F1日本GPには20年以上通っているという施主の、家の近くに別荘のようなテイストで造ったガレージ
少年の頃に見たホンダ生産工場の社会科見学で感激し、最初に購入したクルマは2代目プレリュード。元々ホンダフリークだったというMさんのガレージが、今回紹介させていただく物件だ。ホンダF1にも熱狂し、F1日本GPには20年以上通っているというMさんは、その極みとしてNSXタイプSを購入。当時、自分のNSXが作られる現場をぜひ見たいと、ホンダ生産工場の工場長に手紙を書き、特別に招待されたというエピソードも懐かしそうに語っていただいた。
工場では、自分の名が書かれたエンジンを実際に目にし、非常に感激したことを覚えているそうだ。NSXを収めるガレージハウスも新築し、ともに満足していたMさんだったが、実はそのNSXがよくできたクルマすぎて、もうひとつ違う方向性のクルマがほしくなってしまったという。
GT40との出会い
次に選んだのがロータス・エリーゼで、さらに出会ってしまったのがGT40である。Mさんが手に入れたのは、フォードGT40の正統後継メーカーであるサファイアが製造したマークV S/N P1092。GT40専門書にも明記されているS/Nを持つ固体で、当時生産されたパーツで組立てられたシャシーに、エンジンブロックからチューニングされたル・マンエンジンを搭載。カウルは当時の金型から製作されたものだという。
当初はさほど興味はなかったのだが、現車を目の当たりにし、そのヒストリーをたぐっていくうちに、クルマのもつ価値の重さを知るようになり、強く魅せられてしまった。現在、GT40を走らせるのは月に1~2回。空いた時間帯に高速道路をメインに走るという。基本的にレーシングカーであるGT40だが、走っていれば冷却系も問題なく、高回転まで回るV8の魅力的なサウンドは、鋳鉄でできたエンジンの野太い音そのもの。まるでクラシックF1のエキゾーストノートのようだと、Mさんは顔をほころばせいた。
GT40のためのガレージ
GT40を手に入れたため、このクルマが収まる第2のガレージが必要になった。このとき考えたのが、自宅から離れた環境のいい郊外に別荘として作ろうか? それとも家の近くに使い勝手の良い保管場所として作ろうか? ということであった。設計を依頼することにしていた建築家・倉島理行さんからもアドバイスをもらい、出した結論が、家の近くに別荘のようなテイストで造る、というものだった。
遠くだと結局行かなくなってしまう。それよりも、自宅のすぐ近くで気が向いたらぶらりと立ち寄れるほうがいい。そのうえで、別荘のような非日常の雰囲気を味わえる空間とする。さらに、自分だけでなく、妻や子供も気軽に来て家族で楽しめるようなものにしたい。Mさんはそう考えたのだ。
DIYも楽しみのひとつに!
でき上がった“近所の別荘 ガレージ”は、日常である自宅とはテイストをがらりと変えられた。外観はプロバンス風で、2階のリビングはナチュラルテイスト。メインとなるガレージは、手前に4柱リフトを設置、ここにエリーゼとNSXを収める。そしてその奥にGT40の空間を設けた。ここは、旧いクルマに合せて、レンガ調のアンティークな雰囲気に仕上げた。
忙しい身ではあるが、このガレージができてからは、朝5時頃に起きてガレージで日曜大工のようなちょっとした工作を行い、のんびりと朝食を食べるという早起き生活をするようになったという。木材を切るのにも、電動丸ノコではなく、手ノコで行うのだそうだ。手間ではあるが、ただノコギリを引くという無心のひと時が好きなのだという。クルマ趣味を通して仲間が増えたのがうれしいというMさん。そして自分自身の幅も広がったと思っている。
人と人のつながりが大事だと考えるようになったMさんは、最終的にはこの名車を次の世代に手渡すことが必要だと考えている。そのときまで、このP1092はこのガレージで大切に保管されていくのだろう。
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