広大な室内空間と豊富なユーティリティ、ひと目でカングーとわかる親しみのある個性はそのままに、先進のエッセンスを取り入れた新型へと生まれ変わったカングー。やはりこの唯一無二の存在を忘れるわけにはいかない。
やはりカングーは唯一無二の存在
初代モデルの上陸から20年余り、日本ではすでにひとつの“ジャンル”になっている気さえするのがカングーだ。過去、多い年ではルノージャポン年間販売台数の半分以上をカングーが占めた。2023年のカングージャンボリーには、雨の中、1300台を超えるクルマが集まった。
ミニバン王国の日本にあって、カングーのユニークな点は、初代の頃から“商用車派生”であることだ。あわよくば3列シートを目指す国産ミニバンが子だくさんのクルマなら、2列シートを貫くカングーは“荷だくさん”の用途に向いている。使い勝手や信頼性や耐久性も、働くクルマの基準でつくられている。
後席スライドドアのボディは全長4.5m、全幅1.86m。3代目の新型は「デカングー」と呼ばれた先代よりもさらに21cm長く、3cm広くなった。でも、カングーが大きくなり過ぎたと嘆く人は、長さ4mの初代モデルを大切に乗り続けているかもしれない。積荷が増える一方の先代ユーザーなら、新型のサイズアップはむしろ歓迎ではないだろうか。
今度の日本仕様も6対4で左右に開くダブルバックドアを採用する。上ヒンジのテールゲートほど開閉空間を必要としない。ロックを外せば、180度まで開けられる。平常時の荷室容量は660Lから775Lに増えた。後席を畳めば2800Lに増量する。といってもピンとこないので、タイヤのデカいMTB(ファットバイク)を積んでみた。荷室フロアの地上高が60cmと低いので、重量物やかさ物の出し入れはラクだ。自転車ならもちろん立てたままで難なく積める。平常時、荷室の目隠しにもなるリアシェルフが後席背もたれ裏側にスライドして収納できるようになったのは、アイデア賞の改良点だ。
試乗車はガソリンモデルのクレアティフをベースにした200台限定のヴァリエテ(419万円)。モスグリーンと黒ツートーンのレザー調シート(オプション)が、マイリマシタ! と言いたくなるくらいお洒落だ。前席はもとより、座面の高いリアシートの居住まいはますます上等になった。「リアシート付けといたよ」くらいの簡便さだった初代カングーとは別物だ。もっとも、出たてのカングーは175万円だったが。
ルノー/日産/三菱アライアンスの新エンジンは、ルノーでは現行ルーテシア初出の1.3L 4気筒ターボ。協業パートナーのメルセデスも以前からAクラスに搭載している。トランスミッションはゲトラグのデュアルクラッチ変速機。先代の6速から7速に変わった。そのガソリンユニットは、不満なしである。新型のディーゼルは未試乗だが、これまでの経験から言うと、軽さならガソリン、力強さならディーゼルだと思う。
しかし、カングー初体験の人がハンドルを握って、まず感銘を受けるのは、この乗り心地だろう。タップリしたストローク感で、脚がゆっくり動く。動き出した途端、楽しい休日を予感させるような足まわりだ。乗り心地がホリデーなのだ。やわらかいのにしっかりしたこの脚は、高速でもタイトコーナーでもよくねばる。トーションビームのリアサスペンションを覗き込んでも、むしろ“マシン・ミニマム”に見えるコンパクトなつくりなのに。
新型に乗っても、やはりカングーは唯一無二だなと思った。ブラックバンパーモデルはSUVっぽい精悍さも備えたし、ますますカングーファンを増やしそうだ。
【SPECIFICATION】RENAULT KANGOO Variété
■車両本体価格(税込)=4,190,000円
■全長×全幅×全高=4490×1860×1810mm
■ホイールベース=2715mm
■車両重量=1560kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1333cc
■最高出力=131ps(96kw)/5000rpm
■最大トルク=240Nm(24.5kg-m)/1600rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション=前:ストラット、後:トーションビーム
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前後:205/60R16
問い合わせ先=ルノー・ジャポン TEL0120-676-365
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