Urban Outlowの想い入れ最も厚き911
「世界一のポルシェ・コレクター」として知られるマグナス・ウォーカー氏。そのコレクションの中から、”911STR”と呼ばれる車両を1/24スケール・プラモデルで再現した作品について、以前にこのページでご紹介した(下の「関連記事」参照のこと)。今回は、その作者である松原氏が、やはりウォーカー氏所有の1台”277”を再現した作品をご覧いただこう。以下、自動車模型専門誌「モデルカーズ」の271号(2019年)にて、この作品と共に掲載された松原氏による文章もお読みいただきたい。
【画像36枚】みごとに再現されたポルシェ911T”277”とその制作工程を見る!
「今年も911の季節がやってきた。昨年(2018年)の911特集(260号)にてマグナス・ウォーカー氏の911STRを作らせて頂いたが、本誌掲載後にSNSへアップしたところ、ウォーカー氏本人からコメントを頂くことができ、大変嬉しい思い出となった。そんなこんなに思いを巡らせつつ、今年もウォーカー氏の911に挑んでみたいと思う」
ウォーカー氏の思い入れを1/24スケールに凝縮!
「さて、“277”はマグナス氏初期の作品であり、最も想い入れのある911だと語られている。彼の911の中でもメディア露出の最も多い個体だけに、ご存じの方も多いだろう。1971年型911Tをベースに、ホワイトのボディにレッドの前後フード、ライトブルーのバンパーというカラースキームを纏い、内・外装ともに氏独自のセンスでまとめられている。ドアミラーは964後期用、ホイールは以前はFUCHSアロイを装着していたが、現在はFifreen52と共同開発し氏のブランドを冠した、“Outlaw”となっている。近年では、ホットウィールにラインナップされたことも記憶に新しい。
“277”の模型での再現にあたり、ベースキットには、2018年にリアルスポーツカー・シリーズより再販された、73カレラRSを用意。シリーズ名こそ変われど中身は旧エンスージャスト・シリーズのカレラRSそのもの。精密に再現されたエンジンや足周りを愉しむことができる、唯一無二の傑作キットだ。しかし、逆にビギナーにはとても敷居の高いキットであり、『73カレラが好きだから』と買って泣きを見てしまった、という方も少なくないのではなかろうか。
そこで今回は少し発想を変え、旧エンスー・シリーズの見せ場でもある精密なエンジン・足周りを廃し、旧リアルスポーツカー・シリーズの簡易シャシーにスワップしてみた。多少の加工作業は必要だが、旧エンスー・シリーズの『苦痛』を軽減し、できる限りお手軽にフジミのナロー・ポルシェを愉しむ方法を、今回はご紹介したいと思う。
なお、今回制作した”277”は、2018年8月の『MOMO A ROAD RALLY TO RENNSPORT REUNION Ⅵ』というイベントに参加した際の写真を参考に、その再現を試みた。ワイパーレス状態、ステッカーの貼られ方などは、それに準じた仕様として極力再現しているが、実車は細部が随時仕様変更されているらしく正しい状態を把握するのが難しかったため、部分的に推測や想像となっている点、お許し頂きたい。
911はまだまだ模型業界に影響を与え続けるコンテンツである。まだまだフジミさんには、再販されていないタルガやコンバーチブルなどの再販を期待したい。それにしても、そろそろ気軽に楽しめるナロー・ポルシェのキットが欲しいところだ。決定版的キットをどこかのメーカーさんから出してもらえないものだろうか。メーカーさん、チャンスですよ!」
フル再現キットしかないフジミの73カレラにおける簡易版シャシーへの入れ替えは、カーモデラ―全般にとっては制作のハードルを下げる意味で非常に参考になるが、それだけでなくこの作例においては、手間のかかる微調整などの手間を省きつつ、その分の熱意を実車”277”の再現工作に注ぐことが可能となるという、非常に意義深い効果があったと言えるだろう。その制作工程については、工作中の写真に付したキャプションをよくお読みいただきたい。前編においてはボディの加工までとし、その続きは後編でご紹介するので、そちらもお楽しみに。