実はご縁がなく筆者がプジョー406クーペに乗るのは今回が初めてだったが、結論から書けば、これ以上の個体、売り物には二度と出会えないのではないかと思うほど感心してしまった。令和の今、2003年式の名作に乗る。
歴史の節目に生まれた永遠の名作
最新モデルのプジョーたちもそうであるように、プラットフォームの共用化が進みクルマとクルマの機能的な差異が少なくなってきた昨今、重要となってくるのは”そのスタイルがそのブランドらしいか”という点になるだろう。差別化はブランドで、ということだ。
そのため、全般的に”スタイルを強くする”傾向が強いように思う。人の印象に残らなければ購入の選択肢にも入らなくなるのだから、当然の話だろう。しかし今回プジョー406クーペを見ていて思ったのは、スタイルを弱くする引き算を決断できたのは、まだ時代がそれを許したのだろうということ。そしてこういうモデルは二度と出てこないであろうということだ。
今回このリアビューをメインカットに選んだのは、ベルトラインからテールエンドに至るラインがあまりに美しいと感じたから。2月初旬というまだ寒い時期の冬の柔らかな光が反射して、艶めかしく輝くライトブルーのボディ。2003年式というから実に20年近くの月日を経ているが、まだ年輪と呼ぶには早いと感じさせるほどのコンディションだ。
こちらは横浜の”イタフラ専門店”エスパートに入庫した車両だが、取材後、早々に売約済みとなってしまった。つまりはそれを狙っている人が見逃さない状態のよさということだろう。事実406クーペのマニアが見に来て、これは奇跡的な個体だと感心して帰ったそう。
ポイントは並行輸入にしなかないV6+左ハンドル+M/Tの組み合わせであることと、ナンバープレートがバンパー下に移動した後期の顔ではなく、逆にメカニズムは信頼性の高い後期となる”中期モデル”であることだ。エスパート代表の鶴岡省一郎さんが、「熱で曇るヘッドライトのリフレクターに汚れがないので、夜乗らないようにしていたのかも」と語るほどのワンオーナー、”過保護個体”のようで、それでいて走行は約4万4000kmと「ちゃんと動いていたクルマ」とのことだ。
第一印象は、事前の想像どおりしっとりしていた。一挙手一投足がしなやかで、猫足というほどではないが、ちょっとした入力に対して柔らかく動くのがわかる。今回は街中のみの試乗なのであまり回せなかったが、3500回転くらいからV6らしいいい音がしてきて、同時代のアルファロメオV6ほど刺激的すぎない、48歳の筆者にはちょうどいい味わいだ。
またクルマ全体がシトロエンほど主張せず、何がそう思わせるのかプジョーっぽいとなぁとその感触が体に染みわたってくる。すると隣で106S16オーナーである編集部A君が、「だいぶ違いますけど、何となく106と同じ動き方しますよね。同族の感じです」と納得している。そこで偶然、206とすれ違い、それらが新車当時の感覚をだんだんと思い出してきた。そういった”庶民派プジョー”の延長にある乗り味と、イタリア・ピニンファリーナによるデザインの、組み合わせ。まさに”イタフラ”合作の名作中の名作なのである。
取材後エスパートの鶴岡さんにそんな話をしていたら、もっと攻めた先にこれとは違う世界があることを教わった。しかし敢えてここには書かない。なぜならそれは、実際にオーナーになった者だけが知る真の姿なのかもしれないと思ったからだ。いずれにせよ個人的な406クーペ体験としてはこれが最初で最後の、そして最高のものだったのかもしれない。
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