1,300平米の広大な敷地に、カリフォルニアを創る
千葉県の海沿いに、建築空間創作集団「colours」が設計、デザインをしたカリフォルニアスタイルのガレージハウスが建築された。代表の奥野氏は、20代で海外をヒッチハイクして周り、その後商社での海外出張を10年繰り返したのちに不動産や建築の道に入ったという経歴を持つ方。同社は「創造を楽しむ」ことを理念とし、空間創造をエンターテイメントと考えるなど、「おもしろい」という感覚を大事にしている会社だ。
このガレージハウスは、施主のOさんが成田空港から海外に出張に行くために利用するセカンドハウスとして建築・設計されたもの。Oさんは、機内誌で奥野さんが設計したカリフォルニアスタイルの住宅の記事を目にしたことがきっかけでcoloursを知ったという。カリフォルニアへよく出張に行くOさんは、現地の青空の下に建てられた「アイクラー住宅」がほしいと、いつも願っていたそうだ。
アイクラー住宅(アイクラーホーム)とは1950年代のアメリカで普及した建築方式で、戦争を終えた兵士がが帰国後にすぐ住めるよう、安価でシンプルそして早く建てられる住宅として、アメリカの住宅建設業者ジョセフ・アイクラーが設計した住宅を指す。現在ではミッドセンチュリーデザインとして注目され、アメリカの中古住宅市場でも高価なプライスとで取引されるなど、ファンも多い。
このデザインに着目したOさんは、セカンドハウスにこのスタイルを取り入れたいと決め、土地探しから「colours」に依頼。5つの土地のなかから、現在1,300平方メートルの土地を選び、建築デザインに着手した。
インテリアの細部にまで徹底されたデザインへのこだわり
ダイニングテーブルはOさんがアメリカで買い付けたヴィンテージ。設計の奥野さんは「デザインにはそれぞれ意味があり、機能を殺すことなく住宅デザインを構築しないといけない」というポリシーがあり、設計にかなり時間をかけたという。完成したガレージハウスは、まず日本では見ることのない、かすかに勾配がついた大屋根の平屋スタイル。淡いブルーをあしらった屋根の縁や赤い玄関ドアが、モダンなデザインにとてもよくフィットしており、黄色いVWバスと組み合わされ、まるで一枚の絵葉書のようだ。
こだわりは室内のデザインや素材からも感じられる。例えば壁面に採用したラワン材も、使用するのは17枚だが壁面の質感を揃えるために600枚の中から厳選、さらに塗装で色を揃えるなど、細かな配慮がなされている。イームズなどミッドセンチュリー時代の家具やラグ、雑貨を配置したリビングは一面が大きなガラスとなっていて、開放感あふれるものとなっている。また、どうしても壁面に凹凸が出てしまうということで、エアコンは屋根裏に設置。天井4か所から噴出させるなどデザインにもこだわっている。
気になるガレージは屋内に2台収納できるレイアウトで、キャリアが付いた背の高いクルマやSUVなどの格納も意識して作られており、2,400mmもの高さをとっている。これならVWバスのルーフに荷物を積んでも、そのままガレージに出し入れができる。収納棚も使い勝手がよい。ちなみにOさんのVWバスは、ブラジル生産最終モデルの希少な一台だ。
将来は、ウッドデッキに愛犬のためのプールの設置や、さらにガレージを庭に拡張する計画もされているとのことで、まだまだ伸びしろのある、今後も楽しみなガレージハウスだ。
取材協力:Colours https://www.beams-factory.com