新型4シリーズに、定番の4シーターカブリオレが加わった。最大のニュースは、先代で採用されていた3分割式のリトラクタブルハードトップをソフトトップに変更したこと。はたして、ソフトトップのアドバンテージはどこに見い出せるのか。
トップはハードとソフトのイイとこ取りに成功
M440iカブリオレのトップを開閉させた瞬間、ハードからソフトに変更した理由が納得できた。3から4シリーズに至るカブリオレは、2世代続いてリトラクタブルハードトップを採用。遮音性が向上するので、クーペと変わらない快適性が確保されるというメリットがあったからだ。
新型カブリオレは、そのメリットを見事に受け継いでいる。ソフトトップは、開閉時にキャンバス地を折り畳む方式が一般的だ。新型は、キャンバス地が3分割され折り重ねる方式を採用してきた。機能としては、リトラクタブルハードトップに近い。
それでいて、カブリオレならではのクラシカルなエレガンスが表現できるキャンバス地で覆われているのだ。しかも、遮音性は従来型カブリオレのハードトップと変わらない。つまり、ハードとソフトのイイとこ取りに成功したのが新型が採用するフルオートマチックのソフトトップなのだ。
開閉のための時間も片道わずか18秒、50km/h以下なら走行中でも作動が可能だ。今回は梅雨の最中の取材だったが、チャンスを逃さずフルオープンに。Aピラーが寝ているのでサンバイザーのあたりが乗車位置から近めになるものの、小柄な方を除けば前方視界を完全にフロントウインドーが覆い隠すことはない。前を向いたままで顔を上げることなく、視線を移すだけで素通しの景色が視界に入り爽快な気分になれる。
さらに、M440iクーペと比べると走りの洗練度が向上している。クーペは、クローズドボディなので剛性は高い。荒れた路面を通過する際の衝撃をガシッと遮断する印象もある。サスペンションの設定は硬めだが、振動の角が削り落とされているように感じ、乗り心地が犠牲になっていない。
だが、新型カブリオレはより快適なのだ。路面から衝撃を遮断するというより、ボディがスイッといなし振動を巧みに減衰してくれる。オープンボディとするからにはボディの補強は不可欠であり車重が140kg増しとなるが、補強部材が剛性向上だけではなくマスダンパーとして制振の役割も果たしていそうだ。
もちろん、コーナーを攻める場面ではクーペならダイレクト感あるハンドリングが楽しめる。カブリオレはクーペのようなダイレクト感を楽しむのではなく、ステアリングの切れ味のスッキリ感がオープンボディらしい走りの爽快さをより以上に際立たせる。そもそも、3シリーズを含め4シリーズは、5シリーズ以上の各モデルと比べるとステアリングの切れ味のスッキリ感がもの足りなかったが、カブリオレは違うわけだ。
また、エンジンの快音を全身で浴びるように聞くことができることもカブリオレの魅力だ。アクセルを踏み込むと、3000rpmあたりからエンジン音の迫力が増し、4000rpmからは変調したようにキーが高くなる。5000rpmを超えるといい意味の機械音が重なり、高回転域に突入したことをドラマチックに演出。そして、一気に7000rpmに迫るまでブン回せる。しかも、音だけではなく空気を切り裂く感覚や景色が後方に飛び行く感覚は、クーペ以上に刺激的だ。
新型カブリオレは、オープンボティだからこそ実現可能な走りの魅力を備え、ソフトトップに戻したことで価値を上乗せも果たした。
【specification】BMW M440i xDriveカブリオレ
■車両本体価格(税込)=10,890,000円
■全長×全幅×全高=4775×1850×1395mm
■ホイールベース=2850mm
■トレッド=前1580、後1590mm
■車両重量=1880kg
■エンジン型式/種類=B58B30B/直6DOHC24V+ターボ
■内径×行程=82.0 × 94.6mm
■総排気量=2997cc
■圧縮比=10.2
■最高出力=387ps(285kW)/5800rpm
■最大トルク=500Nm(51.0kg-m)/1800-5000rpm
■燃料タンク容量=59L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前ストラット/コイル、後マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前225/40R19(8J)後225/40R19(8J
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