ウインドウもルーフもドアすら無い!研ぎ澄まされたスパルタン「ロータス 3イレブン」国内試乗

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ウインドウもルーフも、そしてドアすらもない。そんなクルマが一般公道を走れる。ロータスが340R、2イレブンに続いてリリースいたスパルタン・モデルの第3弾となる3イレブンは、乗った瞬間から非現実的な世界へと誘う。

乗り込んだ瞬間から非現実的な世界に誘う

2017年にデビューした3イレブンは、エリーゼ&エキシージのシャシーをベースとした車両だ。ロードとレースの2つのバージョンをラインナップし、後者は一般公道用のナンバー取得が出来ない。全世界311台の限定モデル。

「物凄いクルマに乗ってるぞ、という感覚がありますね。座着座位置は低いし、視界を遮るものは何もないし。やってはいないけど、シグナル・グランプリでも負ける気はしません。こういうクルマを東京の街中で走らせるのは、いろんな意味で相当に非現実的ですよ。もちろんクルマの実力なんて何パーセントも引き出せないですけど、この強烈な非日常感、それは楽しい」

そう語ってくれるのは、スーパーGTシリーズのGT300クラスをロータス・エヴォーラGTで戦う、加藤寛規選手。ティーポの誌面でもお馴染みの、プロのレーシングドライバーだ。

ドアが無いことによりサイドは大胆な造形を採用し空力性能を追求。フロントウインドーや幌すらも無い。車両価格はロード・バージョンが1523万5000円、レース・バージョンは2062万5000円。

そして彼のいう“物凄いクルマ”というのは、ロータス3イレブン。ロータス独自のアルミ・シャシーにカーボン複合材のボディを組み合わせ、3.5L V6+スーパーチャージャーをミドシップ・マウントしたスペシャル・モデルだ。2007年に発表された2イレブンの後継として2017年にデビュー、ロード・バージョンとレース・バージョンの2タイプが用意され、今回都心に引っ張り出してきたのはもちろんナンバー付きのロード・バージョン。

3.5L のV6スーパーチャージャーエンジンは水冷式インタークーラー採用し416PSを発生。背後に簡素なラゲッジルームがあるが、積載許容重量は僅か20kgのみ!

こちらのエンジンはエヴォーラ・スポーツ410とほぼ同じスペックで、416PS/7000rpm、41.8㎏-m/3000rpmを発揮している。それがクロース・レシオの6速MTを組み合わせられる。車重は92kg。パワーウエイトレシオは2.2kg/PSという強烈さだ。0-100km/hを3.4秒で加速し、最高速は280km/h。そのスーパーカー並のパフォーマンスもさることながら、このクルマ、ドアもなければウインドスクリーンもない。余計なモノは何もない。だから当然ヒーターすらもついてない。試乗日は、まだ春には遠い寒い日だったのだ。

送風口もオーディオも無いのでコクピットはシンプルそのもの。必要最低限のアイテムのみの装備。ヒーターすら装備されない潔さ!

「でも、バイクほどは寒くないんですよ。風も顔には当たるけどそんなに入ってはこないし、巻き込まない。太ももが寒くなるようなこともあんまりない。そこは意外と耐えられました」

とはいえ、3イレブンの先代にあたり、ほぼ同じ構成を持つ2イレブンの基は、“サーキット・カー”という名の2005年のコンセプトカー。その流れをモロに汲んでるわけだから、3イレブンのロード・バージョンの本来の存在意義は、自走でサーキットまでの道のりを往復できる“サーキット・カー”というところにあるはずだ。

「サーキットでもすでに走らせましたけど、めちゃくちゃ速いです。GT300のエヴォーラと同じくらい速い。風が当たる分、スピード感はこっちの方が強いかもしれない。同じサーキットで、僕は他のロータスのロードカーも全て走らせてますけど、3イレブンが一番速いです。もうそれは間違いなく。軽さって、本当に強力な武器ですね」

もう少し具体的に訊ねてみよう。その速さの理由は、やはり軽さ?

「もちろんそれはかなり大きいです。そこに強力なエンジンが載っているわけですからね。このエンジン、パワーもトルクもあるんですけど、扱いやすいんですよ。下から上まで、ロスなくスムーズに回ります。スーパーチャーで一気に回ってくれる。レスポンスもいいし、パワーやトルクの谷とかもない。だから頑張ってパワーバンドに乗せなきゃいけないっていう感じもないんで、ギヤを選ぶのも比較的楽ですね。ストレスなく、速く走れます」

MoTeC社製のロガー付きメーターが標準装備。エンジンやスロットル開度といったデータから、サーキットのラップタイム計測など、多彩な機能を持ち合わせている。

ロータスといえばコーナリング、というイメージが強いけど、そこは?

