高性能モデル、ホーネットのコンバーチブル
ハドソンはかつてアメリカに存在した、ビッグ3以外の独立系(インディペンデント)自動車メーカーである。その系譜は、他のインディペンデントとの合併を経てAMCとなり、クライスラーへと流れ込んでいる。
1909年創業のハドソンは、高級感と先進技術を併せ持つクルマ造りを得意としていた。そのイメージは、第二次大戦後、ビッグ3より1年早く純戦後型へとフルチェンジを行ったことでも窺い知れる。この1948年型ハドソンでは、フェンダーをボディと一体化したスラブサイド・スタイルをいち早く導入。さらに、フロアパネルをフレームの上に載せるのではなく、上下からフレームで挟む形のレイアウト、所謂“ステップダウン”シャシーを採用したのが最大の特徴であった。この車体構造により重心が低くなり、ハンドリングも良好なものとなった訳である。
1948年型登場時点では、ハドソンのラインナップは上級のコモドーレ・エイト/コモドーレ・シックスと、下級のスーパー・エイト/スーパー・シックスの4種があり、各々4ドア・セダン、2ドア・クーペ、コンバーチブルが用意されていた。車名の「エイト」と「シックス」はもちろんエンジンの気筒数の違いで、前者が直列8気筒、後者が同6気筒を搭載していた。
ハドソンは毎年ラインナップとディテールを変化させながらこの1948年型をキャリーオーバーしていった訳だが、1951年から加わったのがホーネットである。同年型では下からペースメーカー、スーパー・カスタム、そしてコモドーレというラインナップであったが、ホーネットはコモドーレに強力な308-cid(5.1L)の6気筒エンジン(145hp)、”H-145”を載せたハイパフォーマンス・モデルという位置づけだった。ボディは上記のセダン、クーペ、コンバーチブル(”ブロアム”と呼ばれる)に加え、2ドア・ハードトップ(こちらは“ハリウッド”)も存在する。
本題の1952年型は、内容的には前年とさほど変わらず、外観等の細部デザインに変化があったのみだが、H-145エンジンには”ツインHパワー”と呼ばれるオプションが加わった。これはキャブレターを2連装にしたもので、最高出力は170hpにまでアップしている。このツインHパワーは前年型ですでにディーラー・インストールのオプションとして設定があったものを、正式なオプションに格上げしたものであった。
なお、この年のラインナップは、前年までのスーパー・カスタムがワスプに名を変えており、下からペースメーカー、ワスプ、コモドーレ、そしてホーネットという構成となる。下級モデルのペースメーカーとワスプはホイールベース119インチ(3023mm)、コモドーレとホーネットでは124インチ(3150mm)であった。前述の操縦性とハイパワーエンジンの組み合わせにより、ホーネットは当時のストックカーレースで目覚ましい活躍を見せたのだが、それについて触れるのは機会を改めてのこととしよう。
ストックカーレース仕様キット化の余波でコンバーチブルも登場!
さて、この時代にはアメリカの自動車業界にもまだプラモ化ラッシュは押し寄せておらず、ハドソンも長いこと1/25スケール・キットは存在しない状態であった(当時のものとして1/20スケールのプロモーションモデルは存在する)。しかし、21世紀となってこの状況を一変させたのが、新興メーカーのメビウスモデルである。同社は1953年型を皮切りに1952、1954と、各年式のホーネットを緻密な再現ぶりでキット化してきた。
ここでご覧いただいているのは、1952年型のホーネット・コンバーチブル”ブロアム”を美しく仕上げた作品である。自動車模型専門誌「モデルカーズ」の198号(2012年)に掲載されたものだが、ここでは以下、作者・周東氏による解説をお読みいただきたい。
「ボディはコッペパンのようなふっくらとしたラインで、クーペ同様なかなかいい感じだ。形状は三角窓の上側のラインに疑問があるほか、特に問題となる部分はない。全体的にヒケもほとんどなく、パーティングラインもクーペの時のような段差レベルではなく、ごく軽いものなので、ペーパーで軽く全体を整える程度でいいだろう。三角窓の角の部分は破損しやすいので扱いには注意が必要だ。
ドア後部のパネルラインは上面のモールドの部分には無いので、スジボリを追加しておくとよい。フロントバイザーはオプションのパーツだが、もし使用するならば注意が必要だ。ボディ側のガイド穴とバイザー側のピンの幅が合っていないので、キットのままだとバイザーが弓なりになってしまう。作例ではバイザーのピンを削り取りAピラーに直接接着したが、接着面が少ししかないので破損しやすくなってしまった。
コンバーチブル・トップはこのキットの場合ブーツ(トノーカバー)のみなので、畳んだ状態にしかできない。このブーツのパーツはとても良い感じだ。グリル等のメッキパーツは少しエッジが荒れているところもあるので、見苦しい場合は修正が必要だ。なお、説明書には1953年式のグリルやオーナメントもキットに入っていると記述されているが実際には入っていない。何かの手違いだろうか?
インテリアは合わせが若干良くないところがある。特にサイドパネルの後端とリアシートが接する所は隙間ができる。作例のようにダークカラーでペイントするならばさほど目立たないが、タン等のライトカラーでペイントする場合は調整しないと見苦しい状態となるので注意が必要だ。
リアシートのトレイの部分とサイドパネルの後上端の部分は組み上げた時、幅がブーツと同じでないとボディへセットできなくなるので注意が必要だ。作例ではサイドパネル後上端のトレイと接する部分を削り、全体の幅を狭めてボディとの仮組みを行い調整している」