5マイルバンパー装着、パワー低下著しい初代最終型
コンパクトカーであるフォード・ファルコンのシャシーに、スタイリッシュな2ドアのボディを載せ、オプションパーツの豊富さを売りにヒットした元祖スペシャリティカー、フォード・マスタング。1964年のシーズン途中にデビューしたマスタングだが、そのボディは年々大きくなっていった。
【画像40枚】マスタング・パトカーの制作工程をつぶさに見る!
デビュー以来108インチ(2743mm)で不変だったホイールベースは1971年型で109インチ(2769mm)まで拡大され、さらに1973年型では、前後の衝撃吸収バンパー装着により全長も拡大(194インチ=4928mm)。この1971-1973年型が初代マスタングとしては最後のモデルとなるが、そのボディバリエーションはノッチバックのハードトップ、ファストバックのスポーツルーフ、そしてコンバーチブルの3種類があり、グレードはベーシックモデルの他、ハードトップには豪華なグランデが、スポーツルーフにはイメージリーダー的スポーツモデルのマッハ1(Mach1)が用意された。
前年型との違いで最も目につくのは、やはりフロントバンパーの変更とそれに伴うデザイン改修である。1971-1972年型のフロントは、マッハ1のみボディ同色のウレタンバンパーを装着、その他のモデルではクロームのバンパーであったが、1973年型では全モデルがカラード・ウレタンバンパーに変更。これに伴い、バンパー下に位置していたターンシグナルはグリル内に移動、縦長に配置されている。なお、リアバンパーのオーバーライダーとラバーモールはオプション設定で、モールなし・オーバーライダーのみ追加という仕様も選択可能だった。
搭載エンジンは、1971年型では370hpの429コブラジェットなどを含め7種類が設定されていたが、そうしたハイパワーエンジンは淘汰されていき、1973年型では4種類のみとなっていた。すなわち、95hpの250-cid(4.1L)直6、135hpの302-cid(5L)V8、それに351-cid(5.8L)V8が164hp(2バレル・キャブ)と266hp(4バレル・キャブ)の2仕様である。いずれの出力もかなり弱まって見える数値だが、これは1972年からエンジンの出力がNET表示となっているせいでもある。それまでのGROSS表示より20~30%下回った数字となるので注意。
複雑な変遷を辿ったMPC/AMTの両社製マスタング
さて、マスタングの歴代モデル中、1971-1973年型(所謂ビッグマスタング)の1/25プラモデルは現在、AMTから1971年型が販売されている。また、近年までは1973年型のキットもあったので、こちらも店頭在庫などで入手は比較的容易と思われるが、このふたつのキットは、実は全く別物である。1971年型はかつてのMPCによる金型、1973年型はAMTの金型によるもので、もともと両者は異なるメーカーの製品であったと理解してよい。
AMT金型である1973年型キットはかなり前に金型の一部が改修されていて、前後のサイドマーカーがなかったり、インテリアのモールドが不足していたりと、ノーマルには程遠い。最後に再販されたときには、中身に相応しくロードレース仕様としてパッケージングされているので、誤解は少ないだろう。
一方の、MPC金型による1971年型のキットは、数年前に『007』仕様をリリースの際、作り直されたフロントエンドや、トリムリング+ハブキャップのホイールなどが新規パーツとして追加された。現行の、イエローの車両が描かれたパッケージのキットにも、これらのパーツは引き継がれている。前編の記事で述べた通り、ここでご覧いただいている栃木県警仕様の作例は、MPCによる1973年当時のオリジナル品を使用して制作したものだ。
MPCの当時ものキット(所謂アニュアルキット)は1971年型としてリリースされ、1972年、1973年と金型を改修して各年式を再現していたのだが、その後の再販で1971年型に戻された際に、1973年型としては必要なモールド(車名ロゴのバッジ)が省略されてしまっていた。作例がオリジナルの1973年型のキットを使用したのは、こうした点への対処としてはそれが近道だったためである。なお、ドイツレベルからは1971年型の新規金型キットの発売がアナウンスされており、これも楽しみであることを付記しておこう。