三菱のミドルセダン、4代目ギャラン シグマをベースに開発され1982年にデビューしたスペシャリティクーペが「スタリオン」である。オーソドックスなレイアウトや堅牢な設計による耐久性が買われ、モータースポーツでは日本国内より先に海外での耐久レース等で頭角を現した。1985年、その年より始まったグループAカテゴリによるツーリングカー選手権(JTC)の最終戦、富士インターTECでスタリオンはヨーロッパのチームから凱旋帰国という形で国内公式戦デビューを果たす。グループAというとスカイラインやスープラ等を最初に思い浮かべるが、このインターTECでは同じくヨーロッパからの遠征チームであるボルボ240(1、2位)、BMW635CSiに続いて、日本車最上位の4位でフィニッシュしている。翌1986年からは三菱ワークスとしてJTCへ本格参戦、1988年までスカイラインやBMW635と三つ巴の戦いを繰り広げた。
内装、外装、足回りと抜かりないレース仕様を再現
スタリオンのプラモデルとしてはフジミ製1/24がお馴染み。フジミは初期型をモデル化しており、バリエーション展開でグループA仕様も存在したが、ボディは初期型のままデカールとタイヤ、ホイールでそれっぽくした程度に留まり、中/後期型やしっかりとしたレース仕様の登場に首を長くしていたファンも少なくないはずだ。1980年代のツーリングカーレース車を多くモデル化するBEEMAXがスタリオンの開発をアナウンスしたのが2018年の5月ごろ。発売の日を指折り数えて待っていたが、ついに2019年の11月にリリースとなった。キット内容は日本国内販売元であるアオシマ側の監修もあって当時のグループAスタリオンをキッチリと再現したもの。キット・フォーマットもBEEMAXの今までのスタイルをほぼ踏襲しており、エンジンレスながらシャシーや足回り、内装、外装ともに抜かりなくレース仕様が再現される。
RALLIARTカラーのマカオ・ギアレース仕様
デカールも1987年の国内JTC仕様のSTPカラーと1988年マカオ・ギアレース仕様のRALLIARTカラーのものが用意され、更にそれぞれ2種類のゼッケンが選べる。BEEMAXワークス制作の完成見本が国内JTCの5番車とマカオ・ギアレースの1番車をチョイスしていたので、個人的にRALLIARTカラーが好みであるのと単純にハズシからマカオ5番車で制作してみることにした。ちなみにこのマカオ5番車は1988年マカオ・ギアレースにおいてBMW M3 Evo(1、2位)、フォードシエラRS500(3、4位)に続く日本車最高位の5位でフィニッシュしている。ドライバーは後に全日本F3000選手権にレイトンハウスから参戦したことでも知られている、ドイツのF1ドライバー、クリスチャン・ダナーが務めていた。
三菱のモータースポーツへの熱意!
作例として実際に制作した印象ではボディのスジボリに少々浅い箇所が見受けられ、パーツ同士の嵌合がキツいところもあったので塗装前にしっかりと仮組みを行う必要があると感じた。しかしながら良好なボディ形状や、BEEMAXでは定番である外嵌め式のウィンドウパーツによる窓枠の塗り分けのしやすさ、段差の少ない窓周りの仕上がり、最高のクオリティを誇るシルク印刷デカール等によってとても楽しい制作でもあった。前述のネガティブな部分も丁寧な処理をしてやれば問題ない程度であり、むしろ作り手の個性を出せるポイントとしてポジティブに受け取りたい。また、きちんと前処理をしてやれば後々の佇まいが違ってくる。更に別売りのディテールアップパーツを使用すれば、モデルの解像度も完成時の満足度も大幅にアップすることウケあいである。同パーツは相変わらず痒いところに手の届く内容となっているので財布に余裕のある方には是非ともおすすめしたい。仕上がったこのBEEMAXのスタリオンを見ていると当時の三菱のモータースポーツへの熱意を思い起こさせる。WRCやラリーレイドでトップクラスの活躍をしながら久々にサーキットへ帰ってきた三菱はきっちりとグループA史にも爪痕を遺した。単なるレースファンのひとりとして今の三菱に歯痒さを感じないわけではない。またいつかサーキットで暴れる三菱を見てみたいと思っている人は少なくないはずである。
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