国内で唯一、BMWサーキット専用モデル「M2 CS Racing」の販売を許されたBMW Mモータースポーツ・ディーラー「Toto BMW」。ここでは、その発足に携わったキーマン3名を訪ね、認定までの背景と今後の展望について訊いてみた。
モータースポーツでBMW にさらなる付加価値を
「自動車販売ビジネスはここ40年くらい変化がないんです。でも僕自身は、ディーラーの立場からもっと多くの価値を発信できると考えていました。例えば、多くのプレミアムカーブランドの中でも、BMWを購入されるお客さまは“モノ消費” ではなく“コト消費”、つまり“エモーショナルバリュー” を求めている。いわばBMWは非日常的な“ハレ消費”の対象なのです」
Toto BMW 代表取締役社長:湯本拓治氏 Takuji Yumoto
日本初のBMW Mモータースポーツ・ディーラーに認定された西東京本社をはじめ、関東エリアにBMW、MINI正規販売店を展開するモトーレン東都の代表を務める湯本拓治氏。国産ディーラーと他輸入ブランド販売店のプロデュースを経て、BMWブランド強化のため、Toto BMWの代表取締役就任を請われた辣腕カーガイである。
「私自身がBMWブランドを愛していることもあって、これまでにも主催するサーキットイベントにお客さまを招待して、あまり触れる機会のない高性能モデルに試乗していただいたり、プロドライバーが運転する標準モデルに同乗していただいて、BMW本来のポテンシャルを体感してもらうという活動を続けてきました。ブランドの価値はメーカーが創るものですが、クルマをご購入いただいた後のバリューはわれわれでも高めることができると考えたからです」
そこで湯本氏率いるToto BMWは、さらなる付加価値を求めて、BMW M6 GT3でSUPER GT300クラスにシリーズ参戦していたBMW Team Studieとジョイントする。
「当社のイベントやSUPER GTのピットツアーなど、チームの協力を得てお客さまをサーキットにお連れしてみると、皆さん目を輝かせ喜んでくださる。やはりBMWには、モータースポーツをアイコンにした潜在的なニーズがあると確信しました」
こうした端緒から、日本初となるBMW Mモータースポーツ・ディーラー認定へと発展していったといえる。マーケティング部次長として同社のモータースポーツ活動を推進してきた小川秀一氏曰く――。
Toto BMW BMW M Motorsportディレクター:小川秀一氏 Syuichi Ogawa
「当社は元々、BMW Mディーラーとして高性能モデルの販売を強化してきましたが、Mモータースポーツ・ディーラーに選定されたことで、ひとつステップアップできた感覚があります。セールス担当によれば、特にMモデルのお客さまから、『スゴいね』というお声掛けも増えたようで、当社から購入してよかったという評価にも繋がっています。そして社内スタッフのモチベーションは間違いなく高まりました」
潜在的なニーズがあったとはいえ、BMW Mモデルの販売についても、いい効果が現れているようだ。
「しかし、今後M2 CS Racingを購入されるお客さまは、必ずしもプロドライバーではありませんから、サーキットまでの導線をしっかり引いて差し上げる使命があります。レースに参戦したいけど、メカニックやチームはどうする? 保管するガレージは? 保険やラインセンスは? といったコンサルティングまでしっかり示すことが、今後の拡販には大切なのだと思います」
Toto BMW 社外取締役:鈴木康昭氏 Yasuaki Suzuki
そしてもうひとり忘れてはならないキーマンがBMW Team Studie鈴木康昭代表だ。
「2016年からの参戦サポートやイベント共催を通じて、お互いに信頼関係が築けたからこそ、このプロジェクトにおけるスーパーバイザーのオファーを受諾しました」
SUPER GT300クラスをはじめ、ブランパンGTシリーズ・アジアやスーパー耐久シリーズなど、長年に渡り独自にBMWモータースポーツ活動を促進してきた同チームとのコラボ活動が、Toto BMWのMモータースポーツ・ディーラーへの認定に大きく貢献したことは想像に難くない。
「ドイツ本国で発表されたBMW MotorsportとBMW M GmbHとの統合は、BMW Mモデルの販売促進にモータースポーツを積極活用していく意図であることは明白です。その大きな流れの中で、日本にBMW Mモータースポーツ・ディーラーが発足したことで、これまで国内では実現できなかった、BMW Mモータースポーツを頂点にした、『Mハイ・パフォーマンス・モデル』『Mパフォーマンス・モデル』そして『Mスポーツ』という構図が形成できました。
つまり、みなさんが乗っているBMWは、世界中で闘うレースマシンと同じルーツなのだというメッセージが発信できるのです」
BMWのカスタマイズシーンを牽引し、レース活動に注力してきた鈴木氏にとって、これまで描いてきたBMWの理想像に一歩近づいたといっていいだろう。
BMW M2 CS Racing
「このM2 CS Racingは、サーキットでスポーツ走行を楽しんだり、草レースに参戦したりという幅広い使い方ができます。もちろん、用途とコストに見合ったアドバイスをさせていただきますが、現在、スーパー耐久シリーズやツインリンクもてぎのJOY耐といったJAF格式から、アイドラーズやETCCなどグラスルーツまで、M2 CS Racingが参戦できるプラットフォームを構築しているところです。が、やはり最終的な目標は欧州のBMW M2 CUPです。86&BRZ、ポルシェ・カレラカップみたいに、全国のディーラーが激しく鎬を削るようなワンメイクレースに発展させたいですね」
【BMW M Motorsport Dealer Toto BMW】
住所:東京都東久留米市滝山3-11-2 電話:050-3733-1468 https://www.totobmw.com/motorsport/