【新世代コンパクトの実力検証】「デイリーユースで考えるコンパクトハッチ選び」メルセデスベンツAクラス×BMW 1シリーズ×VWゴルフ×プジョー308

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SUV全盛の昨今だが、忘れてはならないのがコンパクトカーの定番ともいえるCセグメントのハッチバックモデルだ。このセグメントのモデルはコンパクトで取り回しも良く、居住スペースや荷室の広さなど、高い実用性は大きな魅力。今回はマイナーチェンジを受けたAクラスとライバルを徹底比較。果たしてベンチマークのゴルフを超えたモデルは?

マイナーチェンジを受けたAクラスをライバルと比較

世界的にSUV人気が高まってから久しいが、クルマというか乗用車といえば、本来はセダンやハッチバックが本流。特に輸入Cセグメントハッチバックは、VWゴルフが長年に渡って実用車のベンチマークとして世界に君臨し、ここ日本でも高い人気を博してきた、輸入車の定番中の定番である。

実際、Cセグメントハッチバックは、ここ日本でも非常に使いやすい。近年は全幅が1,800mmを超えるモデルもあるものの、コンパクトでありながら実用的な後席を備え、取り回しがしやすいにもかかわらず、リアシートを倒せばワゴン的な使い方もできる。「これ以上大きなクルマは要らない」という人がいるのも十分頷ける。そんなこのクラスだが、ここ数年はその勢力図が変化してきた。長らく王者に君臨してきたVWゴルフの牙城を崩そうと、強力なライバルが現れてきているのである。

その筆頭がメルセデス・ベンツAクラスだ。Aクラスは、2012年に登場した3代目で、それまでのトールボディから背の低いハッチバックに方向転換。2018年デビューの現行の4代目は、さらに低く幅広いプロポーションとなり、プレミアムカーのクオリティを持ってゴルフに真っ向勝負を仕掛け、大きな成功を収めている。

BMW1シリーズは、2004年デビューの初代と2011年の2代目がFRのパッケージであったこともあって、Cセグメントハッチバックの中では孤高の存在だったが、2019年に登場した3代目はFFとなり、熾烈な戦いの場に自ら飛び込んだ状況となっている。これらを迎え撃つVWゴルフも、手をこまねいていたわけではない。高い評価を受けた7代目をベースに、さらにスポーティなデザインに進化させ、電動化やハイテク化で武装してきた。

ドイツメーカーがしのぎを削る中で、頭角を現してきたのがプジョー308だ。308は先代も魅力的なモデルだったが、’21年にデビューした3代目は、ドイツのライバルを徹底的に研究し、さらにデザインやパッケージングで独自の魅力を打ち出している。

【写真32枚】4台中ベストの乗り心地で走りも十二分にパワフルな一台とは? 

今回はこれら4車種のディーゼルエンジン搭載モデルを集め、その実力を比較検証し、今選ぶべきはどれなのかを考察してみた。まずはAクラス。2月末に初のフェイスリフトを受けた新型は、エクステリアを中心にアップデートされ、装備内容もさらに充実&進化。パワートレインは従来モデルから不変だが、公式なアナウンスはないものの、乗り心地は明らかに改善している。

今回のA220dは、150psと320Nmを発揮する2L直4ディーゼルターボに、8速ATを組み合わせたパワートレインを搭載したモデル。試乗車はAMGラインパッケージやAMGレザーエクスクルーシブパッケージ、アドバンスドパッケージなどが装着された豪華仕様だったが、18インチタイヤを装着していながらしなやかな乗り心地を実現しているのはさすが。

リアサスはトーションビーム式だが、乗り心地は4台中ベストだ。走りも十二分にパワフル。フロントヘビーなのでハンドリングはダルだが、直進性は抜群。今回の4台で最もロングドライブが楽なのは、確実にA200dだ。

ただし、リアシートはやや窮屈だ。身長175cmの筆者が座るとニースペースは握り拳が横に1個程度の余裕しかない。座面も短くヘッドレストもバックレストと一体で調節が効かず、フロントもヘッドレスト一体型なのはいいが、バックレストが細身で肩周りのサポートがない。また腰のあたりを突き出すような感覚があり、人によっては合わないかもしれない。一方、ゼロレイヤーのコンセプトを採用し、ARナビも備わった最新世代のMBUXの出来は間違いなくクラストップ。これだけでもAクラスを選ぶ価値はある。

