ジープの旗艦、グランドチェロキーが10年ぶりにフルモデルチェンジ、まずは3列シートのロングボディ「L」の国内導入がスタートする。スクエアなエクステリアは往年のワゴニアに着想を得たというだけあり、そこかしこに宿る伝統のディテールを含めて、ジープファンならば納得の仕上がり。品質の向上も目を見張る。
ジープの精神はそのままに、ヨーロッパ風味をプラス
ボディサイドを一直線に貫くキャラクターライン、それにパリッとした面の張り出しが印象的なボディパネル――。10年振りのフルモデルチェンジで8代目に生まれ変わったグランドチェロキーは、優れた精度感や品質感が全身から滲み出ているかのようだ。そして逆スラント(懐かしい!)した7スロット・フロントグリルに始まる造形は”かたまり感”がきわめて強く、ドイツ車にも通ずる存在感を醸し出している。
インテリアの作り込みも見事だ。ダッシュボード、ドアトリム、そしてシートなどのデザインが流れるように美しいだけでなく、素材感も非の打ち所がない。レザーに施されたステッチがきっちりと縫い合わされているところなどは、並みのプレミアムブランドを凌ぐくらいの出来映えだ。新たに装備された3列目シートは大人も余裕で腰掛けられるほど実用性は高く、アクティブレーンキーピングを含むADASやインフォテイメント系の充実ぶりはドイツ車に肩を並べるほどのレベルにある。
ラゲッジスペースは等分割可倒式の3列目を倒せば1330L、2列目まで倒せば2400Lの容量を確保できるので、用途に応じてのアレンジしたい。
走らせた印象も、従来のグランドチェロキーとはまったくの別物。まず、ボディがいかにも頑丈で、そこにコンプライアンスが小さい印象のサスペンションが組み合わされているものだから、ステアリングは中立付近からきっちりと反応し、曖昧なところが見当たらない。実に正確で小気味のいいハンドリングといえる。
これに伴って、乗り心地もより節度感が強いキャラクターに生まれ変わった。むしろ、足回しの最初の動き出しなどは少し硬いとさえ感じるくらい。いっぽう、ノーマルモードではエアサスペンションの設定が比較的ソフトなこともあって、ストロークし始めの”硬さ”と深いストローク域での”柔らかさ”に軽いギャップを覚えるかもしれない。そんなときは、いっそのことスポーツモードに切り替えてエアサスペンションを締め上げると、前述したギャップも消えて安定したライドフィールに終始するようになる。
この状態では、ドイツ製のスポーティなSUVに通じる引き締まった乗り味となるが、前述したとおりボディ剛性が高いうえにサスペンション・コンプライアンスも小さめなので、多少ソリッドでもキレ味のいい乗り心地となり、まるで不快には思えない。正直、これまでのアメ車とは大きく異なるテイストだが、1台のクルマとしてのまとまりは良好と評価できる。
コーナリングフォームも安定しており、本気で攻めればかなりのペースでワインディングロードを駆け抜けていけそう。そんなときには、ステアリングからのインフォメーションがさらに増えれば、安心感もより高まるはずだ。
286psと344Nmを生み出す3.6L V6エンジンは驚くほどパワフルとはいえないものの、箱根のワインディングロードでも2トンのボディをスムーズに加速させる力強さを発揮。下り坂でスロットルペダルを戻した際、無闇にシフトアップしない8速A/Tのシフトプログラムにも好感を覚えた。ちなみに、100km/h巡航では11~12km/Lの好燃費を記録している。上級グレードで1000万円を切る価格設定も魅力的。あとは、ヨーロッパ風味を強めた乗り味が、従来からのジープファンにどう受け止められるかで市場での評価は決まるだろう。
【specification】ジープ・グランドチェロキーLサミット リザーブ
■車両本体価格(税込):9,990,000円
■全長×全幅×全高:5200×1980×1795mm
■ホイールベース:3090mm
■トレッド(前/後):1665/1665mm
■車両重量:2250kg
■エンジン型式:V6 DOHC 24バルブ
■内径×行程:96.0×83.0mm
■総排気量:3604cc
■圧縮比:11.3
■最高出力:286ps/6400r.p.m.
■最大トルク: 344Nm/4000r.p.m.
■燃料タンク容量:87リッター(レギュラー)
■燃費(WLTC):7.7km/L
■トランスミッション形式:8速A/T
■サスペンション形式(F&R):マルチリンク/エア
■ブレーキ(F&R):ベンチレーテッドディスク
■タイヤ(F/R):275/45R21/275/45R21
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