季節外れの暑いその日、木陰に佇むフィアット500ジャルディニエラはその道中で熱くなった体を冷やすかのよう。オートモビルアシスト・ブレスがフルレストアを施したジャルディニエラで知る、イタリア車の原点。
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ツインビートの波に乗れ!
フィアット・ヌォーバ500を知らずしてイタリア車を語るなかれ。以前イタリア車乗りの先輩からそういう話をされたことがある。少ないパワーを正確なギアチェンジで最大限に引き出して走る。これさえスムーズに動かせればヒストリック・フェラーリであろうが、どんなイタリア車でもうまく操れるというのがこの話の趣旨だ。それ以来、一度は所有してみたいとずっと気になっていて、最近は本誌の誌面やSNSなどに度々登場するオートモビルアシスト・ブレスが在庫する500ジャルディニエラがずっと気になっていた。もちろんベルリーナもいいが、ちょっとした”外し”としてこのワゴンボディも素敵だなと。
ご存知のようにジャルディニエラは、ベルリーナからホイールベースを100mm、全長を210mm延長、さらにエンジンを横倒ししてリアにカーゴルームを生み出して作ったステーションワゴンだ。途中から生産がアウトビアンキへ移管されており、取材車も書類上はアウトビアンキになっていた。ベルリーナの生産が終了後も2年間生産が継続された長寿モデルでもある。ブレスの加藤さんによれば、元々エンジンの調子がいい個体で、他は多くを新品のパーツへと交換するなどフルレストアを実施したそう。中途半端に仕上げるくらいなら全部ちゃんとやりたいということで、結果として得たいかにも”シャン”とした雰囲気は、クルマの状態のよさを物語る。
乗り始めはペダルの角度に苦戦するも、丁寧に操作し動かせば、充分タウンスピードにのって走れることがわかってからは緊張も解れてきて、いろいろ楽しむ余裕ができた。背後からは独特のサウンドと振動が伝わってきて、ジドウシャを動かしている実感というか、クルマの生命感みたいなものを覚える。ブーーーーーン!という音はまるでビートを刻むようで、2気筒だから例えるならばそれは”ツインビート”。それが引き起こす”波”に上手に乗るには、イタリア車乗りの先輩が言ったようにスムーズに動かす必要があり、ギアチェンジひとつとってみても、そういったクルマとの対話が楽しくて仕方がない。そして加速が自分の中の何かとシンクロする瞬間こそが、イタリア車の醍醐味、その原点な気がした。たまに振動でミラーが揺れたり、インパネ越しに見える景色がいつもと違って見えたり、開け放ったキャンバストップから暑い日差しが降り注いだり……。
イマ、オレ、イキテルジャン!
恐らく外から見たら、ドライバーは笑って見えたに違いない。自分でも口元が緩んでいるのがわかるくらいだ。蛇足ながら、現代のフィアット500やパンダに搭載されている2気筒のツインエアが、これと似たサウンドや振動を持つことに気がついてさらに笑った。そういった意味でもヌォーバ500はイタリア車の原点であり、素晴らしい状態だったこのジャルディニエラを手に入れた後が待つ世界は、楽しいイメージしかないのである。
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