市販車では性能に加えて、ドレスアップ的な要素も強いホイールだが、ことレースの世界となると話が違う。軽さや強度が高いのはもちろん、縁石を乗り越えたり急激なGが掛かるホイールにはどんな性能が求められるのか? SUPER GTの300クラスでチャンピオンを獲得したスバルBRZ GT300のエンジニアと両ドライバーに話を聞いた。
レーシングホイールにおいて軽さと強さ以外に求められる性能とは?
2012年11月28日、富士スピードウェイで開催されたスーパーGTの最終戦で、スバルBRZ GT300が悲願のシリーズチャンピオンを獲得した。その足元に装着されていたのはBBSホイール。BBSがスバルBRZ GT300にホイールの供給をスタートしてから、実に9年がかりの初チャンピオン奪取である。
毎戦激しいレースが繰り広げられ、勝者が予測できないほど厳しいスーパーGTの300クラスで、今シーズン安定した走りを見せたBRZ GT300。この激戦のレースで、BBSのホイールはどれだけ貢献していたのか? 昨年まで総監督を務めていた渋谷 真氏と、井口卓人・山内英輝選手の両ドライバーに話を聞いた。
渋谷:レーシングカー用のホイールにとって大切なのは、タイヤと車体の特性をしっかり活かしきれることです。そのためには、軽量であることに加え、キャンバー剛性や回転方向の剛性も高く、強度もしっかりしてなくてはならない。この3つの性能をしっかり作っているのが重要なのですが、BBSのホイールはすべての要件を高いレベルでクリアしていますね。
こういった軽量・高剛性という性能はBBSホイールにとっては基本的な性能といえる。ではレースに特化した部分ではどうだろう。
渋谷:レースでは、こうした高性能なことに加えて、例えばサーキットの縁石を乗り越えたときのような急激な入力が入った際や、車重が変化したりしたときの柔軟性が求められます。例えるならサスペンションのスプリングの役目をするようなイメージでしょうか。これについてもBBSのホイールは粘りがあるので対応できていますね。それと現在は市販モデルのRI-Aほぼ同じデザインなのですが、タイヤ交換する際にスポークが細かすぎず広すぎず持ちやすい、という声も聞いてます。これはメカニックにとってありがたいことでしょう。さらにサクセスウエイト(ウエイトハンデ)が増えて心配していましたが、ホイールそのものは今のままでも全く問題ないですね。
このようにBBSホイールに絶大な信頼を寄せている渋谷氏だが、ステアリングを握るドライバーの目線からの評価はどうだろうか。
井口:自分はもともとレーシングカーのホイールも、市販車と同じでドレスアップ的な要素が強いのかと思っていたのですが、実はBBSと一緒に仕事をするようになって、マシンの性能を大きく変えるとわかり始めたんです。具体的には高い荷重が掛かるような高速コーナーで、いままでの限界スピードを引き上げてくれるというイメージですかね。
山内:ホイールに関しては、タイヤのグリップから来るインフォメーションと、それをどうつぶすかというところが重要性になってくるので、やはり高速コーナーでのアドバンテージが大きいです。
やはりドライバーにとってもBBSホイールの高性能ぶりは驚きのようだ。では渋谷氏も評価していた”粘り”の特性についてはどう感じているのだろう。
井口:レースでは縁石に乗るのは普通ですので、もちろんその時のしなやかさは重要です。それ以外に他車と接触したときの強さも兼ね備えていると思います。
山内:スーパーGTはタイヤ開発が激しいのでタイヤの限界が上がってくるんです。それに対応するようにタイヤが潰れたときの粘りが圧倒的に強い方が、コーナリングスピードとともに、そのあとの蹴り出しの良さにもつながるので重要だと思いますね。
今回話を聞くことができた3人が、その性能にほれ込んでいたBBSホイール。まさに”縁の下の力持ち”的な役割を果たしていると言えるだろう。
取材協力=BBSジャパン https://bbs-japan.co.jp/