長めのホイールベースで伸びやかに
日本では、小型のボンネット型トラックと言えば全てピックアップと称されがちだが、アメリカでは、パッセンジャーカーをベースとしたそれは「クーペ・ユーティリティ」として、純然たる商用車のピックアップトラックとは区別されてきた。
その始まりは1930年代のことで、既存のクーペのトランク部からフードを取り払い、四角い荷台を据え付けた形の自動車をクーペ・ユーティリティと呼んだのである。そして1950年代後半、フォードがその基本形状を大きく変えることとなる車種を発売した。1957年型フォードにラインナップされたランチェロがそれだ。フォード・ランチワゴンをそのままベースとし、車体後半をベッドとしたランチェロは、そのスタイリッシュさとユーティリティの両立で、なかなかの人気を呼んだ。
このランチェロの対抗馬として、シボレーが1959年型で送り出したのが、ほぼ同様の成り立ちを持つエルカミーノである。しかしエルカミーノの販売は振るわず、1960年型で一旦幕引きされた。数年のブランクの後の仕切り直しとして、1964年型で復活したのが二代目エルカミーノである。
シボレーは1960年型でコルベア、1962年型でシェビーⅡとふたつのコンパクトを発売し、さらに1964年型では新たにシェベルの名で、コンパクトとフルサイズの間を埋めるインターミディエートを登場させているのだが、二代目エルカミーノはこのシェベルをベースとしたモデルであった。ライバルのランチェロは1960年型から、コンパクトのファルコンをベースとしたモデルに移行しており、二世代目エルカミーノは、ライバル同様に実用的かつ経済的な設定となっていた。
そしてベースであるシェベルとともにモデルチェンジを行うことで、1968年型からは第三世代に移行。この世代のシェベルには、2ドアに用いられる112インチ(2845mm)と、4ドアやワゴンに用いられる116インチ(2946mm)の、2種類のホイールベースのシャシーが存在したが、エルカミーノは後者をベースとしたことで、全長が長く伸びやかで大柄な車体となった。
この三世代目エルカミーノでは俄然スポーティな性格を強めていくこととなり、ハイパフォーマンス・モデルであるSS396も登場。これは1970年型ではエンジンが402-cid(6.6L)に強化されるなど、高性能志向に一層の拍車がかかった。さらに当時のシボレーにおいて最大かつ最強を誇った450hpのLS6 454-cid(7.4L)エンジンを搭載する特別なモデルまで作られ、そのスタイリッシュなプロポーションとも相俟って、第三世代エルカミーノは極めてスポーティなクーペ・ユーティリティとして、現在でも非常に人気の高いコレクティブルカーとなっている。
話を1969年型に戻すと、この年は名機シボレー350 V8が初めて搭載されたことと、ベースである同年型シェベル自体の人気も高いことから、最も評価の高い年式として、エルカミーノの象徴的存在となっている。前年型からの変更点はごく僅かで、外観における違いも少ないが、最も目につくのは前後フェンダーに装着されたサイドマーカーであろう。
搭載されるエンジンは、まず直6が2種類あり、230-cid(3.8L、140hp)と250-cid(4.1L、155hp)。V8はまず307-cid(5L、200hp)、そして前述の350-cid(5.7L)が255hpと300hpの2仕様、そして396-cid(6.5L)が325hpと350hpの2仕様用意されていた。トランスミッションは3速MTが標準であったが、4速MTやパワーグライド(2速AT)、ターボハイドラマチック(3速AT)などもオプションとして設定があった。
ソープボックスダービーとのカップリング!
さて、1969年型シボレー・エルカミーノは、SS396が当時のAMTからプラモデル化されていた。2ドアのシェベルより長いボディもしっかりと再現されているが、このキットは長らく再販がなされていない。AMTからは1998年に新金型で1968年型のキットがリリースされており、近年でも色々とバリエーションを展開しているのは、この1968年型の方である。ここでお見せしているのは当時の1969年型キットを制作したものだが、以下、作者・畔蒜氏による解説をお読みいただこう。
「同社からは1969年製の3 in 1キット(Y914)が出ているが、作例は、同じ1969年製のスペシャルパッケージ版(T312)を制作したものだ。これは、ソープボックスダービーと呼ばれる無動力のカート・レースをフィーチャーしたキットで、1/25のカートと縮小版のポスターが付属する。エルカミーノはそのキャリアカーという訳で、なんとも夢のあるキットである。エルカミーノ自体も、STREET、CUSTOM、DRAGの3通りに作れるオプションパーツが付く。プロポーションに特に問題はなく、特徴あるルーフラインや、リアフェンダーの微妙な膨らみがリアルに再現されている。
ボディの組み立てには特に問題はなかった。金型の抜きの都合で荷台の一部が別パーツになっているので、塗装前にあらかじめボディに接着しておく。リアピラーにヒケが見られるので、瞬間接着剤を徐々に盛り上げてから平らに削り出した。エンジンフードはひと回り小さく、ボディとの間に隙間が空きすぎるので、フード側にプラ板を貼って調整した。
リアバンパーはテールランプハウジングと一体で、ボディとのフィッティングがイマイチ。ランプハウジングはバンパーから切り離し、ボディ側に取り付けてフィットさせ、メッキの表現はボディの塗装後にメッキ調の塗料で塗装した。前後バンパーはいつものように、メッキを剥がしてパーティングラインを取り除いた後、再メッキ加工してある。
足周りはキットのままだと全体に車高が低すぎる感がある。特に今回は、タイヤを別のものに変更したせいでハイトが変わってしまい、それが如実に出てしまった。結局、リアを3mmほど上げて、フロントはホイールアーチとのバランスを考慮してシャフトの取り付けから調整し直した。
いわゆるピックアップ・トラックと違い、車高の設定は意外に難しかった。ストックの場合、空荷ではリアが若干あがっているのが自然と思われる。ただし、あまり高すぎるとセダンピックアップらしくない。結果は御覧の通りだが、完全には納得していないのが正直なところである」