進化を重ねてWRC 6連覇を達成したモンスター
復活が噂されているランチアの名車、デルタ。噂どころか、ランチア自身がその構想の実在を公言しているようだ。それはさておき、ランチア・デルタの名を持つ車種には、1979~2014年に存在した、3世代にわたるハッチバック型乗用車がある(細かく言うと1911年にも同名のモデルが存在する)。しかしもちろん、ここで「デルタ」のネーミングで指し示しているのは、初代デルタをベースとしたホモロゲモデル、デルタHFインテグラーレのことである。
’79年にデビューしたデルタは本来、ちょっと高級感のある小型ファミリーカーであった。このデルタをベースにしたホモロゲモデルは、’86年のデルタHF 4WDに端を発する。同年、あまりに過激化したグループBの事故多発から、FIAは翌シーズンのWRCをグループAマシーンで開催することを決定。これに合わせていちはやく開発されたのがHF 4WDだったのである。このモデルはセンターデフにビスカスカップリングを用いた4WDシステムを採用、エンジンは2L直4 DOHCターボ(ロードバージョンで出力165HP)を搭載。外観はヘッドライトが丸4灯になったくらいの違いであった。’87年のWRCでは全13戦中9勝を挙げタイトルを獲得、翌’88年シーズンに向けてこのHF 4WDはHFインテグラーレへと進化する。ここでボディは前後フェンダーがブリスター化され、エンジンはターボチャージャーとインタークーラーの変更により出力を20HPアップ(市販バージョン)。そして’89年のWRCに向けて登場したのが、エンジンを16バルブに変更し最高出力を200HP(市販車)へとアップしたデルタHFインテグラーレ16Vである。
この後インテグラーレはインテグラーレ・エヴォルツィオーネ、同エヴォルツィオーネⅡへと進化し、WRCでは6年連続でマニュファクチャラーズ・タイトルを獲得することになるのだが、その解説はここまでにして、本題の模型の話に移ろう。このランチア・デルタについては1/24スケールのプラモデルはハセガワからリリースされており、16V以降のバリエーションが展開されている。ここでお目にかけているのは、このハセガワ製デルタHFインテグラーレ16Vを制作したものだが、実はただの素組みではない。このデルタはハセガワ製カーモデルの中でも比較的初期にリリースされた製品なのだが、それもあってか、ボディ形状の捉え方に”硬さ”が感じられる部分が少なくないのだ。それらを細部の改修によって逐一詰めていったのがこの作品なのである。
微細な修正を積み重ねて実車の印象に近づける!
ハセガワ製ボディは全体に角ばりすぎている感じがあるが、特にフロントノーズにその印象がある。まずフロントグリルをボディからくり抜き、フロント開口部の形状を変更。内側にプラ材を貼ってタレ目状に修正、ノーズ上面にもヤスリをかけてなだらかに削り込んだ。バンパーの黒モール部が下にずれている感じがあるので、ウィンカーとルーバーの開口部下側にプラ板を貼り、上側を削り拡げて位置を変更、筋彫りも埋めて彫り直した。この黒モール部は、サイド部分の下端が前上がりになるように修正したい。
キャビン形状にも違和感があり、細かく見ていくとAピラーとB、Cピラーで傾斜の角度がかなり違っていて、ルーフが極端に後ろ広がりになっているようだ。そこで、Bピラーと後ろドア三角窓部分の上側を一旦ボディから切り離し、内側に押し込んで再接合。プラ材で裏打ちしておいた状態で周囲を削り込み、形を修正していった。ただし、Bピラーのあたりでルーフの幅が一番広いのが自動車として自然な形なので、あまり直線的な形になりすぎないよう気をつける。この修正のためサイドのレインモールは一旦削り落とし、プラ棒で再生している。
こうした苦労の甲斐あって、かなり自然な形のデルタHFインテグラーレとなったように思われるが、いかがだろうか。なお、この16Vのキットとエヴォルツィオーネのキットではボディが全く違う金型となっているが、形の硬い印象は共通している。