【SPECIFICATION】メルセデスベンツA200d
・全長×全幅×全高=4,430×1,800×1,440mm
・ホイールベース=2,730mm
・車両重量=1,490kg
・エンジン種類=直4DOHC16Vディーゼル+ターボ
・排気量=1,949cc
・最高出力=150ps(110kW)/3,400-4,400rpm
・最大トルク=320Nm(32.6kg-m)/1,400-3,200rpm
・トランスミッション=8速AT
・燃費(WLTC)=19.1km/L
・サスペンション形式(F:R)=ストラット:トーションビーム
・ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
・タイヤサイズ(F:R)=205/55R17:205/55R17
・車両本体価格(税込)=5,580,000円
・問い合わせ先=メルセデス・ベンツ日本:0120-190-610

積極的に走りたくなるのはやはり1シリーズ

BMW118dプレイは、150psと350Nmを発揮する2L直4ディーゼルターボに8速ATを組み合わせる。スポーツモードを選べば豪快な加速が楽しめるが、シフトパドルが備わらない点は残念。走りはBMWらしくとてもスポーティで、ノーズの重さは特に気にならない。

ステアリングフィールは剛性感が高く、インフォメーションも豊富なので、積極的に走りたくなる。それだけに、やや鈍いアイドリングストップからの復帰や、やや強めのトルクステア、ホールド感が希薄なシートが気になる。後席は広くはない。フロントシートバックがえぐってあるので、ニースペースは握り拳が縦に1個入るくらい。またリアドアが短く足抜けが悪いので乗降性も良いとは言えない。一方、パワーテールゲートが備わるのは、今回の4台では118dのみだ。

インフォテインメントはとても良く出来ている。先進性ではAクラスのMBUXに引けを取るものの、機能がとても充実していて操作もわかりやすいことに加えて、センターコンソール上に操作パネルがあるのでタッチディスプレイに手を伸ばさずとも操作できる。また、物理スイッチが今どきのクルマとしては多めに備わっている点にも、BMWの良心が伺える。

【SPECIFICATION】BMW 118d Play
・全長×全幅×全高=4335×1800×1465mm
・ホイールベース=2670mm
・車両重量=1,490kg
・エンジン種類=直4DOHC16Vディーゼル+ターボ/
・排気量=1,995cc
・最高出力=150ps(110kW)/4,000rpm
・最大トルク=350Nm(35.7kg-m)/1,750-2,500rpm
・トランスミッション=8速AT
・燃費(WLTC)=16.7km/L
・サスペンション形式(F:R)=ストラット:マルチリンク
・ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
・タイヤサイズ(F:R)=225/45R17:225/45R17
・車両本体価格(税込)=4,960,000円
・問い合わせ先=BMWジャパン:0120-269-437

 

VWゴルフTDIスタイルは、150psと360Nmを発揮する2L直4ディーゼルターボを搭載。トランスミッションは今回唯一の7速DCTが組み合わされる。走り出してしまえば、4台で最もトルクが太いだけに、とてもパワフルな走りが楽しめるが、発進時には7速DCTのクラッチが繋がるまでタイムラグがあるため、少々レスポンスが悪い印象を受ける。

ハンドリングはA200dほどではないが、穏やかな印象。実用上問題が生じるわけではないが、ステアリングセンター付近のレスポンスがややダルで、もう少ししっかり感が欲しいと感じる。インフォテインメントも要改善だ。乗り心地は比較的ソフトで悪くない。走行中は静粛性もまずまずで、ロードノイズは118dより小さいかもしれない。

特筆すべきは後席の広さだ。ニースペースは拳が縦に1個半ほど余裕がある。座面の長さも十分にあり、大柄な大人でも快適に着座できる広さを備えている。またUSBタイプCが2個と、フロントシートバックにスマホなどを入れられるポケットがある点も嬉しい。

