歴代スカイラインの中で最大のヒット作、ケンメリ
日産の看板車種として長い歴史を誇るスカイライン。1957年登場の初代、1963年デビューの2代目は、日産に吸収される前のプリンスにおける花形車種であったが、このプリンス時代も含めて見れば、今年で65年にも及ぶ長いヒストリーを有することになる。歴代スカイラインの中で最も成功した世代はどれであろうか――。成功の捉え方によって答は異なるが、販売成績という具体的な数字で考えると、それは4代目・C110型系ということになる。
C110スカイラインが世に出たのは1972年、次の5代目・C210型系へとチェンジしたのは1977年。この5年間で、実に合計67万台を売り上げている。C110スカイラインといえば「ケンメリ」の愛称で知られるが、その由来となったCMキャラクター「ケンとメリー」に代表される、巧みな広告戦略もその成功の一因であろう。むろん、いくら宣伝が良くても、クルマそのものが良くなくては売れる訳がない。2、3代目と徐々に強調されてきたスポーツイメージ、そして初代から継承されてきたゴージャスムード、そのハイレベルな融合こそケンメリ大成功の理由であると言ってよい。
豪華なムードは先代よりも若干大柄なボディと、よりアメリカンな印象を強めたボディスタイルからもたらされているが、機構的には先代C10系からほぼ変わりない。L20型6気筒2Lエンジンに前ストラット/後セミトレのサスペンションという基本コンポーネンツ(GT系の場合)を受け継いでいる。ただし、排ガス規制の直撃を受けたこともあり、電子制御インジェクション仕様車が後期型で追加されたほか、マイナーチェンジを機に、4気筒モデルのエンジンはプリンス直系のG型エンジンからL型4気筒(L16/L18)へと変更された。
そうした人気モデルであるケンメリだけに、プラモ化の数も多いのだが、いかにも旧プリンス系車種らしい微妙な曲線・曲面によるデザインが災いしてか、実車のイメージを上手く捉えたキットは意外と多くない。その中で長らく最上位に属するものとして評価が高かったのが、ここでお見せしているナガノ1/20のGT-Rだ。ただしこのキット、当初はGT-Xであったものが後にGT-Rへ改修されたものであり、それを知る人は少ない。知ってはいても、本来のGT-Xとしての姿を目にしている人は限られるだろう。
という訳で、ここでご覧頂いているのは、貴重な初期キットをストレートに組んだ作品ではないが、ナガノ製ケンメリのGT-Xとしての姿である。制作に使用したキットはGT-R版なのだが、カットされたリアフェンダーは元に戻しサーフィンラインを復元。グリルなどの細部パーツは、作者がかつて所有していたGT-X版の複製品を使用している。さらに全体の完成度を高めるべく、エンジンなどはバンダイ1/20のケンメリから流用という、贅沢な作品である。
サーフィンラインの復元とエンジンの移植
制作に当たっては、まず後輪ホイールアーチを元に戻していく。表側にセロテープを貼り、裏からゼリー状瞬着を盛り付け硬化剤で硬め、精密やすりとサンドペーパーで削る。アーチは資料画像や動画を参考に開け直した。裏側はリューターで調整しておく。また、フロント周りはボンネットと左右フェンダーの先端モールの太さに差があるので、フェンダー側を修正。サイドウィンカー下のヒケも埋めた。リアガーニッシュ周りのモールも同様なのでサイド側を修正。左が直したボディ、右が加工前の形状。
エンジンは再現性の高さから、バンダイ1/20の前期型(後に後期インジェクション仕様に改修されている)からパーツを流用した。但し、バンダイ製エンジンは高さがかなりあり(写真右)、そのまま載せるとボンネットが閉まらなくなる。フロントサスのメンバーに合わせてオイルパンをカットして、クリアランスが確保できた。ただしバンダイ製ヘッドカバーは文字刻印の「OHC」が「OH」になっており、サイズも大きい。そこでこの部分はニチモのL型エンジンのパーツから移植した。
このキットではラジエーターサポートが再現されていない(この頃の国産キットはみなこうだった)ので、プラ板から切り出して自作した。完成後には上からしか見えないパーツなので、凝りすぎない再現に留めておく。薄手のプラ板も併用し、上部に立体感を持たせる。バッテリーを実車同様の向きに設置出来るよう、ベース部分をリューターで削りゼリー状瞬着+硬化剤で造形。バッテリー側も、隠れる箇所で少々削って摺り合わせた。
このほか、ドアのヒンジは金属線で作り直し、先端がボディ内側に入り込む実車同様の開き方となるよう改修している。ステアリングホイールと後席左右の内張りもバンダイのキットから流用、サンバイザーはプラ板から自作したもの。タイヤもバンダイのGT-Xから流用したもので、中空のため接地感にリアリティがある。