弾丸のような、ロケットのような? AMT製プラモ「1962年型フォード・サンダーバード」を作る!【モデルカーズ】

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クリーンなルックスを取り戻した3代目Tバード

第二次大戦後、ヨーロッパ製のスポーツカーに刺激されて生まれたのが、フォード・サンダーバードとシボレー・コルベットであることは、よく知られている。純粋なスポーツカーを標榜したコルベットに対し、サンダーバードはパーソナル・ラグジュアリーカーとしての性格付けのもとに登場。初代(1955-1957年型)はそれでも2シーターであったが、2代目(1958-1960年型)では4シーターとなり、さらに販路拡大を狙うこととなった。2度目のモデルチェンジで登場した1961年型でもそのコンセプトは受け継がれている。

この3代目では、先代での複雑なボディデザインはガラッと変更され、非常にシンプルかつスリークなものとなった。側面形が弾丸のようなところから、Bullet Bird(ブレット・バード)の愛称でも呼ばれる。4シーターであること、フレームを廃したユニボディ構造であることは先代同様で、ハードトップとコンバーチブルの2種類のボディ形式が用意されたのも同じだ。さらに、乗り降りがし易いようステアリングホイールが右側に大きくスライドする“スイングアウェイ・ステアリング”が採用されたのが大きなトピックで、これは追ってフォード全モデルへと拡大された。

1962年型でのデザイン変更は細部のマイナーチェンジに留まるもので、注意深く見ないとその差異には気づきにくい。フロントグリルの格子模様が前年よりも粗く大きなものとなり、リアフェンダーに縦に3つ並んでいた矢羽のようなメッキのアクセントが、この年は横に3つ並ぶようになった。この飾りは翌1963年型ではドアに移動しており、それに伴いフロントフェンダーからドアにかけてシャープなプレスラインが加えられている。

話を1962年型に戻すと、この年の大きなニュースのひとつがスポーツロードスターの追加であった。これは後席を覆うトノカバーを装着し実質2シーターとしたバージョンで、ケルシーヘイズのワイヤーホイールもルックス上の大きな特徴であるが、性能面での違いは特にない。もうひとつ、ランドウの追加も無視できないだろう。これはハードトップのルーフをバイナル仕上げとし、リアピラー側面にS字ジョイント型のメッキの飾りを付けたもので、後年までサンダーバードのある種のトレードマークとして受け継がれた。

3年間を通じてスペック面で変更はなく、ホイールベースは113インチ(2870mm)、エンジンは390-cid(6.4L)のV8(300hp)が搭載された。ただし1962年型からはトライパワー仕様が加わっている。これは2バレル・キャブレターを3連装したもので、345hpを発揮した。
さて、ここでご覧頂いているのは、AMTによる1/25スケール・プラモデルの1962年型サンダーバードを、スポーツロードスターとして制作したものである。

現代的な内容を持つ精密なキット
第3世代のサンダーバードのモデルキットは当時AMTから毎年発売されていたが(所謂アニュアル・キット)、作例にしたのは、同ブランドから2000年に完全新金型製品としてリリースされたキットだ(No.30081)。この時期のAMT製新金型モデルに共通する、高い再現性と明瞭なモールドといった、良い内容を持っている。基本的にはスポーツロードスターだが、上げた状態のソフトトップも付属、エンジンはトライパワー仕様のみ。2011年には2 in 1としてリニューアルされており(No.682)、カスタム用のソンブレロ型ホイールキャップとスキャロップのデカール、シングルキャブ仕様のパーツなどが加わった。

ボディ全体の形状としては、実車の大胆なデザインがよく再現されているが、フロントウィンドウが何となく大きいような感じに見えなくもない。小さなバリなども散見されるが、モールドはしっかりしている。エンブレムやバッジ類のモールドが薄いので、塗装を厚塗りして埋めてしまわないよう注意が必要だ。ドアラインなども少しダルい感じなので、若干深くした方が良いだろう。ドアハンドルの部分は成型の都合上塞がっているので、ドリルなどで開孔すると良い。ボンネットおよびトノカバーは少し隙間ができるので要調整。

ボディ側面に細いモールがあるが、好みで除去して良いだろう(実車ではオプションと思われる)。ボディカラーはコードAのRAVEN BLACKを選択、クレオスのGX2ウイノーブラックをそのまま用いた。ボディサイド上面エッジのメッキモールがシャープでないとかなり見栄えを損なうが、作例はベアメタルの細切り(1.7mm幅)を慎重に貼り込んでいる。インテリアはメリハリの利いたモールドで実感たっぷり。ボディとのフィッティングがキツめなので仮組み・修正を行い、スムーズにセットできるよう調整しよう。内装色はGX3ハーマンレッドに若干の黒を混ぜフラットベースを加えて調色、キットのグレーのプラに直接塗装した。

エンジンもかなり良い出来で、補器類も充実している。エアコンとヒーターのホースが2本一組でモールドされており、部分的にかなり太く見えるので、作例では分離して1本ずつ成形した上でセットした。シャシーには特に問題となるようなところはないが、フロントのスピンドルが若干華奢で、作業中に破損してしまった。そのため作例ではプラ板で作り直している。このとき車高の調整も行い、キットのままより若干フロントが下がるように調整した。

なお、キットのパーツをそのまま組むと前輪のステアを可動させられないこともないが、タイロッドがロアアームと一体成型のため、そこは手を加える必要がある。タイヤはホワイトウォール部分がプラパーツとなっているが、作例は細いホワイトリボンになるように塗装している。

 

作例制作=周東光広/フォト=服部佳洋 modelcars vol.290より再構成のうえ転載

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