モデルサイクル半ばで、新デザインのエクステリアを纏い、新型セレクターやドライバー志向の最新コクピットにアップデートした3シリーズ。すべては運転に集中するための、そして最良の駆けぬける歓びを味わうためのLCIだ。
さらに成熟度を増した新型3シリーズ
世界的なコロナ禍にも関わらず、歴代最高のセールスをマークしているというG20系3シリーズ。ここ日本でも2021年度の販売台数はミニシリーズ、ゴルフに次ぐ3位となっている。そんなモデルのビッグマイナーチェンジゆえ、注目度はもちろん高いはずだ。
BMWのライフサイクルインパルス=LCIとなる後期型3シリーズの特徴は、内外装の仔細に及んでいる。まず外回りに目をやると、ヘッドライト形状が細身に、併せてキドニーグリル形状がライトレンズと一体的に繋がる形状へと変更されていることがわかる。
バンパー形状も変わっており、特にMスポーツ系はロアグリルをヘキサゴン形状とした今日的なBMWのテイストに整えられた。リアもバンパーが変更されているが、こちらもMスポーツの側が変わりしろがより顕著で、ディフューザーが強調されたデザインはどことなくM3を彷彿とさせるものだ。ちなみに寸法的には、前期型と比べると全長が5mm程度伸びているだけでほとんど変わっていない。
内装はiXから続くBMW最新の意匠と装備にバージョンアップされている。このうち最も目につくのは、12.3インチと14.9インチの高解像液晶パネルを湾曲面に一体化したカーブドディスプレイの採用だろう。加えて、シフトレバーもトグルスイッチ形状に変更されたほか、空調コントロールも中央のタッチパネル側に移設されたことで、センターコンソール周りがすっきりした印象となった。
【写真11枚】新デザインのエクステリア、最新コクピットにアップデートした3シリーズ。
BMW OSもiXより搭載が始まった最新の8世代目に更新され、各機能はアプリのアイコンで表示されるほか、よく使う機能を常時表示するウィジェット機能なども備わっており、スマホライクにカスタマイズして使いやすい配列にすることが可能だ。スマホといえば、AppleCarPlayとAndroidAutoとの連携ももちろんワイヤレスで対応している。日本でのグレード展開は318i、320i、320d 330e、M340iの5つとなり、320dとM340iはxdriveすなわち四駆となる。この辺りは前期型と同様だ。試乗したのは320iエクスクルーシブ。このグレードのみに設定される豪華なトリムラインとなる。
走行距離は3桁台とまだ馴染みが進んでいない状態だったが、走り始めから印象的なのは路面アタリの穏やかさだ。装着タイヤが50偏平の17インチということもあるが、タウンスピードでの凹凸のいなしや段差の乗り越えなどは、ひとつ上の5シリーズのようにまろやかさが感じられる。ロードノイズも適切に抑えられるなど、日常域での快適性に不満を抱くことはないだろう。
この足元の軽やかさが高速域でも活きていて、よくできた四駆も乗れば感心させられるものの、やはり1.5トン超の車重を感じさせないFRの軽快感こそが3シリーズの真骨頂かと思わせる。B48型2L4気筒は184psのアウトプットをもつ一方、1,350rpmで300Nmの最大トルクを立ち上げ、8速ATとの相性もまったく隙がない。日本の交通環境でもその真価をきっちり発揮する。装備も動的質感も等しく成熟の跡が窺える新しい3シリーズは、再びセグメントをリードする存在に立ったといえるだろう。
リポート=渡辺敏史 フォト=柏田芳敬 report : T.Watanabe photo : Y.Kashiwada ル・ボラン2023年2月号より転載