運転支援による「安全機能」を過信するべからず!「クルマの安全とは」【自動車業界の研究】

【始めに】
本コラムは、自動車に関するトピックからテーマを取り上げ、筆者の業界経験や最新情報をベースに多角的に研究した内容を毎回お届けします。
自動車に興味や関心のある皆さまや実際に携わっているプロの方々に、少しでもお役に立てるコラムをお届けできれば幸いです。

【クルマの運転支援機能と安全について】
現在、新車で販売されるクルマには従来装備されていなかった事故を防ぐ安全機能、いわゆる部分的な自動運転の機能が次々に装備されて進化を続けています。
その中から代表的な例として、衝突被害軽減ブレーキや前走車追従型の速度制御機能といった運転を支援する「安全機能」があげられますが、それらの機能はドライバーが運転中とっさに反応できなかったり操作を誤ったりといったケースをサポートして事故を回避、もしくは被害を軽減させて交通安全の一助を担っています。

衝突被害軽減ブレーキ

(ABeam Consulting)

前走車追従型の速度制御機能

これに伴い、最近時は運転を支援する「安全機能」のプロモーション効果もあって「安全機能」がクルマの商品性や魅力を高めるアイテムとして認知度が高まっています。

しかし、運転を支援する「安全機能」はあくまでも安全をサポートする機能であって、衝突を回避するための動的機能として安全を担う(路面と接地する)タイヤやホイール、(タイヤの回転を止めるための)ブレーキ、(タイヤを路面に接地させるための)サスペンション、(それらを支える)ボディといった類の機能ではありません。
さらには、動的機能へ絶対的に影響の大きい車両重量(停止するまでの制動距離に重量は乗数影響)もとても重要です。

ブレーキシステム

(LEXUS)https://lexus.jp/models/lc/features/driving/

ボディ:スバルグローバルプラットフォーム × フルインナーフレーム構造

(SUBARU)https://www.subaru.jp/legacy/outback/driving/platform

つまり、動的機能として安全を担うのは運転を支援する機能とは別であるにも関わらず、最近時はプロモーションの影響から運転を支援する「安全機能」ばかりがフォーカスされていて動的機能を忘れがちであることが危惧されます。

例えば、緊急ブレーキの際に運転を支援する「安全機能」が備わっているからといって、クルマが停止するまでの制動距離が短くはなりません。
ドライバーが運転に集中、きちんとブレーキをかけられた場合において、衝突を回避もしくは被害を軽減できるかどうかは、停止するまでの制動距離やハンドルの操作に追従する動的機能、いわゆるクルマの運動性能が決め手であるためタイヤやホイール、ブレーキやサスペンション、ボディといった従来からの基本性能が安全を支配しています。

そういった意味では、クルマの運動性能が高い『スポーツカー』は、少なくとも衝突回避における安全性能は高いと言えます。

Mercedes-AMG GT

(メルセデス・ベンツ日本)https://www.mercedes-benz.co.jp/passengercars/mercedes-benz-cars/models/amg-gt/amg-gt-coupe/explore/exterior-c190.module.html

【自動車メーカーの課題】
現在の自動車業界は、CASE〔Connected(コネクティッド)、Autonomous(自動運転)、Shared&Services(シェアサービス)、Electric(電動化)〕時代と言われ新規事業の領域が増え続けています。

自動車の事業構造

(ABeam Consulting)

CASEで直接的に「安全機能」に関わるところでは、コネクティッドによるCar to Carの車車間通信やCar to Xの路車間通信による近隣状況の事前検知と(先に述べた)部分的な自動運転とも言える事故の回避や被害を軽減する運転を支援する機能等があげられます。

車車間通信システム

路車間通信システム

(トヨタ自動車)https://toyota.jp/technology/safety/itsconnect/

従来から自動車メーカーでは運転を支援する「安全機能」が交通安全に直結することや完全な自動運転の実現に向けて必要な要素、技術であることから研究や開発に取り組んできましたが、最近時はユーザー(ドライバーやその家族等)の安全意識の高まりから販売にも影響するため、より一層、メーカー間(ブランド間)で競争が激しい状況です。

結果的に自動車メーカーは、従来からの基本性能とCASEという新規事業、双方の領域について対応に迫られ、益々、資金(投資)的負荷が高まっており、企業体力が問われ先行き不安から業界再編の一因ともなっています。

世界第4位の販売台数と14ものブランドを持つ「ステランティス」の誕生や日本の広域トヨタグループ(トヨタ、ダイハツ、スバル、マツダ、スズキ、日野)、アメリカのGeneral Motorsとホンダの提携等がその例です。

【まとめ】
完全な自動運転がまだ実現されていない現在、運転支援による「安全機能」を過信せずに『ドライバーが安全運転をすることが一番大事』であると再認識するとともに、クルマを選ぶ際には安全に関わる動的な機能である運動性能(制動距離等)について意識することが大事です。

クルマの購入にあたってはモデルやカラー、オプションの選択等、数多くの検討が必要ですが、安全についてはもちろんのこと他の検討項目についても不明点がある場合やそれら全体のバランスを鑑みて決めることが難しい場合には、現車の確認や販売店スタッフへの相談によって『ベスト』なクルマを選び、きちんと機能や使い方を理解することが安全に楽しいカーライフを過ごすポイントです。

交通安全の実現に向けては、行政や自動車メーカーが一丸となって取り組んで行くことが必要ですが、クルマの他の機能や性能、魅力については個性にあふれて楽しい良いクルマがもっと増えて欲しいと願っています。

この記事を書いた人

橋爪一仁

自動車4社を経てアビームコンサルティング。企画業務を中心にCASE、DX×CX、セールス&マーケティング、広報、渉外、認証、R&D、工場管理、生産技術、製造等、自動車産業の幅広い経験をベースに現在は業界研究を中心に活動。特にCASEとエンジンが専門で日本車とドイツ車が得意領域。

橋爪一仁
AUTHOR
2022/10/22 06:30

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