「曲がるのはもちろん得意ですよ。よく曲がるし、コーナリング・スピードも速いです。足周りはエリーゼ辺りとは違って、ロードカーではあっても、割とレース向けのような性格ですね。ストロークを減らしてるような感じ。というか、軽いからストロークしないように感じるのかも知れませんね。フロントもリアもヒラヒラと軽やかというよりは、ちょっとリアをセーブして、リアの方をよりグリップさせてフロントが入っていくという感じ。リアをちゃんとグリップさせないと、あのパワーを活かせないんでしょうね。

前後の重量配分もわりと後寄りで、だからトラクションもしっかり掛かります。それでも限界を超えれば当然リアは流れるんですけど、その動きもゆっくりで、フロントが入っていきながらリアが粘りつつ滑りはじめるような感じ。だから凄くコントロールしやすいんです。エキシージよりも、もっと安定した方向でバランスさせてる印象ですね。ただ、流れはじめるときの速度は相当速いので、慣れが必要だとは思いますけど。サーキット走行を楽しめるようにちゃんとセッティングされてるクルマですよ。そして何度もいうようですけど、3イレブン、本当に速い(笑)」

ロータスのスポーツタイプシートが標準。表皮はアルカンターラ。背後にロールバーを装備する。

そうしたサーキット寄りともいえるクルマで都心を走るとどうなの? というのが冒頭のセリフだったのだ。

「そもそもこのスタイルですから違和感はもちろんありますけど(笑)、でも乗りにくさはないんです。さっきもいったようにエンジンはパワーはあるけど扱いやすい。2000rpmも回していれば、3速でも4速でも、そこからスムーズに加速します。おとなしく走るのも全然難しくはありません。ただ、回転を上げて走るのは無理ですけどね、速すぎて持て余しちゃうから。

居住性は……サーキット向けのようなクルマなので、快適ってわけにはいかないです。一般道の流れに乗るような領域では、結構ハードですよ。これでデートに行こうっていう感じじゃないですね。そもそもドアすらないし。

ストリート仕様はエリーゼなどと同じHパターンの6速。レース・バージョンはヒューランドのパドルシフトとなる。

でも、シフトはカチカチと決まって気持ちいいし、ステアリングは交差点を曲がるのに握りを持ち替える必要がないくらいクイックで、街中でも応答性は抜群にいいです。もちろんワインディングロードに持ち込んだらかなり気持ちのいいスポーツ・ドライビングが楽しめるのでしょうけど、でも街中での非日常感も刺激的で楽しい。嫌いじゃないです、こういうのも(笑)。 それにこのエンジン、発進のときは静かなんですけど、回していくと途中からすごくいい音がしてくるんですよ。それがダイレクトに聞こえてくるんです。走り続けていられるのであれば、物凄く気持ちいいですね。……いや、僕は目立つのが嫌いなんで、停まっちゃうと人の視線が痛いんですよ(苦笑)」

大きなリアウイングとディフューザー。ボディパネルはカーボン複合素材が使われる。センターにレイアウトするスイッチはエンジンスターターとライト類のみ。グリーンのボタンはキルスイッチ。前後のAP製の4ポッドキャリパーを装着。タイヤはミシュランのパイロとスポーツ・カップ2を採用する。

SPECIFICATION【LOTUS 3-ELEVEN ROAD VIRSION】
■全長×全幅×全高:4120×1855×1201mm
■ホイールベース:2370mm
■トレッド(F/R):1493/1593mm
■車両重量:925kg
■エンジン:V型6気筒DOHCスーパーチャージャー
■総排気量:3456cc
■ボア×ストローク:94.0×83.0mm
■最高出力:416PS/7000rpm
■最大トルク:41.8kg-m/3000rpm
■サスペンション(F&R):ダブルウイッシュボーン
■タイヤ(F/R):225/40ZR18 / 275/35ZR19
■ブレーキ(F/R):ソリッドディスク/ドラム
■0-100km/h加速:3.4秒
■最高速度:280㎞ /h
■車両価格:1523万5000円

ロータス公式サイト

フォト:内藤敬仁&神村 聖/T.Naito & S.Kamimura Tipoより転載

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嶋田智之
AUTHOR
2022/03/27 12:00

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