ことの始まりは外出不自由なころに出会った音声SNSのClubhouse。
Clubhouse内に数多ある部屋(ルームという)の中で特にEVとお茶関係の部屋で聴く新しいあれこれが楽しくて、気がつけばもう1年以上楽しんでいます。
そんなある日、「そうだ、みんなに会いに行こう!」と思い立ちました。
せっかくEVとお茶の人たちに会いに行くのだからやはり電気自動車でと思いMX-30EV MODELを借り出しました。
初めてのロング体験記とそこから得たあれこれを2回に分けてお届けしようと思います。
1000キロ乗らなきゃわからない!
これは、尊敬するモータージャーナリストの笹目二朗さんの言葉です(同名の著作もあります)。クルマはロングに乗ってみなければわからないということですね。
1000キロを目指して計画を立てたのですが、会ってやってもいいよとの返事をもらえた人と場所を単純に結んだら2000キロを超えてしまいました。
これだけロングに走ればEVのあれこれが見えるだろうと思ったのもこのクルマを旅の友に選んだもう一つの理由です。
せっかくのロングなので旅に出るにあたりテーマを決めました。広島までの往路は何も考えずに(結果的にはいろいろ考えてしまいましたが)走り、広島からの復路はEVの部屋の人たちから聞いた知識を元にEVっぽさを考えながら走ることにしました。
いやいや、いろいろなことがありましたよ。そんなお話。
EVを買ってみたいけどどうなんだろうと思っている方々の参考になれば幸いです。
飽きるほど充電、だけじゃなく……
EVと言えば一番のトピックは充電なのでまずそこから。神奈川県横浜市神奈川区子安を出発し所沢、狭山、掛川、名古屋、奈良、神戸、鳥取、島根、広島、奈良、岡崎を巡り子安へ戻るやや一筆書きの総走行距離2171キロ、5泊6日の旅。
充電回数は22回、総充電時間は18時間43分53秒にもなりました。松江のホテルには普通充電器があったので一晩駐車中の普通充電、広島マツダで借りた充電器がデミオEVがあった時代に設置された中速充電器でしたが、それ以外は急速充電30分を基本に、充電待ちしている人がいないことを確認して“少々おかわり急速充電”、先の行路と充電器の設置具合を睨みながらのショートストップ充電など全て急速充電でした。写真は全充電シーンです。高速道路のSA/PA、ショッピングセンター、マツダ、日産、三菱、メルセデスベンツの各ディーラー、ホテルの普通充電器とだいたいの充電スポットを体験しました。
電欠の恐怖
鳥取でのことです。ここまでは特に何もなかったのですが、まとめて思い知らされることがありました。
計算上は問題なく宿にたどり着ける残量だったので「チェックイン前に近くのスポットで充電すればいいや。その間にチェックインや夕食を軽く済ませ、翌朝出発してすぐどこかで充電すればほぼ満充電になるからあとが楽だな」と考えたのですが、これが電欠の恐怖に襲われる物語の始まりであることをこの時点では知る由もありませんでした。彷徨いの顛末を時系列でざっと紹介するとこんな感じです。
ホテル手前のイオンモールは、店舗の営業時間にも関わらず充電器は営業終了。
その向かいにあった行政施設の駐車場にある充電器には、充電完了しているにも関わらずオーナーが戻ってくる気配がない放置車で塞がっていたし、そうでなかったとしてもその充電器は手持ちの充電カード非対応だったのでどちらにしてもそこではできず。
その近くのトヨタのディーラーは普通充電器の上に営業時間外は使えず。
仕方なく、ホテルを通り過ぎた先にある充電器を目指したもののテスラのスーパーチャージャーで使えず。
夜は諦め、向かう経路上にあるスポットで2セット1時間充電すればいいかと思い充電せずにこの日は終了。
翌朝その充電器を目指すが、二基は普通充電器、一基の急速充電器はなんと故障!
