1970年代日産商用車を支えた傑作車
キャブオールは、現在のアトラスに連なる、日産の中・小型キャブオーバートラックの系譜の、起点となったモデルである。初代キャブオールは、トヨタのトヨエースの成功に刺激されて生まれたもので、小型ボンネットトラックのジュニアをベースに、レイアウトをキャブオーバー式とし荷台の面積を拡げた車種であった。そのデビューは1957年のことである。
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そして9年後の1966年8月、キャブオールはフルモデルチェンジを行い二代目・C240型系へと生まれ変わった。それまでの、丸みを帯びたいかにも1950年代生まれらしいスタイリングは、直線的な形状に一新され一気に近代化。丸型2灯だったヘッドライトも4灯化されて、その印象を強調している。フロント上部にヘッドライトを配置し、下部に横長のフロントグリル(四角いターンシグナルが組み込まれている)を取り付けた顔つきは、非常にスマートなものだった。
形状がモダナイズされただけでなく、先代では逆開きだったドアも前ヒンジ・後ろ開きに。シートはスライド可能なセミバケットタイプを装着、運転席・助手席とも整備の容易な跳ね上げ式。ダッシュボードには大型グローブボックスと荷物棚が備わり、ドア内張りも豪華なものとなって、日産では「このクラス最高の室内装備」を謳っていた。
新設計となるシャシーは、コの字断面のフレームに前後リーフスプリング+ショックアブソーバーのサスペンションを取り付けたもの。プロペラシャフトには無給油式ジョイントを採用、また全車にハイドロマスターが標準で装着されていた。ホイールベースは、標準の2500mmとロングボデー用の3100mmの、2種類を設定。エンジンは、ガソリン車が直列4気筒OHV 2LのH20(92ps)、ディーゼル車が直列4気筒OHV 2.2LのSD22(65ps)を搭載している。
バリエーションはまず標準車があり、これは荷台とキャビンのデザインに一体感を持たせたているのが外観上の特徴で、荷台長は3100mm。この他にこれをベースとした高床式と、荷台長4100mmのロングボデー、さらにダンプやバン、マイクロバスもラインナップされていた。
10年にわたって生産・販売されたC240型系キャブオールだけに、その変更も多岐に渡る。1967年10月には4速ミッションを新設計のものに変更・OD付5速をオプション設定するとともに荷台の強化も実施。1968年10月のマイチェンではフロントグリルのデザインを改めるとともに、ダッシュボードのソフトパッド化やテールランプへのバックランプ組み込みなどが安全対策として施されている。1969年2月には高床車およびダンプに後輪ダブルタイヤ仕様を追加、遅れて同年4月にはロングボデーにもダブルタイヤを加えた。
1971年8月には、ダンプを除く全車にデラックスと称するモデルをラインナップ。これは外観ではフロントバンパーやホイールキャップをメッキ仕上げとし、青ガラスやラジオ、外気導入式ヒーターを装備、シート生地を上質なものに変更するなどしたものである。1973年1月には再びマイナーチェンジでフロントグリルなどをアップデート、内装もシートをハイバックタイプとしダッシュボードのデザインも変更するなど、大きく手が加えられている。ディーゼルエンジンはSD22からED30(3L、85ps)に代替、さらにディーゼル車にはダブルキャブが追加され、ダンプ用シャシーも専用設計のものに改められた。
そして1976年5月、旧プリンス系車種であるクリッパーと統合を図りつつモデルチェンジを実施し、三代目・C340型系へと移行している。ただし、フロントマスクは大きく印象を改めたが、キャビンそのものは二代目のキャリーオーバーであった(三角窓は廃止)。1981年に後継車アトラスへとモデルチェンジされるまで、このキャビンは15年にわたって使われ続けたことになるのである。
この頃の2トン・クラスのトラックは、皆どことなく似ている
さて、エルフやキャンターといった車種と比べるとほんのすこしマイナーなキャブオールであるが、トミカやダイヤペットなどのミニカーでキャブオールに親しんだという方は少なくないであろう。しかし、ここでお目にかけているのは、そうしたミニカーのリペイント作品などではなく、1/32スケールのプラモデル作例である。と言っても、キャブオールのプラモデルが存在したわけではない。この作例は、フジミの三菱ふそうキャンターをベースに、キャブオールへと改造したものである。
一時期のフジミはトラックのキット化に非常に熱心で、1/32スケールではこのキャンターの他、トヨタ・ダイナもモデル化、兄弟車であるダイハツ・デルタや日野レンジャー2もリリースしていた。1970年代の2トン級トラックは、どのモデルもどことなくキャビン形状が似ているが、中でもこのキャブオールとキャンターは一番近いものがあるだろう。これに比べると、クリッパー(二代目)への改造は難しいかもしれない。二代目エルフにはさらに遠いであろう。
さて、作例はダブルタイヤのパネルボデーとしたが、これは元キットそのままの状態である。キャビン周りは最初期型を再現したものであるが、上記解説にて記したように、そもそもダブルタイヤ仕様は最初のマイチェンを経てラインナップされたもので、その点は矛盾がある。これは作例依頼時のモデルカーズ編集部におけるリサーチが不足していたためだ(作例は同誌の223号/2014年のために制作されたもの)。非常に申し訳ないところではあるが、作例はあくまで「フジミのキャンターからキャブオールへの改造は可能である」という参考例として見ていただき、さらに挑戦心のある方には同様の改造を、さらに徹底したリサーチとともに行ってもらえれば幸いだ。