希少性のアピールが存在感を際だたせる
機が熟すというのは、廣岡さんの場合、思い描いた仕様に見合う部品が揃うことにあるようだ。待ち望んでいたのは、ビルシュタインのブラックショック。ビルシュタインが得意とするガス入りのスポーツショックではなく、ごく普通のショックでノーマルと同じ減衰力という。ただし、ビルシュタインの工作精度の高さはそのままで、きわめてスムーズな作動が期待できるというものだ。
(左上)FIRE & ICEは、ゴルフのほぼ最終モデルをベースとしていて、その装備はに共通するものも多い。ひとつ例をあげれば、このブレーキのABSだ。(右上)前後とも、ABSのセンサーが付く。リアのブレーキにはホイールの回転をチェックするための、小さな歯を持つ歯車のようなものが付いている。(下)ブレーキ関連もすべて、はじめからオリジナルと同様の状態に戻す考え。装着されていたのは、フロントのローターはホール付きのもので、まだ十分に使えたが、これも替える。
GTI本来の14インチホイールは中古の在庫があって、オリジナルの姿へ戻すのになんら問題はない。準備は終わったのである。
(左上)ブレーキ関連は、コストパフォーマンスが高く、絶対的な信頼性が得られているATE製を使う。(右上)完璧を目指す廣岡さんは、リアのパッド&ローターも新品に交換。憂いを残さないためとか。(下)リアの交換は、必然的にハブベアリングの交換も伴う。コストはかかるが、これで安心。
メカニックとしての修行も積んだ廣岡さんは、大抵のことは自分で作業し、直してしまう。その作業自体を楽しむタイプでもあるから、部品が揃ったこれからが夢のような時間ということになる。
「こういうクルマですから、モディファイする必要はまったくないと思います。かえって、オリジナルに戻して希少性をアピールすることが、存在感を際立たせると思いますね」
25万kmオーバーの走行距離からして、シフトのリンケージ関係はすべてを交換する必要がある、と廣岡さんは考えた。気持ちよく走るために。
本誌ではすでに何度かお伝えしてきているので、ご存知だと思うが、シフトハウジングの脱着は、フロア下側から。エキゾーストパイプや遮熱板を外さなければならない。
方向性はきわめて明確。後はただただ、整備に没頭して楽しめばよいわけである。
(左上)シフトレバー下端の樹脂製ボール。これが摩耗でスリ減っていると、ゲート感が失われる。(右上)エンジルーム側のリレーシャフト。この樹脂製ボールもスリ減ると、操作性に問題が出る。(下)ミッションに繋がるロッド関連。樹脂製のジョイント部が割れ、操作不能になることもある。