中国経済の回復がドイツメーカーに恩恵。電動化への取り組みも強化
2020年、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大は欧州の自動車メーカーにも試練を突きつけた。欧州メーカーのメインマーケットとして利益を支えてきた中国はその発生源となったことで当初は大幅な販売減に見舞われたが、厳しい統制によるロックダウン(都市封鎖)と徹底した感染経路遮断でいち早く経済が回復。一党独裁国家の中国ならではとも言える手法でウイルスを抑え込んだわけだが、ほどなく新車販売需要も回復。年間販売台数は2531万台と2019年より1.9%ほど減ったものの痛手は最小限に抑えられ、世界最大の自動車マーケットの座を維持。予想外の早い回復に欧州メーカーもホッと胸をなで下ろしたことだろう。
欧州各国も厳しいロックダウンで感染拡大を防いだかと思われたが、その後の第2波、第3波により需要は停滞。北米も米国の株価は上昇基調にある半面、新車需要はマイナス傾向が続いており、欧州よりちょっとはマシながら2ケタ減から脱却することはできなかった。
各メーカーグループの主要マーケットごとの販売台数は別表の通りだが、フォルクスワーゲン・グループ(VW)は欧州と北米の落ち込みが大きく、中国も2ケタ減は免れたもののドイツメーカーでは唯一のマイナスとなってしまう。世界販売台数も930万5400台と1000万台を大きく下回り、952万8438台を販売したトヨタ・グループ(ダイハツと日野含む)に世界一の座を明け渡す。トヨタは中国で10.9%増と大きく伸びており、それが明暗を分けた形だ。
一方でBMWグループは中国で7.4%増、メルセデス・ベンツも11.7%増と前年比プラスを確保。需要の回復した年後半の売上げ増が貢献しており、このあたりはプレミアムブランドならではの強さを見せた格好だ。中国でも景気回復の恩恵を最初に受けるのは富裕層であり、その構図が新車販売にもあらわれている。世界販売の減少率をひとケタに抑えたBMWは高性能版のMモデルの好調に支えられた面もあり、 Mモデルに限れば前年比5.9%増の14万4218台と過去最高を更新している。なお、ダイムラー・グループは組織改編のせいか世界販売台数に関してはグループ全体の台数ではなくトラック部門を除くメルセデスカーズ&バンの台数を公表。そのため世界販売台数の前年比は算出できなかったが、 BMWを上回る台数を販売している。
ドイツメーカーとは対照的に厳しい状況に置かれているのがフランスメーカーで、中国では回復の波に乗り遅れ、欧州でも新型コロナの影響を色濃く受けて販売は減少。グループPSAとFCAとの統合による新生ステランティスの対応が気になるところだが、組織強化で2021年は復活を図ってくると思われる。また北米で唯一のプラス、中国もプラスで世界販売の減少幅を最小に抑えたボルボの健闘ぶりは見逃せない。台数は他メーカーよりひとケタ小さいレベルながら、存在感を一段と高めている。
各国が政策として進めている電動化に対する動きも見えてきており、VWはID.3を始めピュアEVを23万2600台、PHVを19万5000台販売し、BMWもEVとPHV合わせて19万2646台、メルセデスも16万台以上を販売。台数比率でいくとまだ10%以下ながら、各社ともポテンシャルを高めた新型車投入を積極的に進めており、一定のシェアを得ていくことは確実だろう。世界的な感染の収束はいまだ見通しにくい状況にあるが、そんな中でも積極性を失わない欧州メーカーの姿勢に共感しつつ、今後の動きを見守っていきたい。