『トミカリミテッドヴィンテージ スカイラインのすべて』を編集するにあたって、歴代のスカイラインのミニカーたちを眺めていると、1973年生まれの筆者にとって、「あ~、懐かしい」となるのはやはり1981年に登場した6代目、通称「ニューマンスカイライン」に尽きる。
我が家には物心ついたときからスカイラインがあった。でもウチのクルマはバン/ステーションワゴンで、丸4灯のテールライトなんてついてなくて、それが恨めしかった。今じゃクルマなんて白物家電化していて、自分の家のクルマの車種はもちろん、グレードに興味がある小学生なんてほとんどいないだろう。
でも、あの頃は車種もそうだし、グレードを聞けば、だいたいそのクルマを所有するオーナーの経済レベルやら人となりまでを想像することができた(嫌な子供だった……笑)。バン/ステーションワゴン・ブームが1990年代に到来するまで、それらに乗ってると「お宅、何か御商売でもやってらっしゃるの?」という質問を受けたのが懐かしい。今以上にクルマが饒舌で、憧れの対象だった。
きっとそんな小学生がゴマンといたのだろう。どこにもそんなことは書いていないが、小学生たちも重要なお客様に据えてTVドラマ、『西部警察』は作られたのではないかと思う。『西部警察』はパート3まであって、パートIの途中から5代目スカイラインをベースにした特殊警察車両(とでも書くのが妥当だろう)、マシンXが登場した。
真っ黒な車体にゴールドのホイールとゴールドのライン、車内にはぎっしりとコンピューターが積まれ、チューニングエンジンを搭載して最高速度は200km/hを優に超えた。よく言えば『007シリーズ』のボンドカーみたいなものだが、いくぶんそれには派手過ぎる。だがそれ以降、特殊警察車両は『西部警察』の看板役者のような存在にもなった。
続くパートIIIでは今回の『トミカリミテッドヴィンテージ スカイラインのすべて』の付録ともなった6代目スカイラインRSをベースにしたマシンRSと、2代目フェアレディZを改造したスーパーZが登場。いま思えば、当時の小学生にとっては変身スーパーヒーローものの戦闘メカみたいなもので、とにかくひたすら憧れた。果たして大人たちの目にはどう映っていたのか……。
つい最近、小学生の息子と一緒に『ワイルド・スピード』の最新作を観に行ったが、ロケットランチャー付きの’67年型エルカミーノが出てきた瞬間、「こんな古いクルマに兵器積んで戦う必要あるのか」なんてことが気になってしまい、テンションがやや低下した記憶があるが、映画館からの帰り道に息子に感想を聞いたら、「カッコよかった!」とのことだったので、きっとそんなものなんだろうと思う。
でも当時を振り返ってみれば、マシンXもマシンRSも「そんなのありえへん」なんてコレっぽちも思わなかったし、少なくとも劇中で起きていることはリアリティたっぷりに感じられて、刑事とパトカーじゃなくて、刑事とその「相棒」みたいな存在に擬人化して観ていたことは間違いない。マシンXが最後に爆破されたときには、悲しくて泣いた。
きっといまの時代に『西部警察』の続編が作られて、日産「GT-R」と「フェアレディZ」を改造して、”マシンGT-R”と”2代目スーパーZ”が登場したら、たとえ劇中車であっても、”パトカーにGT-RとかZなんて税金の無駄遣いだ”、”パトカーであっても高速道路を200km/h以上でかっ飛ぶなんてダメだろ”なんてコメントが書き込まれてコンプライアンスうんぬんなところまで行ってしまうのかもしれない。
昔は良かったな、と言ってしまえばそれまでだが、記憶だけでもあの頃のピュアな自分に時々戻してやるのも悪くない。
◆『トミカリミテッドヴィンテージ スカイラインのすべて』書誌情報
定価:5280円(税込)
発売日:2023年7月28日
オールカラー80ページ A5サイズ
トミカリミテッドヴィンテージ スカイラインのすべて 赤 / グレー
(978-4-7770-2618-0)
商品ページ URL: https://www.amazon.co.jp/dp/4777026183
トミカリミテッドヴィンテージ スカイラインのすべて 赤/黒
(978-4-7770-2720-0)
商品ページ URL: https://www.amazon.co.jp/dp/4777027201
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