本国モデルでは先代から設定のあったベンテイガ・ハイブリッド。この2世代目から日本にも投入された。この上ない静粛性と力強さ、そして利便性の高さから、新世代グランドツーリングの最右翼といえるモデルだろう。
グランドツーリングの最適解かもしれない
ロンドン近郊を出発し、途中ドーバー海峡を渡りながら陸路でル・マンへ。そこで24時間を走り抜き、栄光の優勝トロフィーを抱えて、再び陸路イギリスへと戻る。思えばベントレーは生まれながらにして、グランドツーリングという使命を帯びたメーカーであった。そのアイデンティティはSUVにおいても、電動化時代で揺らぐことはない。そんなベントレーの強い意志と決意を感じさせるのが、ベンテイガ・ハイブリッドだ。
日常の範囲ならEV的な使い方も可能な、Eモーターのみで50km(WLTP値)というパフォーマンスはベンテイガ・ハイブリッドのトピックのひとつだが、その本懐はガソリンとバッテリーを満タン状態にした時で858kmと、ベンテイガV8の635kmを大きく上回る最大航続可能距離にある。
そこで群馬県の榛名湖畔まで往復320km超のルートを設定し、改めてベンテイガ・ハイブリッドのGT性を検証してみた。
これまで何度か試乗してみて気になっていたのは、必要な時のためにバッテリーの充電量を可能な限り維持する「ホールドモード」にしていても、ブレーキ以外の回生がないので発進時などのアシストでじわじわと消費してしまうこと。また、急速充電に対応していないので、出先で容量がゼロになれば内燃機のみの駆動となることだ。
実はそこにひとつ裏技がある。シフトをマニュアルモードにしたうえでホールドモードにすると、ほぼバッテリーを消費せずに走ることができるのだ。試しに往路の160kmほどを走ってみたところ、バッテリーの消費はほとんどなし。高速道路が主体ではあったが、オンボード上の燃費表示が8.2km/Lを記録したのは、車重約2.7トンの大型SUVであることを思えば、非常に優秀といえる。
反対に復路はハイブリッドモードを選択する。ベンテイガ・ハイブリッドはハイブリッドモード時にナビゲーションで目的地を設定すると、あらかじめ通過するルートを予測。市街地などでのEV走行用の電力を残しつつ効率的にアシストを行ない、目的地に到着した時にちょうど充電量がゼロになるようなエネルギーコントロール機能が備わっている。
ルートはワインディング、高速、市街地という構成で、当初はモニター上でジリジリと減っていく充電量に最初は半信半疑だったのだが、EV可能走行距離が15kmとなったところで、高速道路を離脱。料金所を過ぎたところでピタッとエンジンが止まり、EVモードだけとなり、残量ゼロでピタリと目的地に到達したのには正直驚いた。ちなみに復路の燃費は12.5km/L。つまり道中に充電設備がなかったり、充電する時間的な余裕がない場合は、高速道路でホールドモードを多用するなどの工夫次第でベンテイガ・ハイブリッドの持つポテンシャルを最大限に活かしたロングツーリングが可能となるのだ。
今回もうひとつ印象に残ったのは、V8より220kgも重いにもかかわらず、ワインディングでのハンドリングが想像以上にキビキビとしていたことだ。加えて前後ディスクブレーキのタッチもよく、十分な容量を持っているので、ペースアップしても不安を感じることはなかった。
まさに走りを楽しみながらも、快適にそして経済的、環境的なグランドツーリングを遂行できるベンテイガ・ハイブリッドは、往時のベントレーのDNAをしっかりと継承した現代にふさわしいグランドツアラーといえるだろう。
そして、この出来栄えを体感すると、2030年までに全モデルをBEV化し、エンド・トゥ・エンドのカーボンニュートラル達成を目指す彼らの計画が、リアルなものとして感じられるようになった。
【Specification】ベントレー・ベンテイガHYBRID
■全長×全幅×全高=5125×2010×1710mm
■ホイールベース=2995mm
■車両重量=2648kg
■エンジン種類/排気量=V6 DOHC 24V+ターボ+モーター/2995cc
■最高出力=449ps(330kw)
■最大トルク=700Nm(71.4㎏-m)
■モーター最高出力=128ps(94kw)
■モーター最大トルク=350Nm(35.7kg-m)
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=285/45R21:285/45R21
■車両本体価格(税込)=22,800,000円
■問い合わせ先=ベントレーモーターズジャパン ☎0120-97-7797