鬼才マルチェロ・ガンディーニの手による前衛的で未来的なデザインが、DNAとして引き継がれてきた
1970年代後半、日本国内に旋風を巻き起こしたスーパーカーブームの主役は、母国イタリアはもちろん、欧米ではまったく通じない“カウンタック”という呼び名が与えられたモデルだった。ミウラの後継モデルとして1974~1990年の間に約2,000台が出荷。鬼才マルチェロ・ガンディーニの手による前衛的で未来的なデザインは、その後もランボルギーニのDNAとして引き継がれてきた。初代登場から半世紀、そのドリームカーが復活した。
現代に受け継がれた偉大なるレガシーチーフデザイナーのミィティア・ボルケルトが「単なるレトロ回帰ではない」と強調するように、ランボルギーニの本拠地であるイタリア・サンタアガタで我々の前に現れた新型カウンタックは、ヘキサゴンのフロントウィンドーやホイールアーチ、テレフォンダイヤルデザインのホイール、そしてサイドのNACAダクトなど、いくつかのデザインエレメントはオリジナルから引き継いでいるものの、全体的なウェッジフォルムは新世代と感じずにはいられないほどモダンな仕立てとなっていた。
全長4.87m、全幅2.1m、全高1.14m、そしてホイールベース2.8mのカーボンモノコックボディ中央に縦置きにして搭載されるパワーユニットは、2019年に登場し19台が出荷されたシアンのそれをベースにした6.5L V12。スーパーキャパシタ(コンデンサー)による軽量なマイルドハイブリッドシステム(34ps)を組み合わせ、システム最高出力は814ps、最大トルクは720Nmに達する。ちなみに、そのパフォーマンスは、0↓100km/h加速が2.8秒、最高速度は355km/hとカタログに記載されている。
さて、前置きはいい。早速1台限りの試乗車に乗り込むことにする。コクピットへのアクセスは意外なほどイージーで、足を振り上げ巨大なサイドシルを跨いでいたオリジナル当時が懐かしいほど。数値どおりにルーフラインは低く、身長が185cmを超える筆者の場合はバックレストをやや倒す必要がある。ただし、グラスルーフは透過式の液晶ガラスのため、圧迫感を覚えることはない。
【写真10枚】オリジナルから長足の進化を遂げたスーパースポーツカーに仕上がった
コクピットまわりの操作スイッチやインフォテイメントは大部分がデジタル化されており、好ましいのはステアリング上に小さなボタンやタッチセンサー類がないこと。これでドライバーは運転に集中することができる。真っ赤なカバーを跳ね上げスターターを押し背後から耳に届くV12ユニットの咆哮が多少落ち着いたのを確認してから、やや反発力のあるスロットルを踏み込んで発進する。
シングルクラッチのISR(インディペンデント・シフト・ロッド)トランスミッションによる変速はわずかなショックを伴いつつ電光石火のごとき素早く、いきおいレーシングカー気分を楽しめる。しかも、このV12ユニットは6,750rpmで最大トルクを発生することからもわかるように典型的な高回転型というか、その特性はもはやレーシングエンジンのそれ。とにかく高回転をキープし続けることで、その旨味を引き出せる。
マグネティックダンパーを採用するプッシュロッド式の4輪ダブルウイッシュボーンは、はっきりハードに締め上げられているがゆえ、ロードホールディングは抜群。タイトコーナーに多少ハイスピードで飛び込んでも、顔色を変えずに向きを変えていく。路面からの突き上げは明確に伝えてくるが角は丸く、やや荒れた程度のアスファルトなら不快なほどではない。
半世紀の時の流れを経て再登場したカウンタックは、引き継がれたネーミングとデザインアイコン以外、オリジナルから長足の進化を遂げたスーパースポーツカーに仕上がっていた。約4時間のテストを終えて夢見心地で降り立った筆者だが、あらためて240万ユーロ(約3億3500万円)という価格を突きつけられ、無残にも現実へ引き戻されたのだが。