EV専用プラットフォーム第4弾!
メルセデスのEV専用プラットフォームを採用したプロダクトはEQS、EQEとリポートしてきたが、EQS SUVに遅れること数か月。EQEのSUVバージョンがリリースされ、試乗する機会を得た。初採用となる技術も搭載したというその走りはいかに!?
“省エネ”を視野に入れたDCT機構を採用
メルセデス・ベンツEQE SUVは、メルセデスがBEV専用として開発したEVA2プラットフォームを共有する第4弾となるモデルである。EQSがデビューをした際に「EVA2を使って計4モデルを発表する予定」と明言していたのでこれで打ち止めとなるが、上海モーターショーで「メルセデス・マイバッハEQS SUV」が登場したので、実質的には5モデルとなった。
EQSに「EQS SUV」があるように、「EQE SUV」はその名の通りEQEのSUV版である。しかし、SUVに仕立てるにあたりわざわざホイールベースを90mm縮めている点がEQS兄弟とは異なる。ショーファードリブンカーとしての用途も想定されるEQS兄弟はホイールベースを同一(=長いまま)とし、でもEQE SUVはパーソナルカーなのでスポーティさを加味したかった、というのがホイールベース短縮の主な理由とのこと。
ここで気になるのが、ショートホイールベース化によるバッテリー容量の削減である。EQシリーズに限らず、たいていのBEVはホイールベース内のフロア下にバッテリーを搭載していて、ホイールベース=バッテリー容量だからだ。ところがEQE SUVはEQEのセダンと同じ容量のバッテリーを積んでいる。
そのからくりはこうだ。そもそもEQEセダンはホイールベースぎりぎりまでバッテリーを積んでおらず、「90mmの短縮」はこの余裕分を使ったとのこと。手品のように、種明しは極めて単純なものだった。
【写真8枚】EQEのSUV版! パーソナルカーなのでスポーティさを加味した一台
4つの仕様のうち、日本へは年内にEQE SUV350 4マチックが導入予定で、その試乗車にはオプションのエアサスと後輪操舵が装着されていた。メルセデスが言うように「ショートホイールベースが飛躍的にアジリティを高めている」とはあまり感じられなかったけれど、塊感みたいなものはEQEよりもあって、ドライバーの入力に対して駆動力も操舵もレスポンスよく動くから、ボディがひと回り小さくなったような感触は確かにあった。
EVA2を使う最後のモデルにして初めて採用された技術もある。DCTと呼ばれる機構は、フロントにいわゆるドグクラッチを配した仕組みで、状況によってクラッチを切ることにより前輪をフリーにする。つまり、事実上フルタイムではなくパートタイム4WDの後輪駆動となるわけだ。その目的はもちろん”省エネ”である。
電力消費をなるべく減らす努力は空力面にも見られる。そもそもボディのCd値0.25はクラストップレベルだし、フェンダーに装着されるスポイラーは、これだけで航続距離が8kmも上乗せできたという。350 4マチックの航続距離はWLTPモードで最大551kmと公表されている。292㎰/765Nmを発生する前後のモーターにより、おそらく2.5トンは超えると思われる(車重は現時点で未公表)車体を軽々と運び、モッサリとした印象は皆無である。
前述のDCTによる2駆と4駆の切り替えは運転していても正直さっぱりわからなかったが、作動状況を示すグラフィックではかなり細かい頻度で制御しているようだった。DCTは今後、随時他のEQモデルにも採用されるそうである。
いろんなBEVに乗る機会が増えたが、メルセデスのBEVはやっぱりどれもちゃんとしている。ちゃんと走って曲がって止まるなんて当たり前のことだけれど、これをBEVで実現するのはなかなか難しいのである。