ここでは、新型X1のガソリンモデルを筆頭に、プレミアムコンパクトSUVと呼ばれる今旬のライバルモデルが集結。一口に「コンパクト」と言っても各ブランドのお家事情で、その成り立ちは多種多様。各モデルの個性的なキャラクターを検証してみた!
作りの良さが伺えるX1、スポーティなトナーレ
BMWのX1は俗に言うCセグメントに属している。Cセグメントとは、法律や規則みたいに正確な定義がされているわけではないけれど、全長が4,200-4,500mmくらいのボディを持つクルマとされている。それに該当するモデルとして編集部が集めたのがアルファ・ロメオ・トナーレでありランドローバー・レンジローバー・イヴォークでありフォルクスワーゲンTロックである。
ただし、セグメントとはあくまでもボディサイズでの区切りであり、ユーザーが必ず同セグメント内のモデルを比較するとは限らない。今回も、イヴォークの車両本体価格は他の3台よりもひとつ上のセグメントにいる。ガソリンの廉価版は518万円、ディーゼルは600万円であるものの、主力となるグレードは600万円台で、内装の質感や装備などはその価格に準じたものとなっている。おそらくTロックとイヴォークの新車を比べて悩む人はいないわけで、厳密な比較はできないことを何卒ご容赦ください。
【写真25枚】ひと口にCセグメントと括っても厳密な比較はできない!
ご存知のように、X1はフルモデルチェンジして3代目となった。初代は3シリーズとプラットフォームを共有したエンジン縦置きのレイアウトだったが、2代目からエンジン横置きとなった。日本仕様のパワートレインは2Lの直列4気筒ガソリンエンジンと7速DCTを組み合わせたX1 xDrive20iのみで、ディーゼルや前輪駆動は用意されていない。
仕様はxラインなので車高は標準だしアダプティブサスペンションも付いていないのだけれど、おろしたてのスニーカーを履くような乗り心地の硬さがあり、メーターを見たら300数キロのまさしくおろしたてであった。今後、ブッシュなどのゴム類や各種稼働部分が馴染んでくると、本来の乗り心地が出てくるだろう。
2Lの直4ターボは1,450rpmから最大トルク300Nmを発生する。数値的にはきわめて平凡だが、7速DCTのギア比とマッチングがいいので数値以上に活発によく走る。操縦性はiX1と大きく変わらず、ドライバーの入力に対して遅れなく直ちに反応するタイプ。
ノーマルのサスペンションだからといって、ロール量が極端に増えることもなく、ターンインから旋回姿勢が整うまでの過渡領域におけるばね上の動きもスムーズだった。何よりステアリング周りやボディやシャシーの剛性感が高く、しっかりちゃんと設計され作られているという印象がとても強かった。
◆「BMW X1 xDrive20i xライン」SPECIFICATION
全長×全幅×全高=4,500×1,835×1,645mm/ホイールベース=2,690mm/車両重量=1,640kg/エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1,998cc/最高出力=204ps(150kw)/5,000rpm/最大トルク=300Nm(30.6kg-m)/1,450-4,500rpm/トランスミッション=7速DCT/サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク/ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク/タイヤサイズ(F:R)=225/55R18:225/55R18/車両本体価格(税込)=5,560,000円/問い合わせ先=BMWジャパン 0120-269-437
アルファ・ロメオ・トナーレの日本仕様は”Ti”と”ヴェローチェ”の2種類で、価格は524万円と589万円。両モデルはパワートレインがまったく一緒で装備だけが異なっている。試乗車は特別装備の導入記念モデルだった。そのパワートレインは1.5Lの直列4気筒ターボで、BSG仕様でありマイルドハイブリッドでもある。
ただし、エンジンとトランミッションの間にクラッチを設けているので、マイルドハイブリッドなのにEV走行が可能という珍しい機構を持つ。駆動用のリチウムイオンバッテリーは前席の間のフロア下に置かれ、主に20km/h以下の低速時にモーター駆動となる。ステランティスグループの「スモール・ワイド・プラットフォーム」を共有するものの、ジープ・コンパスやフィアット500xには4WDがあるのに、トナーレは前輪駆動しかない。
トナーレは4台の中でもっともよく曲がりたがるクルマである。ステアリングの操舵力は軽めなので、スッと回せてしまうのだけれど、その動きを逃さず捉えてただちにノーズが反応して向きを変え始める。もちろんスポーツカー並みとまでは言えないけれど、あくまでもSUVとしてはかなりスポーティなセッティングである。
マイルドハイブリッドだからなのかはよくわからないけれど、エンジンからアルファらしさはあまり感じられないので、むしろその分ハンドリングでアルファらしさを出したいと思ったのであれば狙い通りである。
◆「アルファロメオ トナーレ エディツィオーネ・スペチアーレ」SPECIFICATION
全長×全幅×全高=4,530×1,835×1,600mm/ホイールベース=2,635mm/車両重量=1,630kg/エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1,468cc/最高出力=160ps(117kw)/5,750rpm/最大トルク=240Nm(24.5kg-m)/1,700rpm/トランスミッション=7速DCT/サスペンション(F:R)=ストラット:ストラット/ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク/タイヤサイズ(F:R)=235/40R20:235/40R20/車両本体価格(税込)=5,780,000円/問い合わせ先=ステランティスジャパン 0120-779-159
