ラグジュアリー路線から決別を果たし、原点回帰を掲げてスポーツ性が高められた現行型M4。だからと言って主戦場はサーキットだけかと言うとそうではない。公道もサーキットも楽しめる完全無欠のハイパフォーマンスカーに仕上げられている!
公道でもサーキットでも高揚感はこの手の中に!
BMWのホームページにあるMモデルズのコンテンツには、公道も走れる究極のレーシング・スポーツカーという挑発的なコピーが掲げられている。ただ、このコピーで大切なのは「レーシング・スポーツカー」ではなく「公道も走れる」なのだ。
というのは、MモデルズにはBMWがモータースポーツ活動で得てきたノウハウが投入されているが日常とかけ離れたレーシングマシンではない。過去には、そのままレース参戦ができそうなロードゴーイングレーサーも存在した。だが、基本的にはどのモデルも走りの洗練度に磨きをかけ公道での適応力の高さを際立たせてきた。
もちろん、サーキットを本気で攻めるという非日常における走りは少しも犠牲になっていない。圧倒的な高性能ぶりも、世代を重ねるごとに上乗せされてきた。それこそ、サーキットでタイムアタックをすれば最新モデルが最速であることは間違いのない事実だ。
そうなると、やはり日常とかけ離れてしまいかねないが非日常は別の場面ではなく繋がっている。日常、つまり公道でもサーキットの興奮が伝わってくることこそMモデルズの特徴だ。
最新のMモデルズとなるM4コンペティションに乗ると、誘いかけの巧みさが確かめられる。市街地で先行車との空きすぎた車間を調整するといった場面でさえ、アクセルを踏み足すだけで力強さが実感できるのは当然のこと。そして次の瞬間、中回転域にかけて力強さが盛り上がる。それだけに、その先を試したくなる。
BMWのブランドとしての約束となる”駆けぬける歓び”は、どのエンジンにも共通する力強さが源泉となる。M4が積むMモデルズ専用のS58型エンジンならではの盛り上がりは、いわば歓びを増幅させるわけだ。しかも、その盛り上がりは期待を超える。超える度合いの設定も絶妙であり、もっとアクセルを踏んでみたいという誘いかけの裏付けにもなる。
実際にアクセルを踏み込めば、クォーンという排気音が響く。5500rpmからは高回転域に突入したことを知らしめるようにカァーンという高周波サウンドに変わる。力強さの盛り上がりは伸びとなり、トルクがエンジン回転数により稼ぎ出されるパワーに置き換わったことがサウンドによっても臨場感たっぷりに伝えてくる。
刺激的なパワーは、低いギアではレブリミットの7200rpmまで持続。2速なら100km/h以下なので、実は高速道路の本線合流なら公道でもアクセルを踏み続けることが可能な場面がある。
ステアリングを切り込めば、期待を超える反応が確かめられる。やはりその度合いの設定も絶妙であり、過敏にならず正確さを損なわないギリギリの範囲で応答性のシャープさが伝わってくる。その刺激が、それこそ市街地のレーンチェンジでも実感できる。
なおかつワインディングロードのコーナーを駆けぬけたい、さらにはサーキットを本気で攻めたいという誘いかけになる。M4は、走りの洗練度に磨きをかけたことでダンパーの減衰力を連続可変制御するアダプティブMサスペンションのモードがコンフォートなら適度なストローク感がある。そのため、乗り心地が向上しただけではなくペダル操作やステアリング操作に対するクルマの反応がボディの動きにより確かめられる。決してムダな動きではなく、各タイヤへの荷重移動がリアルに伝えるためのストロークなのだ。
M4に試乗して実感できたことは、ドライバーを積極的な走りへと導く誘いかけの巧みさだ。まさに、そこがMモデルズの価値となる。だからこそ、公道からサーキットまで場面が連続するのだ。
【Specification】BMW M4 COUPE COMPETITION
■全長×全幅×全高=4805×1885×1395mm
■ホイールベース=2855mm
■車両重量=1730kg
■エンジン種類/排気量=直6DOHC24V+ターボ/2992cc
■最高出力=510ps(375kW)/6250rpm
■最大トルク=650Nm(66.3kg-m)/2750-5500rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=275/35R19:285/30R20
■車両本体価格(税込)=13,750,000円