マツダの新しい試みが現実になった。 その名を、MAZDA「CO-PILOT CONCEPT (コ・パイロットコンセプト)」という。マツダ三次試験場(広島県三次市)で実車を使って様々な体験をしてきたのでご紹介したい。「CO-PILOT CONCEPT」という考え方について、マツダはこれまで様々な機会に発表してきたが、こうした実車を使ったメディア向け走行は今回が始めてである。
ちょっと分かりにくいのでじっくりご紹介
まずは、「CO-PILOT CONCEPT」とは何か、という点だ。 マツダ3 FAST BACKの技術試作車に乗る前に、まずはマツダの基本的な考え方を聞いた。
「CO-PILOT CONCEPT」とは、「人中心の安全技術」を「人の状態からアプローチ」することだという。そう言われても…、ちょっと分かりにくい気がする。取材現場にいた筆者がそう思うのだから、この記事をご覧頂いているユーザーや、これからクルマの免許を取ろうかと思っている若い世代にとっては、さらに分かりにくいことだろう。
順を追って説明すると……。第一に、クルマの基本安全技術がある。これは、マツダが提唱するステアリングに対してドライバーが左右対称でまっすぐ座るドライビングポジション。また、運転席から周囲に対する視界の視認性。そして、もしも事故が起こってしまった場合に車体を中心とした衝突安全技術などを指す。
ここに、予防安全技術が加わる。他のメーカーの宣伝で一般化した「ぶつからないクルマ」という発想だ。クルマに、カメラ、レーダー、超音波センサーなど各種のセンサーを搭載して、周囲のクルマや歩行者の状態を検知して、ドライバーに対して音や表示で注意喚起したり、いわゆる自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)をかけたりする。
マツダでは、「i-ACTIVESENSE(アイ・アクティブセンス)」として各モデルに搭載されている。トヨタでは「トヨタセーフティセンス」、またスバルの「アイサイト」も予防安全技術である。
さて、ここからが今回の話のキモとなる。先進安全技術は、センサー技術などによる「クルマからのアプローチ」であるのに対して、「CO-PILOT CONCEPT」は「人の状態を検知して事故のリスクを軽減する」ことだ。
これを「人の状態からのアプローチ」と、マツダでは呼んでいる。そもそも、「CO-PILOT(コ・パイロット)」という呼び名が、一般的ではないかもしれない。飛行機の副操縦士を意味しているのだ。飛行機の機長に対して、副操縦士がいつも見守っていて、必要に応じて機長の操縦をサポートする。つまり、マツダ車では、機長がドライバーであり、副操縦士が「CO-PILOT CONCEPT」ということになる。
何がどう凄いのか?
では、実際に「CO-PILOT CONCEPT」の機能を搭載した技術試作車に乗ってみよう。運転席回りは、量産型のマツダ3 FAST BACKとの差はほとんどない。まずは、高速周回路に向かった。三車線の一番外側は急なバンクになっており、筆者はこれまで様々なクルマでここを時速200km級で走らせてきたが、今回は時速80kmで中央車線を定速で走った。
その状態で、なんと両目を閉じて、ハンドルから手を完全に離し、アクセルやブレーキからも足を離すというシチュエーションを、マツダ側から要求された。先に行った説明時間では、実際にどのような動作をこちらがするのかまでは知らされていなかったので、正直かなり驚いた。居眠り検知の体験である。
すると……、約3秒で車内に注意喚起を知らせる音や表示が付き、そこから高速道路の最低走行可能速度(時速50km)まで自動で減速し、同一車線での走行が始まった。この時点では両目を開いているが、ハンドルやペダルには触れていない。いうなれば、自動運転2のハンズオフ、または自動運転レベル3といった感じだ。
だが、ここから凄かったのは、自動で車線変更し、または隣車線にクルマが接近しているとそのクルマとの間合いを取ってから車線変更に入り、さらにしばらく走行してから、路肩側にある非常停車帯の手前で自動で減速して自動でハンドル操作をして完全に停車した。非常停車帯の位置をクルマの速度との関係から、定速走行する時間や約3分間としている。たった3分間ではなく、ドライバーがまったく運転できない状態で3分間というのは、かなり長い時間だといえるだろう。
こうした仕組みについて、国は「ドライバー異常時対応システム(EDSS:エマージェンシー・ドライビング・ストップ・システム」という名称で産学官連携での研究開発を進め、自動車メーカー各社が量産開発を進めてきた。
ホンダの「ホンダセンシングエリート」、トヨタの「アドバンスドドライブ」、そしてスバルの「アイサイトX」など高速道路での同一車線内での減速や路肩での緊急停止を行うが、マツダ「CO-PILOT CONCEPT」での体験では、緊急時での自動での車線変更と、安全な場所(非常停車帯)まで定速走行するという、「もしもの場合の安心感」が強かった。
また、今回の試乗では、一般道を想定したワインディングコースでも、ドライバー異常時対応システムの作動を体験した。一般道の場合、交差点での停止してしまうリスクを避けることを最重要課題として、システムの作動時間は約60秒とした。
これは、交差点内での停止を防ぐ狙いがある。こうしたテストコースでの実車試乗に加えて、屋内ではドライバーの異常を予兆する「ドライバー状態検知技術」についてもシュミレーターでの実験を見学した。
これは広島大学との共同研究で、脳の機能低下を起こった際の視線挙動を測定することで、外から見ると普通に運転できているようでも、実は一気に体調異変を起こしかねない状態であることを予兆するという、マツダ独自の技術だ。
こうしていろいろな技術を体験して改めて思ったのは、運転は日常生活の中で危険な場面と直面するリスク高いということだ。そのリスクをドライバーの責任として運転をしているわけだが、CO-PILOT CONCEPTが陰で支えてくれていることで、運転時の精神的なストレスも軽減できると思う。ただし、最新技術に対する過信による心の緩みが生じては元も子もない。
マツダは2022年、マツダがラージ商品群と呼ぶFRプラットフォーム車から、CO-PILOT 1.0を市場導入する。これには、ドライバー異常検知後の運転支援として、高速道路での路肩退避と一般道での同一車線内停止等が含まれる。
さらに、2025年には今回体感した非常停車帯での退避や、脳科学を参考にした異常予兆を取り入れたCO-PILOT 2.0へと進化させる計画だ。
この記事を書いた人
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、自動運転、EV等の車両電動化、情報通信のテレマティクス、そして高齢ドライバー問題や公共交通再編など。
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