上質感が魅力のイヴォーク、万人に指示されるTロック
レンジローバー・イヴォークは2Lの直列4気筒ディーゼルターボ、2L直列4気筒ガソリンターボ(200psと249psの2種類)、そして1.5Lの直列3気筒ガソリンとモーターを組み合わせたPHEVの計4種類のパワートレインがあって全15グレードを有し、価格は518万円から939万円と幅広い。試乗車はよりによってもっとも高額なオートバイオグラフィP300eだった。
だからということもあるけれど、運転席に収まった瞬間に室内の雰囲気は他の3台と明らかに違うことが分かる。とても同じセグメントとは思えないほど上質感たっぷりで、”レンジローバー”を名乗るにふさわしいしつらえである。
駆動用バッテリーを積んでいるのでそれなりに重く重心も低い。だから乗り心地はいいしちょっとした重厚感さえ感じられる。これをもってイヴォークの乗り味だと断定するわけにはいかない。なぜならガソリンやディーゼル仕様はむしろ軽快感があって小気味よい操縦性が印象的だからだ。参考までにPHEVのEV航続距離は最大で65.1km。モーターはリアに搭載されているので、EVモードでは後輪駆動となる。
当たり前だけれど、パワートレインがどれであろうと、室内の雰囲気は基本的に同じである。もし試乗車が518万円のガソリンのP200や600万円のディーゼルのD200だとしたら、室内の質感は同じ価格帯のほかの3台よりも群を抜いていることだけは確かである。
◆「ランドローバー レンジローバー イヴォーク オートバイオグラフィーPHEV P300e スペシフィケーション」SPECIFICATION
全長×全幅×全高=4,380×1,905×1,650mm/ホイールベース=2,680mm/車両重量=2,150kg/エンジン種類/排気量=直3DOHC12V+ターボ/1,498cc/最高出力=200ps(147kw)/5,500-6,000rpm/最大トルク=280Nm(28.5kg-m)/2,000-4,500rpm/トランスミッション=8速AT/モーター最高出力=F:54ps(40kw) /7,000-8,500rpm/ R:108ps(80kw)/10,000rpm/モーター最大トルク=F:63Nm(6.4kg-m)/5,800rpm/R:260Nm(26.5kg-m)2,500rpm/サスペンション(F:R)=ストラット:インテグラルリンク/ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク/タイヤサイズ(F:R)=235/60R18:235/60R18/車両本体価格(税込)=9,390,000円/問い合わせ先=ジャガーランドローバージャパン 0120-18-5568
フォルクスワーゲンTロックのエンジンは1・5Lの直列4気筒ガソリンターボ、2Lの直列4気筒ディーゼルターボ、そして2L直列4気筒ガソリンターボの3種類があって、価格は394万6,000円から626万6,000円。駆動形式は前輪駆動で、最上位モデルの”R”のみ4WDとなる。今回の試乗車はRの次に高額なTDI Rライン(460万9,000円)だった。
このクルマ、室内の質感や動力性能や操縦性や乗り心地や機能性などありとあらゆる性能がいい意味で”無難”に仕上げられている。Tロックは欧州での発売からわずか4年で累計販売台数が100万台を超えるベストセラーモデルだというのもうなずける。誰が乗っても大きな不満はなく、イヤな思いもしない。よく走るし正確に曲がるししっかり止まる。室内のスイッチ類や計器類は機能的で、詳しい説明を受けなくてもすぐに普通に運転できる。こういうクルマこそ実は作るのがとても難しく、お目にかかることも決して多くないのである。
また、最近のクルマにはどれも重く(大きく)なる傾向が見られるが、今回の4台の中ではTロックだけが唯一1.5トンを切っている。1.5トンを切ると、クルマは途端に重たいコートを脱いだ時のような軽やかさが乗り味に加わる。これもまた、このクルマの魅力として多くの人から支持される理由のひとつなのだろう。
同セグメントといっても、価格やパワートレインや操縦性や動力性能や商品性はかくも大きく異なる。何かと整っているX1、よく曲がるトレナーレ、高級感漂うイヴォーク、そして乗り手を選ばないTロックというように、たった4台でもこれほどまでに個性豊かな面々となる。本来ならここにメルセデス・ベンツGLAやアウディQ3あたりも入ってくるわけで、まさに”多様化の時代”を象徴しているセグメントである。
◆「フォルクスワーゲン Tロック TDI Rライン」SPECIFICATION
全長×全幅×全高=4,245×1,825×1,590mm/ホイールベース=2,590mm/車両重量=1,430kg/エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1968cc/最高出力=150ps(110kw)/3,500-4,000rpm/最大トルク=340Nm(34.7kg-m)/3,500-4,000rpm/トランスミッション=7速DCT/サスペンション(F:R)=ストラット:トレーリングアーム/ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク/タイヤサイズ(F:R) =215/50R 18:215/50R18/車両本体価格(税込)=4,609,000円/問い合わせ先=フォルクスワーゲングループジャパン0120-993-199
◆PERSONAL CHOICE「ランドローバー レンジローバー イヴォーク」
今回あらためてイヴォークの価格を見直したら、一番安いモデルは2L直列4気筒ガソリンエンジンのP200が518万円。トナーレよりもX1よりも安い価格である。この値段でレンジローバーが手に入るお買い得感がたまらない。