残量が不安になってきたので、経路上のその先のではなく、逆方向だけどまだ距離が近い三菱のディーラーを目指す。しかし近隣の3軒とも普通充電器しかなく断念。
その先にある日産のディーラーでやっと充電
何とか充電はできホッとしましたが、そこまでのラスト2.2キロが精神的に大変でした。ドキュメントを心の叫びと共にお届けいたします。
“三菱のディーラーから日産のディーラーまでは2.2キロ7分の距離。この時点で残量は2%2キロ分。しかし、長い渋滞でちょっと動いては止まりを繰り返す間に残量は減り1%1キロになり、「充電してください」とのメッセージに続いてバッテリーのアイコンが点滅を始めた。「わかっとるわ!」思わず叫ぶ。”その時”に備えてエアコンを切り窓を全開にする。この時点で日産の看板ははるか遠くに欠片が見えるくらい。
そしてとうとうメーターの残量がどちらも横線になりこっちの顔には縦の線が入る。更に表示が、「出力が制限されています。意図する加速ができません」に変わり動きが鈍くなった。こうなるともう恐怖しかない。両方とも渋滞している片側一車線の道路で電欠したらどうなるのか?ガソリン5リッターもらってとりあえずということには当然ならない。誰がどうやって助けに来てくれてどうなるのか?電池が切れるのが先かこっちの血管が切れるのが先か?クルマが止まるのが先かこっちの心臓が止まるのが先か?という恐怖の時間を過ごす。なんとかディーラーに滑り込み充電器の前に停めたときには精根尽き果て放心状態。“
余談ですが、地方の日産のディーラーを見ると西部警察を思い出すのは私だけ?
これで2時間以上ロスしてしまったので後の予定がかなり狂ってしまい、二度と来るかと怨みながら鳥取を後にしました。今日はもうここでいいかと思うくらい精神的にはぐったりしました。
ただこれは避けられたことです。
ツマラナイ場所にあるスポットで充電しておくか、経路から大きく外れた場所で充電しておけば。たったそれだけのことを妥協すれば良かったのです。ただどうしても
「充電中にすることがない場所で充電するのも、経路を大きく外れるのも嫌だ」
という思いに抗えず結果的にこんな恐怖を味わうことになってしまいました。
ただこの貴重な経験は悪いことではありませんでした。
速度を上げると電池の減りが早い~空気と戦うEV~
往路新東名の最高速度120キロ区間を120キロで走れるだけ走っているとき、ふとパネルを見たらすごい勢いで残量が減っているのが見えました。残量%と走行可能距離がどんどん減っていくのです。
EVに詳しい人に、「EVは空気抵抗が電費に強く影響するから速度上げすぎると電費悪化するよ」と教えられたので、広島からの復路は到達時刻と電費が高バランスすると言われる時速80キロを維持して走ってみました。
すると確かに走行可能距離は伸びます。クルマ走った距離に比べて走行可能距離がそれほど減らないことをメーター表示で確認しました。エンジン車でも確か同じですね。
「うっかり給油を忘れて燃料警告灯が点いてしまった場合は時速80キロの定速でガソリンスタンドを目指して」
とJAFの資料で読んだことがある気がします。
この他、気になったことや気づいたことがいくつかありました。
① クルマのお腹が空くタイミングと自分のお腹が空くタイミングが合わない(休憩したいタイミングも然り)ことが多い
エンジン車も給油するし同じじゃないかと思われるかもしれませんが、EVの場合充電スポットでの基本充電単位は30分(もちろんそれより短く止められますが)なので、せっかくのそれだけの時間停まっているならついでに食べたいところですが、こっちはそのタイミングじゃないということがあります。そうすると、もう一度休憩せねばならなくなり、停まっている時間がその分長くなってしまいます。細かいことを言うと、仮にタイミングが合ったとしても、「ここには自分が食べたいものがない!」ということもあります。せっかくの旅なのですから、当地の名物を楽しみたいのに・・・と。弁当や食材を買い込んで充電中に食べることにもなるのですが、写真のように名物っぽいものを仕入れ旅情気分を味わうことがささやかな抵抗でしょうか(笑)
② 行程が充電時間と充電器設置場所が中心になる
充電器の場所を探せるアプリで見ながら走ったのですが、これから向かう先に充電器がない、その場所までたどり着けるだけの残量がなく、まず手前でショートストップ補充電をする、充電するために一旦経路を外れなければならないこともありました。
反対に、残量の関係で経路を外れられず、寄り道を諦めることもありました。
③ 30分充電したのに思ったほど充電されておらずがっかり(充電量は充電時間に必ずしも比例しない)
駆動用のリチウムイオン電池に限らず電池全般に言えることですが、電池温度が高いと充電受け入れ性が落ちます。直前に電池の温度を上げるようなこと、例えば長いフル加速、高速巡航や残量が少ない状態での長い回生充電(減速エネルギーでの充電)など大きめの電流が長時間流れるようなことがあれば電池温度が上がっているので温度が下がるまでの間は充電量が落ちます。
MX-30EVにも写真のようなバッテリークーリングシステムが備わっていますし、もっと進んだ強制クーリングシステムを搭載したEVも出始めています。ちなみに高温は電池寿命にも少なからず影響を与えるので、そのためにもエネルギー密度が上がるに連れて強制クーリングシステムは必須になるでしょう。
後編へ続く
(取材・写真・文:大田中秀一)
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