はV6とは思えないほど滑らかで抜けがいいタイプなので、PHEVにありがちな「エンジンがかかった瞬間にガッカリする」こともなかった。
乗り心地がソフトで快適なことはいうまでもないが、コンフォートモードで軽いピッチングを感じることが多かった従来モデルと異なり、新型はゴツゴツとした印象を与えることなくフラット感を実現していたのは嬉しい驚きだった。いっぽうで、このクラスのサルーンにしてはステアリングのレスポンスが良好で正確というA8の伝統を受け継いでいることも特筆すべきだ。
敢えてネガティブな面を指摘するなら、トランクルームのフロア下にバッテリーを搭載した関係で荷室(505L→390L)と燃料タンク(82L→64L)の容量が若干縮小したものの、実用上の差は大きくない。それよりも、バッテリー搭載によって前後重量バランスがイーブン(51:49)に近づいたことのほうがドライビングダイナミクスの改善に大きく貢献しているはずだ。
PHEVの快適性を高めるうえで重要なのは、エンジン走行時の騒音や振動をEV走行時に近づけることにある。なぜなら、人間の感覚は、絶対値の大小関係以上に、刺激の変化量に強く反応する傾向があるからだ。その意味でいえば、PHEV化はラグジャリーサルーンの進化に役立つことになる。A8 60 TFSI e クワトロは、まさにその好例といっていいだろう。
【SPECIFICATION】アウディ A8 60 TFSI eクワトロ
■車両本体価格(税込)=13,200,000円
■全長×全幅×全高=5190×1945×1470mm
■ホイールベース=3000mm
■トレッド=前:1635、後:1625mm
■車両重量=2410kg
■エンジン形式/種類=C2S/V6DOHC24V+ターボ
■内径×行程=84.5×89.0mm
■総排気量=2994cc
■最高出力=340ps(250kW)/5000-6400rpm
■最大トルク=500Nm(51.0kg-m)/1370-4500rpm
■モーター形式/種類=EAL/交流同期電動機
■モーター最高出力=136ps(100kW)/2390-7000rpm
■モーター最大トルク=400Nm(40.8kg-m)/0-2390rpm
■燃料タンク容量=82L(プレミアム)
■燃費(WLTC)=10.6km/L
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前後:Wウイッシュボーン/エア
■ブレーキ=前後:ディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:265/49R20
問い合わせ先=アウディジャパン 0120-598-106
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