現代に蘇った伝説のオープンスポーツ
高級スポーツカーの代名詞的存在でもある新型SLが日本に上陸した。専用設計のプラットフォーム、F1の技術を取り入れた直4エンジン、2+2シートレイアウトといった、数多くの先進テクノロジーを満載。メルセデスではなくメルセデスAMGが作り上げた、新生SLの走りはいかに!?
【写真14枚】オープンスポーツカーとしての完成度はきわめて高く、質高い走り!
ラグジャリー・オープンスポーツカーの代名詞と言ってもいいメルセデス・ベンツSLが生まれ変わった。この通算7代目となる新型には様々な新機軸が導入されている。2世代続いたリトラクタブルハードトップからソフトトップへ回帰し、シートレイアウトは2+2となり、駆動方式には4WDも初設定された。それだけじゃない。新しい車名はメルセデスAMG SLである。そう、SLは新たにメルセデスAMGのモデルとしてラインナップされたのである。
SLのルーツは、あの300SL。つまりレースを前提に開発されたクルマであり、それゆえにAMGモデルになるのは理に適ったことだとメルセデスAMGの首脳陣は言う。実際には、数多くのライバル達の参入により競争の激化しているこのカテゴリーで、強い神通力をもつAMGの3文字によって、その存在感を際立たせようとしたという面は小さくないだろう。ソフトトップも2+2レイアウトの採用とセットと考えれば合点が行く。
フェラーリ・カリフォルニア〜ポルトフィーノが2+2レイアウトで大成功したことは、強く意識されたはず。そして、2+2だとハードトップでは美しいスタイリングを描くのは難しいというわけで、この基本構成が自ずもいざという時、子どもひとり乗せられるだけでも使い勝手はずいぶん異なる。無論、普段はジャケットやバッグの置き場として使われることが多いに違いない。
若返った印象のAMG謹製SL
実は最初、トップを開けたままで走り出したのだが、それがかえって感動を倍加させた。ボディの剛性感が比類ないのだ。屋根が開いていてもクローズドボディのクーペに遜色ない走りっぷりには唸らされるばかり。サスペンション取り付け部、ステアリング周辺など局部の剛性まで手当されていなければ、こうした味は出ない。
サスペンションは前後マルチリンク式。フロントにはホイールハウス内に収まるコンパクトな設計を採用して、低いフード高を実現している。スプリングはコンベンショナルなコイル。電子制御ダンパーが組み合わされており、電子制御LSDやダイナミックエンジンマウントなどもセットされる。
このサスペンションと高剛性ボディとの組み合わせにより、ハンドリングは素晴らしく正確。操舵に対して遅れなく、そして鋭すぎることもなく、まさに思った通りのラインを描くことができる。一方で、乗り心地はこれまでのSLのイメージからすると、やや硬めと言えるかもしれない。そこはやはりAMGモデルなのである。
注目のエンジンはと言えば、アクセル操作に対して間髪入れずに立ち上がる力感に、無類の一体感が得られる。最高出力381ps、最大トルク480Nmというスペックから想像するより、瞬発力ははるかに上。エレクトリック・エグゾーストガス・ターボチャージャーの威力は凄まじい。しかも、そこにベルトドライブ式スタータージェネレーター(BSG)による16ps、58Nmのアシストも加わり、ギアボックスは9速MCTとなれば、その切れ味も納得だ。
正直に言うと、SLがメルセデスAMGのモデルになると聞いたときには、諸手を挙げて賛成だったわけではない。しかしこの新しいSL、オープンスポーツカーとしての完成度はきわめて高く、その小気味良く、質高い走りには、まさにSLが若返ったと感じられた。ファッションなどを見ても、今どきラグジャリーはスポーティと不可分である。その意味で言えば、実はSLはあるべき場所に戻ってきたと言えるのかもしれない。
実は私自身は、昨年末にカリフォルニアでV8ユニットを積むSL63 4MATIC+、SL55 4MATIC+を経験済み。そして今回、SL43を初めて試したわけだが、その中で欲しいのは迷わずコレというぐらいSL43、気に入った。若返ったSLに、この打てば響くドライバビリティがぴたりハマッていたということだろうか。
さまざまな新機軸を採り入れ、まさに生まれ変わった”AMGの”新しいSL。きっとこれまでのSLファンとは違った新たな層にもアピールすることになるはずだ。