【SPECIFICATION】フォルクスワーゲン・ゴルフ TDI Style
・全長×全幅×全高=4,295×1,790×1,475mm
・ホイールベース=2,620mm
・車両重量=1,460kg
・エンジン種類=直4DOHC16Vディーゼル+ターボ
・排気量=1,968cc
・最高出力=150ps(110kW)/3,000-4,200rpm
・最大トルク=360Nm(36.7kg-m)/1,600-2,750rpm
・トランスミッション=8速DCT
・燃費(WLTC)=20.1km/L
・サスペンション形式(F:R)=ストラット:4リンク
・ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
・タイヤサイズ(F:R)=225/45R17:225/45R17
・車両本体価格(税込)=4,218,000円
・問い合わせ先=フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン:0120-993-199

308の最大の魅力は個性的な外観デザイン

最後はプジョー308GTブルーHDi。このモデルは、今回唯一1.5L直4ディーゼルターボを搭載したモデルで、130psと300Nmとスペック的にも他の3台に及ばないが、8速ATが上手くパワーを引き出してくれるおかげで、実用上はまったく問題なく走る。WLTCモードで21.6km/Lの燃費は、4台中トップだ。

しかしこのクルマの最大の魅力は、なんと言ってもそのデザインだろう。全幅が1,850mmと幅広なこともあって、ライオンの牙をモチーフにした個性的なデザインがとても際立っている。3本の爪を想起させるラインは、リアコンビランプにも反復されていて、リアビューもカッコいい。

プジョー独自の「iコクピット」を採用した運転席は、小径ステアリングホイールや高い位置にレイアウトされたメーターディスプレイなどが個性的で、ドライビングポジションも独特だが、先代ほどの違和感はなく、すぐに慣れてしまうレベル。またGTに標準のスポーツシートの出来は抜群だ。

ハンドリングは見た目ほどスポーティではないが、ステアリングギア比がクイックなので街乗りでも楽しさを感じられる。後席の広さもゴルフに迫る。ニースペースの余裕は拳が縦に1個半で、座面はゴルフほどではないものの長め。着座姿勢は立ち気味だが悪くなく、ヘッドルームも十分に余裕がある。

10インチのタッチディスプレイの下に、ショートカット機能を自由にアサインできるiトグルを備えたインフォテインメントは、ナビの文字入力にクセはあるが、とても先進的でデザインも斬新だ。ウィークポイントは、アイドリンストップからの復帰でギクシャクする点。ここは今後の改良に期待したいところである。

【SPECIFICATION】プジョー308GT BlueHDi」
・全長×全幅×全高=4,420×1,850×1,475mm
・ホイールベース=2,680mm
・車両重量=1,420kg
・エンジン種類=直4DOHC16Vディーゼル+ターボ
・排気量=1968cc
・最高出力=130ps(96kW)/3,750rpm
・最大トルク=300Nm(30.6kg-m)/1,750rpm
・トランスミッション=8速AT
・燃費(WLTC)=21.6km/L
・サスペンション形式(F:R)=ストラット:トーションビーム
・ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
・タイヤサイズ(F:R)=225/40R18:225/40R18
・車両本体価格(税込)=4,271,000円
・問い合わせ先=ステランティスジャパン:0120-840-240

走りでは1シリーズだが、実用性はゴルフと308も◎

重箱の角をつつくように4台を乗り比べた結果、最終的にベストと感じたのはA200dだ。走りの楽しさでは118d、実用性や経済性を重視すればゴルフTDIや308GTブルーHDiになるのだが、A200dは走りや快適性、先進装備など、全方位的にスキがなく、クルマとしての出来栄えが頭ひとつ抜けていると感じたのである。確かにA200dは、車両価格が558万円で、今回の試乗車はオプション込みで675万3,000円と価格も頭ひとつ抜けているが、ほかの3台では味わえないワンランク上の上質感がある。メルセデスはコンパクトクラスでもメルセデスであると、改めて唸らされた。

◆PERSONAL CHOICE
今回の4台から個人的な好みで選ぶなら「308GTブルーHDi」だ。なによりデザインが最高にカッコいいし、メーターやインフォテイメントの表示デザインやアニメーションが未来的でグッと来る。でも走りの点ではディーゼルではなく、PHEVのほうがさらに魅力的か。

フォト=篠原晃一 K.Shinohara ル・ボラン2023年6月号より転載

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