ニヤリと笑みを浮かべた顔つきが不穏な高級車!日産グロリア(230G型系)【魅惑の自動車カタログ・レミニセンス】第4回

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セドリックと完全な兄弟車となった四代目

日産グロリアは今はもう存在しない高級車だが、日本の自動車史を振り返るときには非常に重要な車種である。国産車初の3ナンバー車こそ初代グロリアであったし、スカイライン2000GTの誕生の契機となったのは二代目グロリア用の直6 2Lエンジンであった。こうした車名が消滅してしまったのはまことに残念なことであるが、ここでは四代目・230G型系グロリアについて述べていこう。

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後に日産に吸収されるプリンスが、初代グロリアをデビューさせたのは1959年のこと。既存車種スカイラインのボディに1.9Lエンジンを載せた、派生車種としての誕生だった。1962年に二代目を登場させた後、1966年にプリンスは日産に吸収合併され、翌1967年にグロリアは三代目へ移行。そして1971年2月、日産グロリアはフルモデルチェンジを行い、四代目・230G型系となったのである。

すでに三代目の時点でセドリックと一部設計の共用化を行い、以後のマイナーチェンジでも共通部分を増やしてはいたが、この230型から、グロリアは根本的にセドリックと設計を共通化させ、完全な兄弟車となっている(グロリアは型式にGを付けて区別される)。ボディ形式はセドリックと同じく、4ドア・セダンと2ドア・ハードトップ、そしてバンの3タイプ(ワゴンの設定はセドリックのみ)。

そのボディラインは、控えめながらもコークボトルラインを取り入れつつ、過度な自己主張のないオーソドックスなものだが、グロリアはボンネットを独自の形状とすることで差別化。中央を盛り上げたこの形は”コンチネンタル・フード”と称された。初期モデルではフードマスコットが装着されていたのも特徴である。それ以外は、フロントグリルやリアガーニッシュおよびテールランプのデザインに違いが見られる。

サスペンションは前ダブルウィッシュボーン/後ろリーフリジッド。搭載エンジンはほぼ全モデルが2L直6 OHCのL20で、最廉価モデルのスタンダードのみは2L直4 OHVのH20。トップモデルのGXのみツインキャブ仕様のL20を搭載しており、最高出力はシングルキャブの115psに対して125psであった。発売8ヶ月後には2.6Lモデルを追加。これはL20の排気量を拡大したL26(シングルキャブ、140ps)を搭載したもので、セダンとハードトップのGXのみであったが、追って1972年6月には、2.6のカスタムデラックスおよびデラックスを加えている。

5年の間、2.6Lや4ドアHTの追加はあれど、前後デザインの変更は1回のみ
翌7月にはマイナーチェンジを行い前後デザインなどを変更。5年に及んだモデルライフ中、前後グリルの変更はこの1回のみだ。同年8月にはさらに、新たなボディ形式4ドア・ハードトップを追加。これは国産車初となるもので、Bピラーを廃した解放感が売りであった。ボディの輪郭は2ドアと共通だが、テールランプとフィニッシャーは専用のものとなり、さらに華やかさを増している。

1973年4月には再びマイナーチェンジを行うが、前後グリルのデザインに変更はなく、テールのウィンカーがオレンジとなり、2.6Lモデルにオーバーライダーが装着されるなど、細かなアップデートであった。このときバンにも2.6Lモデルが追加されている。230型系グロリア/セドリックは、オーソドックスなスタイリングなどを強みにクラウンより優位に立ち、このまま1975年6月のフルモデルチェンジまでを駆け抜けたのであった。

「あの優雅さ」と言われても、どの優雅さのことかはよくわからないが、グロリア伝統の、という意味であろうか。230型のスタイリングは上半分が日産(鶴見)系で、プリンス(荻窪)系の下半分を合体させてまとめたものとのことだが、Cピラー周りの流れるエッジなどにも先代の縦目グロリアやスカイライン(2ドア)との類似が見られる。

さて、ここでお見せしているのは1973年4月以降のグロリア(バンを除く)のカタログである。発行は1974年11月で、末期のものと言ってよいだろう。フロントバンパーのウィンカーがオレンジとなっているのがその証である。ただしこれは表紙のみで、中の写真は白レンズのウィンカーとなっているが、これは以前の写真をそのまま流用しているためと思われる。このレンズ色の変更は1973年のマイチェンよりも後のことだが、それがいつ行われたのかは明確ではない。サイズは295×252mm(縦×横)、表紙を入れて全40ページだ。

カタログとしては特に変わった部分はないが、日産プリンス系ディーラーでの販売車種らしく、黒一色の背景で撮影された写真によるページ構成は、同時期のスカイラインのカタログとも通じる印象だ。ただ、ページの上や下に、オレンジやグリーンなどの妙に派手な色の帯が入って、高級車らしい風格には少々欠けるように思われる。そんなところも含めてお楽しみいただきたい。

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