ミッドサイズSUVとして人気のQ5に、スポーティなキャラクターと高い実用性を兼ね備えたスポーツバックが登場した。クーペスタイルでも、Q5に比べて居住空間や荷室容量にほとんど遜色はないのだ!
期待を裏切らない洗練された仕上がり
夜中に試乗するときのルートはいつも決まっていて、Q5スポーツバックも例外ではなかった。何台ものクルマで同じルートを同じように走ってみると、同じ場面で異なる挙動や乗り心地や音を示したりするから評価しやすい。クルマを乗り比べるときに重要なのは可能な限り条件を揃えることだが、ルートと運転の仕方を合わせても、交通量や気温や湿度や風速なんかまで揃えるのは難しいから、その辺は過去の経験値から足したり引いたりして辻褄を合わせている。
通常なら90分くらいで周回できるのに、このクルマではさらに30分余計に走った。たまにこういうことがあるのだけれど、Q5スポーツバックの場合は、自分の評価が「ホントかよ」とちょっと心配になるくらい欠点がほとんど見当たらなかったからである。
動的にも静的にも全体的に質感がとても高く、静粛性もいいし乗り心地は快適で、ドライバーの入力に対する反応も申し分ない。このクルマがSUVだとかアウディだとかQ5スポーツバックだとかはともかく「自分はいま、とてもいいクルマに乗っている」という気分に支配されてしまった。
Q5スポーツバックはその名の通りQ5のいわゆるクーペボディ版で、全長は15mm伸びているが全高は5mm低く、ルーフラインがそのままリアエンドまで伸びるスタイリングが特徴。クーペボディは一般的にリアのハッチゲートの開口部がベースとなるSUVボディ(今回ならQ5)よりも広くなるため、そのままではボディの剛性面で不利となる。そこで補強を施すなどの対策が常套手段で、その結果クーペボディのほうが乗り味がよくなってしまうことがたまにあったりする。個人的な印象では、Q5よりもこのスポーツバックのほうが走る/曲がるがより洗練されているように思った。
試乗車は40TDIクワトロSラインをベースにした「ファーストエディション」と呼ばれる限定車で、だからエンジンは直列4気筒のディーゼルターボ(のマイルドハイブリッド)である。もういまさらだけど、最近のディーゼルはもはや振動や騒音やパワーデリバリーでそれを認知することは難しい。「言われなければまず分からない」まさにこの通りである。ガソリンエンジンよりも低めに設定されたレブリミットまで間断なく極めてスムーズに回るし、スロットルペダルの動きに対する反応遅れもなかった。
この限定車には減衰力可変の電制ダンパーが装着されていて、優れた乗り心地はこの恩恵もあるだろうけれど、やっぱりボディ骨格がしっかりしている要因のほうが大きいと考える。エアサス仕様もあるそうでまだ試乗していないが、自分なんかはこのアシで満足である。「ほんとにこれエアサス仕様じゃないよな?」と何度も確認したほど乗り心地はよかった。
PAで停車してディテールの確認をしていたら、買ったばかりと覚しきポルシェ911と写真を撮るカップルが目に入った。ふたりともすごく嬉しそうで、とても健全な幸せの表現でなんだか微笑ましかった。911だからそう思ったのではない。ずっと欲しかったクルマを手に入れたらそうなるのが自然だと思ったのである。Q5スポーツバックを選んだオーナーも写真を撮りたくなってくれるかもしれない。少なくともその乗り味は期待を裏切らないはずである。
【Specification】アウディQ5スポーツバック ファーストエデョション
■車両本体価格(税込)=8,370,000円
■全長×全幅×全高=4685/1900/1665mm
■ホイールベース=2825mm
■トレッド=(前)1620mm(後)1610mm
■車両重量=1910kg
■エンジン型式/種類=DTP/直4DOHC16V+ターボ
■内径×行程=81.0×95.5mm
■総排気量=1968cc
■圧縮比=15.5
■最高出力=204ps(150kW)/3800-4200rpm
■最大トルク=400Nm(40.8kg-m)/1750-3250rpm
■燃料タンク容量=70L(軽油)
■燃費=14.5km/L(WLTCモード)
■トランスミッション形式=7速DCT
■サスペンション形式=(前)ウイッシュボーン/コイル、(後)ウイッシュボーン/コイル
■ブレーキ=(前後)ディスク
■タイヤ(ホイール)=(前)235/55R19、(後)235/55R19
公式ページ https://www.audi.co.jp/jp/web/ja/models/q5/q5_sportback.html