アルファロメオGT1300ジュニアでショートトリップ——ヒストリックカーとのドライブは貴重な愛車との対話

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ロングツーリングやキャンプなど1泊2日の”クルマ旅”はもちろん素晴らしい体験だが、大げさな準備はしなくとも、いつもは右に曲がる道を左に切ってみるだけで新たな旅が始まることもある。何気ないショートドライブもまた、楽しい”クルマ旅”なのだ。

週末のハイウェイトリップ

ここで取り上げたアルファロメオGT1300ジュニアは、川崎にあるアルファロメオの専門店『デルオート』の販売車両。エンジン、トランスミッションはO/H済で、補器類やクラッチも交換されている。内装にも手が加えられており、またダークブルーのペイントも全塗装済みと、内外装、機関まで極上コンディションの1台だった(取材時)。

夏へ向け、日の出の時間が早くなると共に最高気温も上昇していく。そんな暑い真夏の日中はヒストリックカーで出かけるのは避けたくなる。夏の間はガレージにしまう、またはリフレッシュを兼ねて整備へ出すというオーナーは多い。また一方では週末や月に1、2度のペースで、早朝まだ空いている道をゆっくりと流すのが習慣になっているといった話を聞くことも多い。かく言う私もそのひとりで、走る距離や乗っている時間を話すと「それだけ?」と聞き返される短時間のドライブでも、週末のハイウェイ・トリップは愛車との貴重な対話の時間だ。

前日、天気予報を確認して、ウィークデーよりも早めの時間に目覚ましをセットして次の日の朝を迎える。早く走り出したい気持ちを抑え、気温が高くなる季節とはいえ暖気運転は欠かせない。暖気の間に、エンジンフードを開けて水回りやオイルの滲みをチェックするのも良いだろう。このとき、規則正しいアイドリング音の中に”雑音”が混じっていないかも確認したい。サーキットで疾走するアルファロメオのイメージからは程遠いが、オリジナル重視のセッティングであれば”耳障り”となるようなエンジン音を響かせることはなく、むしろ肩透かしなぐらいに静かだ。気難しさはなく、キーを捻ればそれこそ一発で始動する。

GT1300ジュニアに搭載される4気筒1300ccエンジンは、シリーズ中最も小さくパワーでは劣るが、軽い鼻先を生かしたハンドリングが実に気持ち良い。整備されたエンジンはアイドリングでバラつくことはなく、またアイドリング音も静かすぎるくらいだ。

シートやミラーは、前回乗った時と同じポジションのまま。当然だが、オーナーを受け入れる体制は常に整っている。シートに腰を下ろし、オルガン式のブレーキペダル、そしてクラッチの感触を確かめる。吊り下げ式のペダルは普段乗っているクルマと踏みこむ角度が異なるが、体は意識せずともアジャストしてくれる。

無駄にスロットルを煽ることなく、必要な回転までエンジンを回してクラッチをゆっくりと繋ぐ。ヒストリックカーでは当たり前だが、電気信号ではなく、物理的に直接スロットルペダルとリンケージされたキャブの呼吸を合わせるのが心地よい。ドライバーとクルマの間を隔てる”膜”が、現代のクルマでは望むべくもないほどに薄く密接している。電子デバイスに頼るのではなく、全ての操作が自己責任。ヒストリックカーに乗るのであれば、車両のコンディションも把握しておきたい。

それらを念頭に操作すれば、自然とステアリングの切り始めや細くて華奢なウインカーレバーの操作も可能な限り負担をかけないように操作したくなる。それは、スムーズなドライビングに繋がる”所作”だ。数え切れないほど繰り返したシフトチェンジは、レヴカウンターを注視せずとも耳と手に伝わる感触でシフトレバーが吸い込まれるようアップダウンを繰り返す。目まぐるしく視界が後方へと流れていくスピードや、鼓膜を刺激するほどのエグゾーストノートがなくとも、アルファロメオをドライブするという行為だけで十分だ。

見慣れた料金所に見慣れた道。轍やコーナーの曲率も覚え、それこそ意識せずとも走ることの出来るルートだが、日曜の早朝に乗り出すとまるで違った道に感じられる。週末の早朝に奇特な、と思われるかもしれないし、まだパーキングエリアにクルマを止めて談笑するような仲間はできないが、もし何度も走っているうちには、きっとすれ違う”顔馴染み”が出来るだろう。

遠回りしたとしても、家族が起き出す前に、再び愛車はいつもの場所へと戻る。愛車と1対1で向き合い、日が高くなる前に空いた道を走るだけ。それが夏の習慣となるまで、1台のクルマと付き合うことが出来れば、これほど幸せな”クルマ旅”はない。

コンパクトなボディサイズながら居住性は高く、ロングドライブへも積極的に出かけたくなる。取材車は前後のシート、さらにドアトリムなども張り替えられており、内装のコンディションも非常に良い。エボナイト製の純正ステアリングなど、オリジナルパーツが装着されている点も嬉しい。

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フォト=山本佳吾 K.Yamamoto カー・マガジン470号より転載

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